映画評「マークスマン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2021年日本映画 監督ロバート・ロレンツ
ネタバレあり

メキシコ国境疑似家族ものという点で一ヶ月半前に観た「クライ・マッチョ」と好一対を成すサスペンス・アクションである。

メキシコ国境付近で牧畜するリーアム・ニースンが、国境のフェンスにある穴から入って来た母テレサ・ルイスと11歳の息子ジェイコブ・ペレスを発見し、国境警備隊に通報する。しかし、その為に彼は命の危険と隣り合わせになることになる。
 というのも、母子は母親の弟が麻薬マフィアからネコババした金を持っていた為に追われてい、通報でもたつくうちに連中が現れたからである。ニースンは元海兵隊の銃名手で、銃撃戦を制して危機を脱するが、母親が被弾、彼に大金を渡してシカゴの親類の家に息子を連れて行ってくれと懇願して、事切れる。
 一度は警備隊に子供を渡した彼はやがて母親の願いに対して男気を発揮、警備隊に勤める娘(再婚相手たる亡妻の娘)キャサリン・ウィニックとの関係に心を揺らしながら、ジェイコブ君を連れ出し、シカゴを目指す。
 しかし、マフィアの親分フアン・パブロ・ラバは、銃撃戦で弟が死んだ為に目的を復讐に変えて、逃げる二人を追いかける。

先述した通りお話の構図は「クライ・マッチョ」と似ているが、あちらは主人公と子供の心情に重きを置いたドラマ仕立て、こちらは逃避のサスペンス性に重点を置いたアクションという大きな違いがあり、単純には比較できない。
 年を取って来たので「クライ・マッチョ」の身に沁みる枯淡の味の方を好むものの、基本的にシンプルな構成の映画を愛するので、ストレートな見通しの良い本作にも捨てがたいものを覚える。

「クライ・マッチョ」の悪党が単なるチンピラ群であるのに対し、こちらは凶悪なマフィア一味で、しかもITを駆使して主人公の居場所に接近していく辺りは現在的でなかなか面白い。
 他方、タフな男が子供や弱い者を守るという「96時間」以降のニースンのアクション映画の繰り返しというマンネリ感を禁じ得ないという点は大いにマイナスである。

裏返せば、ニースンのサスペンス・アクションを全く観たことがない人には、ボディガードものとして型通りの憾みがあるとは言え、それなりに楽しめるような気がする。

スリルとサスペンスと言えば、今朝のW杯である。終了10分前くらいまで日本を含むどのチームにも決勝トーナメント進出する可能性があった。ドイツVSコスタリカ戦が引き分けであれば、日本もドローでOKだったが、再逆転したドイツが終了間際に2点差で勝利を決定的にしたことで日本は引き分けではダメになり、アディショナル・タイムの7分間は実に長かった。しかし、面白かった。

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