映画評「クリーチャー・デザイナーズ ハリウッド特殊効果の魔術師たち」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2015年フランス映画 監督ジル・パンソ、アレクサンドル・ポンセ
ネタバレあり

レイ・ハリーハウゼン 特殊効果の巨人」(2011年)でコマ撮りにアプローチしたジル・パンソが、今度はアレクサンドル・ポンセと組んで、もっと幅広くSFX全般を取り上げたドキュメンタリー。

コマ撮り、着ぐるみというSFXの古典的手法から、僕の理解よりぐっと後発の特殊メイク、本格的なアニマトロニクス(コンピューターで操作する一種のロボット)を経てCGへと進む特殊撮影・特殊効果史が、リック・ベイカー、アレック・ギリス、スティーヴ・ジョンスンといった現役の特殊効果の有名技術者や、ジョー・ダンテ、ジョン・ランディス、ギレルモ・デル・トロの三監督により、綴られていく。出演はないが、文字通りレジェンドになった「エクソシスト」で有名な特殊効果の第一人者ディック・スミスの名前も出てくる。

案外後発らしい特殊メイクだが、俳優のロン・チェイニー(「オペラの怪人」で有名)、「フランケンシュタイン」の技術者ジャック・ピアースが先行してそれらしきものをものした。コマ撮りでは「キング・コング」の後、勿論ハリーハウゼン(「アルゴ探検隊の大冒険」)が出てくる。アニマトロニクスの原始的な創始者としてジョルジュ・メリエスが紹介される。

この辺りの技術を経て、1970年代後半から、リック・ベイカーが携わる「スター・ウォーズ」「ハウリング」「狼男アメリカン」等で特殊メイク、「エイリアン」「グレムリン」等でアニマトロニクスが大活躍する時代がやって来る。
 「ジュラシック・パーク」辺りから動くものにおけるCGでの質感がぐっとアップした記憶があるが、あの映画はCGとアニマトロニクスとが協力し合う形であのような成果を上げたとの由。僕はほぼCGなのかと思っていましたよ。

実はこの後もアニマトロニクスは補完的に活躍するのだが、ご存知のようにCGが優勢になる。その代わり、演技者をCGアニメ化するモーション・キャプチャーもしくはパフォーマンス・キャプチャー(「アバター」等)という人間とVFXが協力する技術も生まれる。個人的には、この技術は好かないが。
 CGによる動物に関する最終兵器はロボット工学で、これにより実に正確な動きが実現しているらしい。「ジュラシック・パーク」シリーズがその恩恵を受けている。

フランス映画のせいか、本編の映像紹介が少ない。画面が重要な映画を振り返る作品としてはそこが弱い。

僕は見た目が貧弱でもVFX(CG等)より狭義のSFXのほうが好きである。経験則で言えばいかにも作り物であるから却って想像力に訴え、感動が増幅されるのだ。逆に、本作でも触れる人がいたように、CGしか知らない人は“CGで何でも視覚化できる”と思って観る為どうやって撮ったのかという疑問が一切ないので、逆に感動が少ない。こうした画面に対して凄いと思うことはあるだろうが、若い人が気の毒である。

総じて、こうした現状で、これから若い人が映画界に入って何が出来るのかという点において、出演者たちは非常に悲観的だ。直接そこまで言う人はいないが、CGが映画作りをつまらなくしたと思っている風情が漂っている。

CGの進歩・普及のせいで、僕のジャンル分けで言う(実写とされる)SF/ファンタジー映画が非常に増えた。ホラー映画も増えた。僕が若い時はSF映画は年に数本だったが、最近はコミックの映画化だけでも二桁になるかもしれない。あるいはWOWOWなどに出てくる未公開作品を数えれば月に二桁に及ばんとする。このレベルになると僕は殆ど観ないが。

この記事へのコメント

2022年11月14日 12:11
>僕は見た目が貧弱でもVFX(CG等)より狭義のSFXのほうが好きである。

私もです。オカピーさんがおっしゃっているように、芝居のために作り物でやってるのが感じられる方が、見ていて想像力が膨らませやすいです。

だいぶ前に読んだのですが、橋本治が映画「アマデウス」を見て、ヨーロッパでロケしたので建物とか本物ってことになるけど、背景が芝居していないので映画全体がいまひとつ弾まないみたいなことを言ってて。そういうのもあるでしょう。
そういう感覚がCGによって消えていくのかもしれませんが。
オカピー
2022年11月14日 18:50
nesskoさん、こんにちは。

>橋本治が映画「アマデウス」を見て、
>背景が芝居していないので映画全体がいまひとつ弾まないみたいなことを言ってて。

背景が芝居をしていない、か!
さすがに作家は仰ることが洒落ています。実に面白い。

>そういう感覚がCGによって消えていくのかもしれませんが。

これが問題なんですよね。
僕、想像力で映画を観ることを知らない今の若い人が可哀想だと勝手に言っているわけですが、本人たちはその世界を碌に知らないから全然もんだいとしていない。
昔の作品を知っている人間にとって映画がどんどんつまらないものになるのは、むべなるかな。