映画評「マリー・ミー」

☆☆★(5点/10点満点中)
2022年アメリカ=日本=中国合作映画 監督カット・コイロ
ネタバレあり

1960年代~70年代初めのロックを中心に聴いて来た。YouTubeを使って自作CDを作るようになってから、一番弱点のヴォーカルものもアルバムごとにCD化しようと、評価も高いシャナイア・トウェインやテイラー・スウィフトにアクセスした。
 ところが、彼女たちの声が少々妙なのである。高めが機械的な声に聞こえる。ミュージカル映画の声も同じような印象を受けたので最近調べたところ、ピッチを調整できるオートチューンなるエフェクターを使うとあのような声になるらしい。シンセのドラムのような違和感があり、どうも気に入らない。
 ポップを中心に流行しているようで、大半の歌手が用いているような気がしてきた。日本の楽曲はどうかと思い、殆ど使っていないアマゾン・ミュージックで通して聞いてみたところ、結構な割合で遭遇する。エフェクターに関係なく、コンデンサー・マイクは電気を使わないダイナミック・マイクより機械的な声になる可能性を内包しているにしても、以前は気にならなかったわけで、どうも好かない。
 それを完全にフィーチャーした曲なら良いが、それがその歌手のスタンダードであるとしたら、地声はライブ以外には解りようがない(ライブでも必ず解るわけではない)。僕の印象は合っていたようで、あるサイトによれば、もはやデフォルトということだ。
 この映画で主演するジェニファー・ロペスの歌声も基本的にそれだったので、こんな話から始めてみた。

先日「ウェディング・ハイ」という邦画を見て、ジェニファー主演の「ウェディング・プランナー」という映画を思い出し、そう言えばWOWOWのパンフレットに彼女の主演映画があったなと配信で観てみた。危く見逃すところだった。

スーパースターをヒロインに据えたロマンティック・コメディーである。

ヒスパニックの美人人気歌手ジェニファーが、同じくヒスパニック系大スターのマルーマと、公衆の面前でライブ結婚をしようとするが、SNSで彼の浮気を知り、11歳の娘クロエ・コールマンらに誘われてたまたまライブ会場にいた小学生の数学教師オーウェン・ウィルスンとの結婚を宣言してしまう。
 箱入り娘同然な彼女は、彼が付き合ってみると好人物であると気付き、彼の勧めで自力で全てをやってみることに挑戦する。彼も露出に苦痛を感じている彼女の気持ちを理解して彼女に傾いていく。
 が、マルーマが再びアプローチしてきたことからウィルスンは彼女との関係を自然に断とうとする一方、彼女は彼の自然体の人生に惹かれ、あがり症のクロエも参加する彼引率の数学大会の会場へ駆けつける。

大人向けおとぎ話で、スーパースターが一般人と出会い頭の結婚をするといったアイデアは余りなかったように思うし、ロマンスに娘の数学大会を絡めたところも一応の新味だが、その後のロマンスの紆余曲折は全く型通りで面白味を殆ど感じない。もはやSNSも新味とば言えない。

日本の各映画サイトの平均得点は3.7~3.9(5点満点)と低くないが、見落としても何の問題もない出来栄えでした。アメリカ人が余り買わなかったことが伺えるIMDbの平均得点6.1(10点満点)が実力を正確に反映していると思う。これならコミックを映画化した邦画のロマンスでも良い勝負ができる。

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