映画評「クリスマス・ウォーズ」
☆☆(4点/10点満点中)
2020年イギリス=カナダ=アメリカ合作映画 監督イアン・ネルムズ、エショム・ネルムズ
ネタバレあり
余程のメル・ギブスンのファン以外は観なくてもよろしい、と最初から言っておきます。
アラスカに細君ルース(マリアンヌ・ジャン=バプティスト)と暮らすクリス・クリングル(ギブスン)は、エルフを従業員にしてクリスマス用のおもちゃを作っている。彼は実はサンタクロースだが、最近世の中がおかしいと銃を常に携行している。
他方、性格が良くないとしてサンタクロースに炭をプレゼントされた大富豪の息子(チャンス・ハーストフィールド)は不愉快に思い、専属の殺し屋ジョナサン(ウォルトン・コギンズ)にサンタ殺害を依頼、証拠品の橇(最初は生首だったが、殺し屋が国境を越えられないとして拒否)を要求する。
極秘になっている住所を遂に探り当てた殺し屋は、現在不景気の為に一時的に米軍の兵器を作っている工場まで彼を追って来る。軍人も何のその全員仕留めて遂にサンタクロースと一騎打ちとなる。
というお話は、大人が見るには実に子供っぽいが、本来ターゲットにすべき12歳以下の子供たちには鑑賞が制限されている(PG12だから、親が許可すれば観られる)という矛盾した作品である。
コンパクトに見通しよく作られているので、最初から馬鹿馬鹿しいと決めつけなければ、大人でもそう退屈しないで観られるかもしれないが、これを喜ぶような大人でも困る。
サンタが銃を携行し、ファットマン変じてタフマンなのは、世界の良くない傾向を確かに風刺してそれなりに興味深い一方、例によって、サンタの奥さんが黒人女性で、夫を撃った殺し屋を仕留めるという、例によって例の如きポリ・コレ的作劇には少々ため息が出る。
ともかく、強い黒人女性という設定は、映画における人種問題、男女格差問題解決要求において一石二鳥なので、近年のアメコミの映画化などファンタジーものではお偉方は黒人女性という設定が多い。頭が良いと言えば良い。
僕などは色々なタイプが見たいので、そういうのがダメというわけではなく、そういう設定ばかりでも困る、と言っているのだ。皮肉なことに人権意識が高いインディ系・純文学系のほうが設定や見せ方に多様性がある。
最近当事者が当事者を演ずるべきだという妙な考えを主張する人がいるらしい。これほど俳優を馬鹿にした話もあるまい。それなら、ここ数年のコスチューム・プレイで観た、多くの民族に役をという目的の為に白人役を有色人種に当てた例はどうなる? どちらも人権意識の高い人々の考えることなのだが?
2020年イギリス=カナダ=アメリカ合作映画 監督イアン・ネルムズ、エショム・ネルムズ
ネタバレあり
余程のメル・ギブスンのファン以外は観なくてもよろしい、と最初から言っておきます。
アラスカに細君ルース(マリアンヌ・ジャン=バプティスト)と暮らすクリス・クリングル(ギブスン)は、エルフを従業員にしてクリスマス用のおもちゃを作っている。彼は実はサンタクロースだが、最近世の中がおかしいと銃を常に携行している。
他方、性格が良くないとしてサンタクロースに炭をプレゼントされた大富豪の息子(チャンス・ハーストフィールド)は不愉快に思い、専属の殺し屋ジョナサン(ウォルトン・コギンズ)にサンタ殺害を依頼、証拠品の橇(最初は生首だったが、殺し屋が国境を越えられないとして拒否)を要求する。
極秘になっている住所を遂に探り当てた殺し屋は、現在不景気の為に一時的に米軍の兵器を作っている工場まで彼を追って来る。軍人も何のその全員仕留めて遂にサンタクロースと一騎打ちとなる。
というお話は、大人が見るには実に子供っぽいが、本来ターゲットにすべき12歳以下の子供たちには鑑賞が制限されている(PG12だから、親が許可すれば観られる)という矛盾した作品である。
コンパクトに見通しよく作られているので、最初から馬鹿馬鹿しいと決めつけなければ、大人でもそう退屈しないで観られるかもしれないが、これを喜ぶような大人でも困る。
サンタが銃を携行し、ファットマン変じてタフマンなのは、世界の良くない傾向を確かに風刺してそれなりに興味深い一方、例によって、サンタの奥さんが黒人女性で、夫を撃った殺し屋を仕留めるという、例によって例の如きポリ・コレ的作劇には少々ため息が出る。
ともかく、強い黒人女性という設定は、映画における人種問題、男女格差問題解決要求において一石二鳥なので、近年のアメコミの映画化などファンタジーものではお偉方は黒人女性という設定が多い。頭が良いと言えば良い。
僕などは色々なタイプが見たいので、そういうのがダメというわけではなく、そういう設定ばかりでも困る、と言っているのだ。皮肉なことに人権意識が高いインディ系・純文学系のほうが設定や見せ方に多様性がある。
最近当事者が当事者を演ずるべきだという妙な考えを主張する人がいるらしい。これほど俳優を馬鹿にした話もあるまい。それなら、ここ数年のコスチューム・プレイで観た、多くの民族に役をという目的の為に白人役を有色人種に当てた例はどうなる? どちらも人権意識の高い人々の考えることなのだが?
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