映画評「クーパーの花婿物語」
☆☆☆(6点/10点満点中)
1944年アメリカ映画 監督サム・ウッド
ネタバレあり
第二次大戦中に集中して作られたサム・ウッド監督=ゲイリー・クーパー主演コンビの作品は、ヒューマンで良い後味を残ししつ、物足りなさを感じさせることが多い。一番出来が良いのはルー・ゲーリックの伝記映画「打撃王」(1942年)であろうが、他愛無さという意味では本作が断トツだ。
しかし、今だからこそ面白く観られるという側面があることに気付いた為、星は多めにした。戦前・戦中のハリウッド映画にはびっくりするくらい今のポリ・コレ推進者が喜ぶようなリベラルな作品が多い。しかも、現在のこれ見よがしの作り方ではなく、さらりと上手く扱っている為、素直に見ることができるのが良い。本作など、その典型ではあるまいか。
クーパー氏は懇意のひねくれ弁護士フランク・モーガンの娘アニタ・ルイーズと結婚を控えた前日に、シカゴの産院からお呼び出しを食らう。1年前に星占い狂の母とバッティングし、彼の注意から屋敷を焼いてしまった結果正式な結婚に至らなかった前の恋人テレサ・ライトとの絡みであると気付いて出かける。
病院に着くや否や彼自身が検査される理不尽な展開にびっくりするうち、彼女が生んだ娘を養子に出す為に彼の遺伝子的要因を調べる検査と判明する。クーパーは可愛い娘を養子に出すなどけしからんと突然不正本能に目覚め、病院から赤ん坊を拉致し、ホテルの女性従業員メアリー・トリーンと協力し合って懸命に面倒を見る。病院に居場所を捕まられたと知るや、単身男性は育児ができない当時の法律を逆手に取って従業員と結婚するという荒業を思い付く。
市役所に出かけた彼らと入れ替えに、テレサの父娘、アニタの父娘がほぼ同時にホテルにやって来る。
というドタバタの末に、クーパーを呼び寄せたくて養子のアイデアを出したというテレサに心情が明らかにされ、二人は元の鞘に戻る。
法律すら父親単独の養育を認めない(?)当時、父親が懸命に子供の世話をし、初めて子供を持った若い母親に子供との接し方を教えるなどという場面は、ナンセンスでしかなかったであろうが、今なら理想的とさえ言われるようなシチュエーションと言うべし。今でも依然コミカルな状況ではあるものの、ナンセンスではなく殆どコメディーにならない。
原作は「駅馬車」(1939年)の酔いどれ医師役で知られるトーマス・ミッチェル及びフロイド・デルによる戯曲。二人はコンビを組んで喜劇を幾つか作っている。
意図的かどうかは知らないが、若い男性が多く戦場へ行っている時代に子供をあやす男性が出て来るという設定は、考え方によっては厭戦的と言って良さそうな気がする。
因みに、主人公の名前はカサノヴァ。彼は色事師とは真逆のタイプだが、よく解らないうちに三人の女性をめぐって結婚騒動を繰り広げるという、カサノヴァの名前に関連付けたくなる面白さがある。
1944年アメリカ映画 監督サム・ウッド
ネタバレあり
第二次大戦中に集中して作られたサム・ウッド監督=ゲイリー・クーパー主演コンビの作品は、ヒューマンで良い後味を残ししつ、物足りなさを感じさせることが多い。一番出来が良いのはルー・ゲーリックの伝記映画「打撃王」(1942年)であろうが、他愛無さという意味では本作が断トツだ。
しかし、今だからこそ面白く観られるという側面があることに気付いた為、星は多めにした。戦前・戦中のハリウッド映画にはびっくりするくらい今のポリ・コレ推進者が喜ぶようなリベラルな作品が多い。しかも、現在のこれ見よがしの作り方ではなく、さらりと上手く扱っている為、素直に見ることができるのが良い。本作など、その典型ではあるまいか。
クーパー氏は懇意のひねくれ弁護士フランク・モーガンの娘アニタ・ルイーズと結婚を控えた前日に、シカゴの産院からお呼び出しを食らう。1年前に星占い狂の母とバッティングし、彼の注意から屋敷を焼いてしまった結果正式な結婚に至らなかった前の恋人テレサ・ライトとの絡みであると気付いて出かける。
病院に着くや否や彼自身が検査される理不尽な展開にびっくりするうち、彼女が生んだ娘を養子に出す為に彼の遺伝子的要因を調べる検査と判明する。クーパーは可愛い娘を養子に出すなどけしからんと突然不正本能に目覚め、病院から赤ん坊を拉致し、ホテルの女性従業員メアリー・トリーンと協力し合って懸命に面倒を見る。病院に居場所を捕まられたと知るや、単身男性は育児ができない当時の法律を逆手に取って従業員と結婚するという荒業を思い付く。
市役所に出かけた彼らと入れ替えに、テレサの父娘、アニタの父娘がほぼ同時にホテルにやって来る。
というドタバタの末に、クーパーを呼び寄せたくて養子のアイデアを出したというテレサに心情が明らかにされ、二人は元の鞘に戻る。
法律すら父親単独の養育を認めない(?)当時、父親が懸命に子供の世話をし、初めて子供を持った若い母親に子供との接し方を教えるなどという場面は、ナンセンスでしかなかったであろうが、今なら理想的とさえ言われるようなシチュエーションと言うべし。今でも依然コミカルな状況ではあるものの、ナンセンスではなく殆どコメディーにならない。
原作は「駅馬車」(1939年)の酔いどれ医師役で知られるトーマス・ミッチェル及びフロイド・デルによる戯曲。二人はコンビを組んで喜劇を幾つか作っている。
意図的かどうかは知らないが、若い男性が多く戦場へ行っている時代に子供をあやす男性が出て来るという設定は、考え方によっては厭戦的と言って良さそうな気がする。
因みに、主人公の名前はカサノヴァ。彼は色事師とは真逆のタイプだが、よく解らないうちに三人の女性をめぐって結婚騒動を繰り広げるという、カサノヴァの名前に関連付けたくなる面白さがある。
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