映画評「愛のまなざしを」
☆☆★(5点/10点満点中)
2021年日本映画 監督・万田邦敏
ネタバレあり
万田邦敏という監督は初めてと思ったが、「接吻」という優れた心理サスペンスを観ていた。自分の映画評を読んでみたら、本作と共通する要素が色々見出された。
かの作品で国選弁護士を演じた仲村トオルが今回は心療内科医に扮する。彼が、同僚という男に連れて来られたOL?杉野希妃を診ることになる。怒りっぽく精神が不安定なのだと言う。鬱病の末に自殺した妻・中村ゆりが忘れられずその幻想と会話する彼は、治ったと称して自分にモーションをかけてくる希妃と再婚をすることで、その患いを乗り越えようとする。
義弟・斎藤工が、甥・藤原大祐を構わない彼を諫めにやって来る。仲村は、義弟や父親に馴染まない息子の発言を踏まえて、別の家で彼女と同居を始め医院でも雇用し始めるが、彼の態度に満足できない彼女は斎藤に接近して色仕掛けを繰り出す。
その行動に疑問を感じた斎藤がSNSにアクセスするうちに彼女が最初から嘘を付いていたことが判る。彼女はその伝で、中村に細君に関する嘘を吹き込む。彼女との関係が元で心療内科は経営できない状態にまで追い込まれる。
挙句、彼女は彼を呼び出して自殺幇助を要求する。
「接吻」とはサイコ・スリラー寄りの心理サスペンスと言うジャンルで共通するほか、同病相憐れむ男女が(厳密には一方的にシンパシーを抱いた女が男に)接近するという構図が似ている。
生まれつき精神的な問題を抱えていたと理解できるヒロインは、唯一自分を理解していた祖母が忘れられない。時にあの世で一緒にいたいと思う。主人公も誰もいない医院で想像上の妻と会話する。それほど忘れられないのである。しかるに、忘れられない理由が愛情のせいなのか、義弟の言うように治療が出来ずに死なせてしまった自責の念のせいなのかは曖昧。
その他、留置所での会話、包丁といった共通点もあり、「接吻」のアングルを変えた焼き直しのような感じが強いが、映画的にあるいは心理分析的に色々と考えたくなったかの作品に比べると、登場人物の行動が直球過ぎて、多分にエロを見せるのを主眼にした作品がおためごかし的に心理劇に要素を入れたといった印象を与えかねないのである。実際はそうでないことは解っているが、杉野希妃という女優のキャラクターや服装のせいで、そういう安っぽいムードが醸成されてしまうのではないか。
絵のかかった医院のインテリアなど画面は面白いが、どうもお話に足を引っ張られる。
オリジナル・ラブを思い出すタイトル。発表は1993年だとか。もう30年も前なのか。
2021年日本映画 監督・万田邦敏
ネタバレあり
万田邦敏という監督は初めてと思ったが、「接吻」という優れた心理サスペンスを観ていた。自分の映画評を読んでみたら、本作と共通する要素が色々見出された。
かの作品で国選弁護士を演じた仲村トオルが今回は心療内科医に扮する。彼が、同僚という男に連れて来られたOL?杉野希妃を診ることになる。怒りっぽく精神が不安定なのだと言う。鬱病の末に自殺した妻・中村ゆりが忘れられずその幻想と会話する彼は、治ったと称して自分にモーションをかけてくる希妃と再婚をすることで、その患いを乗り越えようとする。
義弟・斎藤工が、甥・藤原大祐を構わない彼を諫めにやって来る。仲村は、義弟や父親に馴染まない息子の発言を踏まえて、別の家で彼女と同居を始め医院でも雇用し始めるが、彼の態度に満足できない彼女は斎藤に接近して色仕掛けを繰り出す。
その行動に疑問を感じた斎藤がSNSにアクセスするうちに彼女が最初から嘘を付いていたことが判る。彼女はその伝で、中村に細君に関する嘘を吹き込む。彼女との関係が元で心療内科は経営できない状態にまで追い込まれる。
挙句、彼女は彼を呼び出して自殺幇助を要求する。
「接吻」とはサイコ・スリラー寄りの心理サスペンスと言うジャンルで共通するほか、同病相憐れむ男女が(厳密には一方的にシンパシーを抱いた女が男に)接近するという構図が似ている。
生まれつき精神的な問題を抱えていたと理解できるヒロインは、唯一自分を理解していた祖母が忘れられない。時にあの世で一緒にいたいと思う。主人公も誰もいない医院で想像上の妻と会話する。それほど忘れられないのである。しかるに、忘れられない理由が愛情のせいなのか、義弟の言うように治療が出来ずに死なせてしまった自責の念のせいなのかは曖昧。
その他、留置所での会話、包丁といった共通点もあり、「接吻」のアングルを変えた焼き直しのような感じが強いが、映画的にあるいは心理分析的に色々と考えたくなったかの作品に比べると、登場人物の行動が直球過ぎて、多分にエロを見せるのを主眼にした作品がおためごかし的に心理劇に要素を入れたといった印象を与えかねないのである。実際はそうでないことは解っているが、杉野希妃という女優のキャラクターや服装のせいで、そういう安っぽいムードが醸成されてしまうのではないか。
絵のかかった医院のインテリアなど画面は面白いが、どうもお話に足を引っ張られる。
オリジナル・ラブを思い出すタイトル。発表は1993年だとか。もう30年も前なのか。
この記事へのコメント