映画評「ファイター、北からの挑戦者」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2020年韓国映画 監督ユン・ジェホ
ネタバレあり

韓国映画でもこういうインディ系の映画は、喜劇性とシリアス性の振幅で勝負する韓国大衆映画流の見せ方はしない。そこが気に入った。

中国を経て韓国へやって来た脱北女性イム・スンミが、仲介者の紹介で仕事に精を出し、二つ目のバイト先であるボクシング・ジムで若い指導員ペク・ソビンにボクシングの経験を見抜かれる。軍隊時代に仕込まれたものである。館長オ・グォンロクにも認められ、脱北者ということでマスコミにも多少注目される。
 彼女には先に単独で脱北し別の男性と家を構えている母親がいるが、十数年前12歳の時に捨てられたという思いは容易に捨てられない。ジムにやって来た母親の手を振り解いた結果、母親が倒れて昏倒、一時意識不明になる。しかし、蘇生した母親は彼女を責めず、今の夫との娘に真相を語る。
 母親の真情に触れて憎悪という呪縛を取り除いた彼女は、プロ・デビュー戦に招く。

というお話は、脱北者の置かれる現状すなわち彼らに対する韓国人の意識をつぶさに描いてなかなか興味深い。
 現状というのは即ち偏見・差別である。女子ボクサーの彼女に対する扱いは所謂差別であるし、行政が彼らを優遇したり、マスコミがちょっとしたことに関心を示すのも、時には一種の優越意識から来る差別・偏見と言えないこともない。

作劇は大きなうねりや起伏を避けて極めて現実的なアプローチに徹し、素朴と言うべし。監督ユン・ジェホがドキュメンタリー出身らしくハンディ・カメラを使った画面は自ずとセミ・ドキュメンタリーらしいムードを漂わすが、わざとらしくカメラを揺らすことはなく堅実。

僕のように韓国大衆映画が苦手な人はどうぞ。

勿論、この先にある作者の思いは南北分断の問題でござる。

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