映画評「007/消されたライセンス」

☆☆★(5点/10点満点中)
1989年イギリス=アメリカ=メキシコ合作映画 監督ジョン・グレン
ネタバレあり

シリーズ第16作は、ティモシー・ダルトンのボンド第2作にて最終作。

これはシリーズの中でちょっとした異色作で、彼はエージェントとしてではなく復讐鬼として行動するのである。

彼の親友でDEA(米国の麻薬取締局)局員のフェリックス・ライターが、取締り対象の麻薬王サンチェス(ロバート・ダヴィ)一味に新妻を殺され、自らも足を失うという大怪我を負う。
 これに憤慨したボンドが、そしらぬ顔をしてサンチェスに接近、美人女性情報部員パム(キャリー・ローウェル)と協力し合い、相手を仕留めるチャンスを伺う。例によって、その間にサンチェスの愛人ルペ(タリサ・ソトー)ともよろしき関係になるというご愛敬もある。

CGの発達のせいで映画界が観客の残酷趣味に応えることが多くなった時代で、残酷な見せ方が結構ある。

冷戦終結時ということや、スパイ以外の官憲が超絶的に活躍する(「ダイ・ハード」や「リーサル・ウェポン」等)映画が流行っていた故に、スパイとしてではなく一人の私人として活動するジェームズ・ボンドというアイデアが浮かんだのではないかと思うが、やはりこのシリーズはもっと地球規模のお話にしてくれないというないものねだりをしたくなる。

Allcinemaのどなたかも仰っているように、007としてではなく一般のアクションもしくはサスペンスとして見れば、終盤のタンクローリー同士が繰り広げるカー・アクションなど、空・海・陸それぞれに関わる乗り物による見せ場が随時出て来て一通り楽しめるが、現実に近いお話の為に余り気勢が上がらない。

ロバート・ダヴィが悪役として迫力を欠くのも弱い。その代わりボンド・ガールはなかなかよろし。監督は4作連投のジョン・グレン。

ライターは今回はDEAだが、CIAエージェントであることのほうが多い。探偵として出て来たこともある。作品によって仕事が違うという変わったキャラクターだ。

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