映画評「ロスト・レオナルド~史上最高額で落札された絵画の謎~」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2021年デンマーク=フランス合作映画 監督アンドレアス・クーフート
ネタバレあり

先日の「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」と同工異曲のアート・ドキュメンタリーである。

発端から結果に至るまでの経緯は同じで、証言する人々の顔触れもかなり共通する。
 本作独自なのは、最終的に国際マネーが絡んできた為に、CIA関係者が2名が出て来ることである。為に「ダ・ヴィンチ」が途中から突然スリラーになるような印象を受けるのに対し、本作は最初からサスペンス映画的に作っているという印象を受ける。

同時に、本作は「ダ・ヴィンチ」にも出て来た女性修復家ダイアン・モデスティーニを軸に構成されてい、彼女の心情を本格的に交えている為に、ひたすら人間のさもしさに下降していく「ダ・ヴィンチ」に比べると、芸術を巡る人間群像的な趣も醸成している。
 ダ・ヴィンチの真作であると言う人は夢を追う人と否定派が述べるのも尤もである一方、否定派は否定することによって目立とうとしていると言う肯定派の意見も面白く見られるのである。

個人的には、こちらのほうが流れがスムーズで、どのように高額化していったかがより解りやすく説明されているような気がする。
 TVドキュメンタリー・シリーズの一作である「ダ・ヴィンチ」が劇場公開されたのに対して配信だけの本作だが、画面はこちらのほうが断然タイトで映画的だ。説明者を捉える時も常識的なアップ・ショット~バスト・ショットがそれほど多くなく、ライティングの工夫があり、文字通り芸術的なドキュメンタリーであると言うべし。

芸術を扱う映画は、作品自体も芸術的なのが良いね。

この記事へのコメント

モカ
2022年12月12日 09:28
おはようございます。

タイトルに見覚えがあったのでUNEXTの観たいリストを探したらありました!
今月末で配信が終わる所でした。アップして下さってありがとうございます。

こんな事があった事すらしりませんでしたが、それにしても「事実は小説より奇なり」な世界ですね。 
「ラストディール 美術商と名前を失くした肖像」とは真逆の世界…でもこれが現実ですか。

美術品の修復もケースバイケースですね。
山田五郎のyoutubeで観ましたがフェルメールのあの有名な絵(タイトル知りません)が修復されたら壁面に額縁が描かれていて、余白の美を貴ぶ?日本人は見慣れた修復前の方が良かったという人が多いようです。

ダヴィンチの「最後の晩餐」をたまたま修復直後に行き合わせて見ることができたのですが、教科書に載っていた薄暗い(薄汚い)絵の方が最後の晩餐に相応しい感じがしました。修復後の絵は妙に明るくて、一見楽しいランチタイムに見えてしまう^_^
オカピー
2022年12月12日 20:45
モカさん、こんにちは。

>アップして下さってありがとうございます。

まだ残っていて良かったですね。

>「事実は小説より奇なり」な世界ですね。 

オイル産業にも限界があるので、サウジのプリンスが将来を見据えた投資だったという噂もあるようです。

>ダヴィンチの「最後の晩餐」
>修復後の絵は妙に明るくて、一見楽しいランチタイムに見えてしまう^_^

僕は映像でしか見ていませんが、確かにぐっと明るくなりましたね。
出来上がったイメージななかなか変わらないものです。