映画評「007/ゴールデンアイ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1995年イギリス=アメリカ合作映画 監督マーティン・キャンベル
ネタバレあり

シリーズ第17作は、ピアース・ブロスナンによるジェームズ・ボンド第一作。映画の出来栄えはともかく、僕はブロスナンのボンドを割合贔屓にしている。ショーン・コネリーと並んで好色紳士的なムードをよく出しているのと思うのである。

最初に言っておきますと、Mが女性のジュディ・デンチとなって初登場。こんなに前でしたっけか。

冷戦時代のソ連の基地に乗り込んだ007ことジェームズ・ボンドが同僚の006(ショーン・ビーン)を犠牲にして、破壊した基地から逃げ出すというのが、プロローグ。
 9年後、ボンドは秘密組織ヤヌスの女性部員ゼニア(ファムケ・ヤンセン)をマークしてカーチェースを繰り広げる。彼女はロシアの悪徳将軍と組んでNATOの最新ヘリを盗み、シベリアの宇宙基地を襲撃、軍事衛星のコントロールを我が物とする鍵を手中に収める。この襲撃中生き残った二人のうち男子職員ボリス(アラン・カミング)はヤヌスと内通した人物で、もう一人は陰謀とは無関係にダイ・ハードに生き抜く女性職員ナターリア(イザベラ・スコルプコ)である。
 ロシアで戦車で大暴れした末に一味に捕まっていたナターリアを奪還したボンドは、彼女の調査で拠点と突き止めたキューバに急行、実は元006であるヤヌスと基地を滅ぼす為に工作をする。

個人的復讐で気勢の上がりにくかった前作よりはぐっとスパイものらしくて迫力があるが、脚本二人組が恐らく前作を意識して “感情的になるな” という台詞をMに吐かせているのが面白い。
 他方、復讐に燃えているのは元006のヤヌスで、煎じ詰めると軍事衛星を使った泥棒とデータの破壊が彼の目的と判明するのは肩透かしである。規模は大きいが、野望は小さい。これはこの後のシリーズにも時に顔を出す欠点と僕は何度か指摘して来た。

前作同様に乗り物を使ったアクションが派手で、特に007の操縦する戦車が街並みを破壊するシークエンスは壮観と言うべし。通常この手は悪漢側が行うことが多いが、007のほうが行うというのはアイデアである。その他見せ場にはことかかない。

ボンド・ガールは今回もなかなか良く、ポーランド生まれのイザベラ・スコルプコは僕好みの美人。彼女の東欧訛りの英語は本物かもしれない。オランダ生まれのファムケ・ヤンセンはなかなか凄味があり、この後も特殊能力を持つ女性役を多く宛がわれて現在に至っている(のは大衆映画ファンならご存知の通り)。

監督は新顔のマーティン・キャンベル。

正式邦題は原題にならって「ゴールデンアイ」らしい。

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