映画評「レンブラントは誰の手に」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年オランダ映画 監督ウケ・ホーヘンダイク
ネタバレあり

アート・ドキュメンタリー特集第3弾。
 「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」に似ている邦題より、インターナショナル・タイトル My Rembrandt のほうが内容に近い。と言うのも、本作は三つの絵画を巡る夫々性格の違う挿話で構成されているからである。

一つは、スコットランドの公爵の、保有する「読書する婦人」に対する愛情。偏愛とも言えるが、絵画をその芸術性から愛しているという点ではこれまで観て来た人々の態度の中では一番まっとうでござる。各エピソードが一周し、これをもって映画本編が終わる為、良い後味に貢献した。

一つは、名家ロスチャイルド家が相続税捻出の為に、対となる夫妻の絵画を売るお話。これを巡ってオランダのアムステルダム美術館とフランスのルーブル美術館が対立、関連する大臣も交えたすったもんだの末に共同所有となり、交互に公開することになる。
 高額すぎることを利用してのルーブルのずる賢さが浮かび上がり、必ずしも後味の良いお話とは言えないものの、まあ、美術館という器を通して大衆が観ることができるのは作品にとっても悪いことではない。

三つめは、「ヤン・シックスの肖像」を保有する名家シックス家の末裔その名もヤン・シックスは彼自身が優秀な画商で、レンブラントと確信する絵画が比較的安く出ているのが不思議で、研究の結果レンブラントの真作と確信、それが定評となって世界に広まって行くのだが、ライバルの画商が騙されたと告発する事件が起きる、というエピソード。

出て来る関係者の目的が純粋に芸術の為とは言いにくいものの、美術品を投機的に扱う人々に迫る「ダ・ヴィンチ」ほど生臭くないのは良い。
 しかるに、この三つが順不同に随時出て来る作り方はどうか。僕のように映像記憶の弱い人間には混乱必至なので、連作短編のように分けて作った方が明らかに親切である。

技法的には、ヤン・シックスの挿話で、ドキュメンタリーなのにドラマ映画のような本格的なカット・バックが出て来たのが新鮮。

現在のヤン・シックスは何代目? シックスだからと言って6代目ということもないはず。350年も経っているからね。

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