映画評「モービウス」

☆☆★(5点/10点満点中)
2022年アメリカ映画 監督ダニエル・エスピノーサ
ネタバレあり

一時期に比べるとアメ・コミの映画版が少なくなった。余り多すぎると相対的に価値が下がると考える僕は、多彩な映画を観たいという個人の指向性を別にしても、良いことだと思う。

本作は、「スパイダーマン」絡みの悪役モービウスの誕生譚である。アメ・コミ映画版の熱心なファンではない僕には「スパイダーマン」の映画版に出て来たか記憶がないが、Allcinemaの解説を読むと、映画においてスパイダーマンと闘ったことはないようである。

モービウス(ジャレッド・レトー)は生まれつき血液の病気を持っている反面、天才的な頭脳を持っていて人工血液でノーベル賞も受賞している。彼自身が現状の人工血液では生き延びられないのを何とかしようと、女医マルティーヌ(アドリア・アルホナ)の協力の下、吸血コウモリを利用した治療法を開発して自らを実験台に乗せたところ成功するどころか、コウモリのような動きと鋭い感覚を得てしまう。が、副作用の為に一定時間が経つと人間の血が欲しくなり、人工血液で誤魔化す日々が始まる。
 少年時代以来同病相憐れむ関係の親友マイロことルシアン(マット・スミス)がこの治療を希望するが、副作用の為に断ると彼が勝手に薬剤を服用、次々と殺害を繰り返した為に、モービウスは追われることになり、やがてマルティーヌを人質にしたマイロと闘うことになる。

というお話は、スパイダーマン式新吸血鬼誕生の巻に過ぎず、マーヴェル・コミックスとしては少々知恵が足りない感じ。

本編中ではモービウスは全く悪役の位置になく、マルティーヌが殺されるという事件があったとは言え、彼が何故悪役になるのか全く理解できない。最後の最後にちょっと新たなキャラクターが出て来て、これがメフィストフェレスのように悪の道に誘うようなのだが、それは次回のお楽しみとなっている。なーんだといったもんである。少なくとも本編中にそれを明快にしないといけないだろう。
 21世紀のVFX大作(主にマーヴェル映画だが)の悪いところは、TVシリーズ(シリアルもの)よろしく一回で完結すべきところまで完結しないことである。映画のTV化と僕は呼んでいる。

出来栄えは続編を期待させないが、何だかんだ言って作られるのではないか?

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