映画評「ストレイ 犬が見た世界」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2020年アメリカ映画 監督エリザベス・ロー
ネタバレあり
「GUNDA/グンダ」と同じく動物ドキュメンタリーだが、人が一人も出て来ないかの作品に対し、こちらは人間が無数に出て来る。この人間に対する扱いの違いが、即ち作者の狙いの違いであろう。
かの作品が動物に対して観客(人間)が勝手に動物の心情を忖度し物語を考えてしまうのに対し、こちらの本当の主題は人間なのではないかと思いたくなる。
邦題の通り、カメラは犬の眼の高さくらいのローアングルで撮られている。アメリカ映画ながら、舞台はトルコのイスタンブール。過去の犬の殺処分が国民に大いなる反感を買って、現在のトルコは犬を安楽死させたり、捕獲することが違法である。ちょっとした現代トルコ版“生類憐みの令”なり。
野良犬に関しては行政が関与して狂犬病が出ないように管理しているのだろうが、とにかく、野良犬は傍若無人に勝手気ままにどこにでも出没する。犬たちは車に関してそれなりに気を付けて道を渡ったりする。
そんな彼ら(主に三匹の犬)が出かけた道では女性たちが静かなデモを行っている。シリア移民の少年4人が犬を一匹欲しがり、勝手に持ち帰る。彼らは道に寝たカドで拘束され、犬は解放される。
少年たちは野良犬たちと同じ立場にあるが、その処遇は犬よりも厳しい。女性監督エリザベス・ローは、これに社会の矛盾を感じているのではないかと思う。
トルコの女性たちは、他のイスラム国家よりマシと思われるも、イスラムの教えに回帰しようとするエルドアン大統領により、以前より自由が制限されているのかもしれない。考えすぎかもしれぬものの、こちらも犬との比較を俎上に乗せている可能性はある。
因みに、犬たちが特別に優遇されているわけではない。
犬と人との距離は近いが、犬を嫌う人もいる。しかし、シリア移民と違って全く排除されない。それを知っているので、野良犬は人間に対して過剰に恐怖心も攻撃心も抱かないのである。
犬儒派と言われる古代ギリシャのディオゲネスの言葉が挿入される。ロー監督、哲学を勉強しているようだ。
2020年アメリカ映画 監督エリザベス・ロー
ネタバレあり
「GUNDA/グンダ」と同じく動物ドキュメンタリーだが、人が一人も出て来ないかの作品に対し、こちらは人間が無数に出て来る。この人間に対する扱いの違いが、即ち作者の狙いの違いであろう。
かの作品が動物に対して観客(人間)が勝手に動物の心情を忖度し物語を考えてしまうのに対し、こちらの本当の主題は人間なのではないかと思いたくなる。
邦題の通り、カメラは犬の眼の高さくらいのローアングルで撮られている。アメリカ映画ながら、舞台はトルコのイスタンブール。過去の犬の殺処分が国民に大いなる反感を買って、現在のトルコは犬を安楽死させたり、捕獲することが違法である。ちょっとした現代トルコ版“生類憐みの令”なり。
野良犬に関しては行政が関与して狂犬病が出ないように管理しているのだろうが、とにかく、野良犬は傍若無人に勝手気ままにどこにでも出没する。犬たちは車に関してそれなりに気を付けて道を渡ったりする。
そんな彼ら(主に三匹の犬)が出かけた道では女性たちが静かなデモを行っている。シリア移民の少年4人が犬を一匹欲しがり、勝手に持ち帰る。彼らは道に寝たカドで拘束され、犬は解放される。
少年たちは野良犬たちと同じ立場にあるが、その処遇は犬よりも厳しい。女性監督エリザベス・ローは、これに社会の矛盾を感じているのではないかと思う。
トルコの女性たちは、他のイスラム国家よりマシと思われるも、イスラムの教えに回帰しようとするエルドアン大統領により、以前より自由が制限されているのかもしれない。考えすぎかもしれぬものの、こちらも犬との比較を俎上に乗せている可能性はある。
因みに、犬たちが特別に優遇されているわけではない。
犬と人との距離は近いが、犬を嫌う人もいる。しかし、シリア移民と違って全く排除されない。それを知っているので、野良犬は人間に対して過剰に恐怖心も攻撃心も抱かないのである。
犬儒派と言われる古代ギリシャのディオゲネスの言葉が挿入される。ロー監督、哲学を勉強しているようだ。
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