映画評「スパークス・ブラザーズ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2021年イギリス=アメリカ合作映画 監督エドガー・ライト
ネタバレあり

スパークス・ブラザーズという兄弟がいるわけでも、そういうバンドがあるわけでもない。本当はロンとラッセルのメイル兄弟がそれぞれキーボードとヴォーカルを担当するロック・ペアで、当初のザ・スパークス・ブラザーズというアイデアからスパークスをバンド名にいただき現在まで活動を続けている。前身のハーフネルスンを含めれば50年を超える。

アメリカ出身ながら英国で人気が出て、欧州でも僕が考える以上に知名度があるらしい。
 初期はちゃんとバンドを構成していたが、英国に渡ることを決めた時から二人組+バック・バンドという構成でやって来たようである。個人的には「キモノ・ハウス」(有名な Come on-a My House のパロディーだろう)というLPが音楽雑誌に紹介されていたのと、 “ローリング・ストーン・レコードガイド” での紹介で知っている程度。実際に聞いたことはなかった。

日本での知名度も推して知るべしだが、音楽好き監督エドガー・ライトが作ったこのドキュメンタリーの証言者の顔ぶれを見ると、影響力は侮れない。
 トッド・ラングレン(ハーフネルスン時代をプロデュース)、ジョン・テイラー&ニック・ローズ(デュラン・デュラン)、フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、ベック、ビョーク、アル・ヤンコビック、ジェーン・ウィードリン(ゴーゴーズ)などがファンを自任している。ジョルジョ・モロダーとの共作もある。
 “ローリング・ストーン” 誌の評者は、 クイーンに悪い影響を与えたので全ての作品から★一つ引いておく、とユニークなことを言っている。

逆に、二人が尊敬してやまないのはビートルズで、アメリカでの公演を2回観ているらしい。ポール・マッカートニーが「カミング・アップ」Coming Up のMVで色々な人物に扮する中ヒトラー髯のロンも演じたのに感激したと、二人は告白している。

ポップな楽曲を聞くだけでは解らないが、初期の演奏の様子を捉えた映像を見ると相当奇妙きてれつで、コミカル・バンドと思われたフシもある。基本的にポップ指向であるが、音楽的に色々と試行錯誤して変遷激しく、結果として毀誉褒貶も激しかったらしい。
 そうした雑多とも言える内容を網羅するので、少なからぬ証言者による証言もスピーディーに切り替わり、証言者が後で再登場しても誰だか解らないということがままある。
 劇映画監督が作っている為、フッテージを象徴に利用した画面もあってなかなか面白い。

21世紀になって頻繁に来日するようになったらしいのは、Wikipediaを眺めると解り、本編でも日本での写真が幾つか出て来る。

クイーンにどのような悪影響を与えたか興味がある人はご覧ください(解るかどうか責任は持てませんが)。

この記事へのコメント

2022年12月31日 10:42
私もたまたま見たんですが、引き摺り込まれました。

「変貌し続ける」ことが彼らのアーティストとしての立ち位置だ
ったことがよく理解できる優れたドキュメンタリーだったかと!
オカピー
2022年12月31日 19:47
onscreenさん、こんにちは。

>「変貌し続ける」ことが彼らのアーティストとしての立ち位置
>だったことがよく理解できる

そういう評価が妥当ですね。
僕はできませんでしたが^^;

良いお年を!