映画評「港のマリー」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1949年フランス映画 監督マルセル・カルネ
ネタバレあり
1990年代に衛星放送で観た時に“傑作だわい”と思ってIMDbで☆☆☆☆★を進呈した。今回は、マルセル・カルネの力の抜けた人間観察記として面白味を感じるものの、そこまでは行かず、★一つ分落とす。
後年雨傘でお馴染みになるシェルブールで酒場と映画館を営む中年紳士ジャン・ギャバンが、内妻ブランシェット・ブリュノワを父親の葬儀に連れていく。彼らが頻繁に往来するところを見ると、シェルブールからそれほど遠くはない北部の小さな港町である。
彼は売りに出されていたおんぼろ船舶と共に、18歳の妹ニコール・クールセルの勝気な性格にぐっと来る。彼は船長として船舶の修理の為に足繫くこの町に通う。彼女は理容師の恋人クロード・ロマンと清らかな交際を続けているが、どうも考えの甘い若者に満足できない。他方、ブランシェットと倦怠期を迎えていたギャバンは、地元の酒場で働き始めたそこはかとなく賢い小娘への思いを処理しきれず言動がチグハグになる。
ロマンは嫉妬に苦しんでギャバンの車の前に実を投げようとして助けられ、酒場を兼ねた彼の家の二階に居候になり、ブランシェットと同病相哀れむような関係になる。ブランシェットはパリに、若者は海外に出ると息巻く。
そこへ若者の居場所を知ったニコールが現れた為、結果は推して知るべし。最終的に船を譲って新船長となった男の、彼女を非常に心配する声を聞いたギャバンは、彼女が帰る為に乗ったバスを途中で止めて下ろし、彼女に店の鍵を渡す。
中年紳士と少女の恋愛感情の推移を綴っていると言って間違いないが、だからと言ってこの幕切れの甘さを以ってがっかりする必要はあるまい。何故ならこの作品は男女4人の心情を描くことこそ肝であって、一般的な恋愛映画のようにハッピーエンドかビターエンドかを見極める映画ではないと思うからである。
プレイボーイで恋愛術に長けたはずの中年紳士ギャバンが自分の感情に当惑する様子や、最後ニコールが受け取った店の鍵をぐっと握り締める手をアップすることで、おぼこであると同時に打算もきちんとする少女の性格を如実に示している辺りを、映画的に楽しむべきであろう。
ブランシェットの、疲れているが未来への夢は捨て切っていない女性の性格造型も鮮やかと言うべし。
港と言えば、日本ではヨーコです。
1949年フランス映画 監督マルセル・カルネ
ネタバレあり
1990年代に衛星放送で観た時に“傑作だわい”と思ってIMDbで☆☆☆☆★を進呈した。今回は、マルセル・カルネの力の抜けた人間観察記として面白味を感じるものの、そこまでは行かず、★一つ分落とす。
後年雨傘でお馴染みになるシェルブールで酒場と映画館を営む中年紳士ジャン・ギャバンが、内妻ブランシェット・ブリュノワを父親の葬儀に連れていく。彼らが頻繁に往来するところを見ると、シェルブールからそれほど遠くはない北部の小さな港町である。
彼は売りに出されていたおんぼろ船舶と共に、18歳の妹ニコール・クールセルの勝気な性格にぐっと来る。彼は船長として船舶の修理の為に足繫くこの町に通う。彼女は理容師の恋人クロード・ロマンと清らかな交際を続けているが、どうも考えの甘い若者に満足できない。他方、ブランシェットと倦怠期を迎えていたギャバンは、地元の酒場で働き始めたそこはかとなく賢い小娘への思いを処理しきれず言動がチグハグになる。
ロマンは嫉妬に苦しんでギャバンの車の前に実を投げようとして助けられ、酒場を兼ねた彼の家の二階に居候になり、ブランシェットと同病相哀れむような関係になる。ブランシェットはパリに、若者は海外に出ると息巻く。
そこへ若者の居場所を知ったニコールが現れた為、結果は推して知るべし。最終的に船を譲って新船長となった男の、彼女を非常に心配する声を聞いたギャバンは、彼女が帰る為に乗ったバスを途中で止めて下ろし、彼女に店の鍵を渡す。
中年紳士と少女の恋愛感情の推移を綴っていると言って間違いないが、だからと言ってこの幕切れの甘さを以ってがっかりする必要はあるまい。何故ならこの作品は男女4人の心情を描くことこそ肝であって、一般的な恋愛映画のようにハッピーエンドかビターエンドかを見極める映画ではないと思うからである。
プレイボーイで恋愛術に長けたはずの中年紳士ギャバンが自分の感情に当惑する様子や、最後ニコールが受け取った店の鍵をぐっと握り締める手をアップすることで、おぼこであると同時に打算もきちんとする少女の性格を如実に示している辺りを、映画的に楽しむべきであろう。
ブランシェットの、疲れているが未来への夢は捨て切っていない女性の性格造型も鮮やかと言うべし。
港と言えば、日本ではヨーコです。
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