映画評「SING/シング:ネクスト・ステージ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2020年アメリカ映画 監督ガース・ジェニングズ、
ネタバレあり

前回なかなか楽しませて貰ったミュージカル・アニメの第2作でござる。
 IMDbでは第1作より高い採点を得ているが、個人的には二番煎じということもあり、前回ほどは有難がれなかった。使われた既成曲の好みの差によるところが大きいだろうか。エルトン・ジョンが2曲、ビリー・アイリッシュが2曲、U2がBGMではないが3曲、等々。そんな中で気が利いている感じがするのは、ディオンヌ・ワーウィックもしくはアレサ・フランクリンの歌唱でお馴染みの「小さな願い」I Say a Little Prayer の使い方だ。

前回劇場の再生に大成功した興行主バスター・ムーン(声:マシュー・マコノヒー)が、ショー興行の聖地で成功するという野望を果たすべく、パフォーマーのロジータ(声:リース・ウィザースプーン)らと、暗黒街のボスたる大物興行主ジミー・クリスタル(声:ボビー・カナヴェイル)と交渉に臨んだ結果、15年前に世間から姿を消したロック界の大御所クレイ・キャロウェイ(声:ボノ)を出演させることを条件にスタートすることになる。
 しかし、キャロウェイは強硬手段で近寄る者を撃退するので難儀、その間にムーンが強制的に主演に据えられたクリスタルの娘ポーシャ(声:ホールジー)を脇役に降格させると、親バカのボスは怒ってムーンを殺害しようと部下に命を狙わせる。
 かくして一同はとんずらを決めるが、途中で彼の劇場で強引に一日だけの興行を打って出る作戦に転換する。父親のヤクザ気質に嫌気が差しているポーシャも協力する。その間にパフォーマーのパンク娘アッシュ(声:スカーレット・ヨハンスン)が粘った結果、キャロウェイも出演を応諾する。

ご存知のように、動物の擬人化というお子様受けの良い要素を加えているが、僕は動物の擬人化に疑問を覚えることが多い。動物に人間と同じ事をさせるだけでは意義が少ないからである。
 本作もその問題を完全に払拭しているとは言い難いものの、劇場占拠のシークエンスで子豚の大群が大活躍する場面が他愛ないながら、擬人化された動物である理由・お楽しみが見出せる。つまり、豚(などの動物)が子供をたくさん生むという現実を踏まえているのが良いのだ。

クライマックスは、キャロウェイがステージに出るのを躊躇する最終盤で、U2の「終りなき旅」I Still Haven't Found What I'm Looking For が、キャロウェイつまりボノ(U2のボーカル)自身が歌うところである。ボノが声を当てていると知っていれば余計に盛り上がる。僕は事前に声優を調べることなどないが、声で解ったのでそこはかとなく感激したデス。

型通りと言えば型通りのお話ながら、がっちりとした構成を物凄いスピードで、それでいて拙速にならずに展開する為、二番煎じという弱さがあっても相当楽しめる。

ギャグとしては、秘書のような事務員ミス・クローリー(声:監督のガース・ジェニングズ)に大いに笑わせてもらった。これも案外得点源かもしれませんな。

僕は原則的に吹替版で映画は観ない。キャラクターと声の一致がさほど重要ではないアニメではそのハードルは大分下がるが、ボノが歌っているこの映画を吹替えで観るのは、ビートルズのアニメ映画「イエロー・サブマリン」での演奏をコピー・バンドで聴くようなものだ。どんなに上手くても意味がない。

この記事へのコメント

2022年12月29日 15:51
吹き替え版で見たのですが、挿入歌によっては英語のまま、主要キャラが歌い上げるものは日本語の歌詞になってて、日本語版もとてもよくて、小さい子も楽しめる映画に仕上がってました。
ショーの場面で大昔のミュージカル映画の場面(たぶん私はザッツ・エンタテイメントかなにかで見ただけ)がうまく取り込まれているのに感心しました。
オカピー
2022年12月29日 22:12
nesskoさん、こんにちは。

>日本語版もとてもよくて、小さい子も楽しめる映画に仕上がってました。

アニメは元々大きな問題がない上に、子供が見るという前提であれば、本作のようなオリジナルの歌声が大事な作品でも、吹替版も十二分にありですね。