映画評「Endless Waltz エンドレス・ワルツ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1995年日本映画 監督・若松孝二
ネタバレあり

若松孝二は一般映画なら幾つか観ているが、よくは知らない。学生運動に多大なる関係と関心を持っていたことだけは作品を観るうちに解った。

本作にも、最近裁判が始まった大阪正明をちょっと想起させる逃げる闘士(佐野史郎)が出て来る。
 ヒロインの作家鈴木いづみ(広田玲央名)と少し縁のある男性だが、彼女が昵懇になるのは、学生運動を尻目に新宿のバーで知り合う、フリージャズのサックス奏者阿部薫(町田町蔵=現・町田康)である。二人は結局結婚にまで至り、彼女は、才能に溢れながら自滅的な彼と激しく衝突しながら暮らしていく。
 離婚後再び舞い戻った彼の不審な死(1979年)の後、1986年、10歳の娘(映画のストーリー上は7歳)を残して自殺を遂げる。

二人共実在する人物で、鈴木いづみは若松監督の映画に出演したこともある女優でもあるらしい。阿部薫もその道に詳しい人には有名なのかもしれないが、この辺りは不勉強で僕は全く解らない。
 ただ、面白いと思ったのは、劇中チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーン、アルバート・アイラーを馬鹿だとする台詞。その心は三人とも早世した天才サックス・プレイヤーであり、多分に破滅型で、阿部薫に通ずるということだ。自殺と思われる死に方をしたアイラーは同じような前衛的奏者であったから余計に親和性が高い。

このカップルの破滅型人生を綴ったこの物語には同名の原作があって、作者は稲葉真弓。本作にも出てくる二人の娘がプライバシー侵害と名誉棄損で訴えたようだが、こうして映画化されたところを見ると、大きな沙汰にはならななかったようだ。

本作のように痛々しいものは多少別格に扱いたいが、僕はカップルが口論を続ける作品は面倒臭いため苦手で、大体において☆★は伸びない。しかし、この作品は、ただのロマンス型喧嘩とは違い、薬絡みで狂的な或いは幻想的な場面が出て来て興味深いところがあり、また、東京の夜の風俗点出の捨てがたい味を買って★一つ余分に進呈したくなる次第。

主演のお二人は僕より多少若いが、大きく分類すれば同じ “新人類世代” に属し、強烈な個性を放って揃って好演。町田町蔵変じて町田康は今は作家としての方が有名だろう。

Endless Waltz だけで検索すると、最初にガンダムが出てくる。

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