映画評「密告」(1943年)
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1943年フランス映画 監督アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
ネタバレあり
アルフレッド・ヒッチコックとはまた違うタイプのサスペンス映画の巨匠アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの第2作。彼の日本劇場公開作品では本作だけ観ていなかった。
フランスの田舎町で、【からす】と署名された怪文書が乱発されている。
その最大の被害者が、外からやって来た開業医ジェルマン(ピエール・フレネー)で、精神科医ボルゼー(ピエール・ラルケ)の若い細君ローラ(ミシェリーヌ・フランセ)と不貞を働いていると中傷して来る。彼女の姉妹の看護婦マリー(エレナ・マンソン)がそれをかき回すような言動を取るので、彼の評判はどんどん悪くなる。
他方、学校長の妹ドニーズ(ジネット・ルクレール)が彼を好いていて、仮病を使って彼を呼び、関係を迫る。
彼以外にも被害は広がり、癌であるという手紙を受け取った患者が自殺する。ここに至って町民の圧力で警察も動き出し、マリーを逮捕する。ところが、その拘禁中に教会の上部から【からす】の手紙を落下して来た為犯人は別にいると判明、町の有力者たちは教会にいた人物に絞って犯人を特定しようとする。
凡そこんなお話で、書かれた手紙の内容が真実か否かをめぐって町民が疑心暗鬼になり、映画はひどく重い空気を漂わす。最終的には本格ミステリーに似て、誰が手紙の送り主かというところに収斂していくが、犯人と思しき人物は二転三転する。
しかし、この作品では、犯人当てが眼目ではなく、その暗く重い空気感こそ主題である。クルーゾーが対独協力者として疑われた事実の後、ドイツ支配下のフランスで作られたことを考えれば、彼が主人公と重なって来るという次第。
お話を通して関連する人々の人間性を浮き彫りにしていくのが主眼で、後年の作品と比べても全くけれんのない内容なので、Allcinemaの投稿者のように一般の人が退屈する可能性は否めないが、画面は地味ながらかっちりしているので、この辺をきちんと見てほしい。幕切れの、自殺した患者の老母(シルヴィー)が去って行くまでのカット割りは、特に秀逸。
ただ今この時代のフランスを描いた大河小説「レ・コミュニスト」を読んでいるデス。10分冊で通算2500ページ、文庫本にすれば3500ページくらいになりそうな大長編です(しかも未完)。
1943年フランス映画 監督アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
ネタバレあり
アルフレッド・ヒッチコックとはまた違うタイプのサスペンス映画の巨匠アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの第2作。彼の日本劇場公開作品では本作だけ観ていなかった。
フランスの田舎町で、【からす】と署名された怪文書が乱発されている。
その最大の被害者が、外からやって来た開業医ジェルマン(ピエール・フレネー)で、精神科医ボルゼー(ピエール・ラルケ)の若い細君ローラ(ミシェリーヌ・フランセ)と不貞を働いていると中傷して来る。彼女の姉妹の看護婦マリー(エレナ・マンソン)がそれをかき回すような言動を取るので、彼の評判はどんどん悪くなる。
他方、学校長の妹ドニーズ(ジネット・ルクレール)が彼を好いていて、仮病を使って彼を呼び、関係を迫る。
彼以外にも被害は広がり、癌であるという手紙を受け取った患者が自殺する。ここに至って町民の圧力で警察も動き出し、マリーを逮捕する。ところが、その拘禁中に教会の上部から【からす】の手紙を落下して来た為犯人は別にいると判明、町の有力者たちは教会にいた人物に絞って犯人を特定しようとする。
凡そこんなお話で、書かれた手紙の内容が真実か否かをめぐって町民が疑心暗鬼になり、映画はひどく重い空気を漂わす。最終的には本格ミステリーに似て、誰が手紙の送り主かというところに収斂していくが、犯人と思しき人物は二転三転する。
しかし、この作品では、犯人当てが眼目ではなく、その暗く重い空気感こそ主題である。クルーゾーが対独協力者として疑われた事実の後、ドイツ支配下のフランスで作られたことを考えれば、彼が主人公と重なって来るという次第。
お話を通して関連する人々の人間性を浮き彫りにしていくのが主眼で、後年の作品と比べても全くけれんのない内容なので、Allcinemaの投稿者のように一般の人が退屈する可能性は否めないが、画面は地味ながらかっちりしているので、この辺をきちんと見てほしい。幕切れの、自殺した患者の老母(シルヴィー)が去って行くまでのカット割りは、特に秀逸。
ただ今この時代のフランスを描いた大河小説「レ・コミュニスト」を読んでいるデス。10分冊で通算2500ページ、文庫本にすれば3500ページくらいになりそうな大長編です(しかも未完)。
この記事へのコメント