映画評「ライフ・ウィズ・ミュージック」

☆☆★(5点/10点満点中)
2021年アメリカ映画 監督シーア
ネタバレあり

オーストラリアの女性歌手シーアが作ったミュージック・クリップ集のようなミュージカルである。

自閉症の少女ミュージック(マディ・ジーグラー)の面倒を見ていた祖母が亡くなり、長らく離れていた片親違いの姉ズー(ケイト・ハドスン)が呼ばれる。両親はもういない。
 今は薬を売っているズーは、妹との生活に相当困惑し、アルコール依存症をぶり返して、問題行動を起こす。が、近所のガーナ出身の青年エボ(レスリー・オドム・ジュニア)と交流するうちに自分を見つめ直すことに成功、一度は施設に預けようとしたミュージックを連れ帰り、エボの兄の結婚式に二人して駆けつける。ズーとエボの仲は公認になる。

というお話で、IMDbの平均採点は3.2と、 僕が観た作品の中では多分数年ぶりの低さである。
 確かに冒頭に述べたように、ミュージック・クリップ集のようで、近所の中国系夫婦の養子のエピソードとその前後の関係を見ても、お話が上手く繋がっていないようなところがあり、そういう観点からは前記採点もやむを得ないところもあるが、ミュージック・グリップ的な場面はカラフルで楽しい。

これらの場面は何なのか言えば、言葉では感情を表現できないミュージックの心象風景である。邦画「勝手にふるえてろ」と同じく、ミュージカルの歌や踊りは登場人物の脳内の風景を描いているものであるということを示してくれるという点において、多少買いたい気持ちがあるのである。総合的な出来栄えに比して☆★が多いのは、偏にそれが理由。

8月に観た「梅切らぬバカ」という邦画では、母親が施設に預けた自閉症の息子を連れ帰っている。面倒を見ている方が却って自閉症の人に(精神的に)支えて貰っていることに気付くという点で似た内容。
 製作時期は本作のほうが早いが、日本公開は遅い。恐らく偶然の相似でありましょう。映画では時々かかる偶然の相似が起こる。

一見原題直訳に思われる邦題は、<音楽のある人生>と<ミュージックとの暮らし>の掛詞のつもりだろう。

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