映画評「グロリア 永遠の青春」
☆☆★(5点/10点満点中)
2018年アメリカ=チリ合作映画 監督セバスティアン・レリオ
ネタバレあり
8年前に観たゼバスティアン・レリオ監督のチリ映画「グロリアの青春」(2013年)を、同監督をアメリカに招聘してセルフ・リメイクさせた作品。
前述作の我が評を読み返すと、梗概はほぼ同じ。ローラ・ブラニガンのヒット曲「グロリア」の歌詞を部分的になぞっている内容である。
離婚して十数年、既に子供のいる息子に続いて娘カレン・ピトリウスがスウェーデン青年と結婚することになり、完全に子育てを終え自由になった形の保険会社勤務の中年女性ジュリアン・ムーア(役名グロリア)が、恐らく半分くらいは交際男性物色を兼ねて出かけるダンス・クラブで同世代の離婚男性ジョン・タートゥーロと親しくなる。
理想的とも思えた彼は、しかし、働いていない妻と娘二人との相互依存状態から抜け出せず煮え切れないので、二人は離合を繰り返す。遂に堪忍袋の緒を切った彼女は、彼から貰ったおもちゃの猟銃で彼を撃つと、また娘の結婚パーティーに出かけて思い切り踊るのである。
「グロリア」だけでなく、1970~80年代つまりヒロインの青春期に流行ったヒット曲が色々とかかる。定番のアース・ウィンド&ファイアー「セプテンバー」、ギルバート・オサリヴァン「アローン・アゲイン」等々。
驚いたことに、僕がこのところコンボで聴いているポール・マッカートニーのサントラLP「ヤァ!ブロード・ストリート」からシングルカットされたバラード「ノー・モア・ロンリー・ナイト」がかかった。良い曲ながらポールの作品としてはそうかかるほうではないので、僕の念力は凄いと思ったです(笑)。厳密には、この映画の念力に当方が引き寄せられた、と言うべきか。
戯言はともかく、離合を繰り返すといっても我が邦の「浮雲」(1955年)のような詩情がない為に面倒臭いだけ。相手に翻弄された形のヒロインが懲りずにさらに青春を謳歌し続けようとしている幕切れが、ラテン女性のしたたかさか?と多少なりとも納得できるところがあったオリジナルに対し、知的な印象の強いジュリアン・ムーアでは理に落ちすぎる。オリジナル以上に星が伸びない所以である。
「アローン・アゲイン」と言い、「ノー・モア・ロンリー・ナイト」と言い、ヒロインの心情を反映しているわけですな。余り寂しそうではなかったけれど。因みに「アローン・アゲイン」の映画における対訳は、父の死をめぐるところが僕の解釈と違う。65歳で母親が死んで、母親を苦しめた父親の死を語り手が理解できない、 とするのが映画の対訳。 しかるに、 my mother の後の God rest her soul は挿入句と思われるのでそれを除いて、65歳の(時)母は夫の死の意味を理解できずに押し黙り、挙句死んでしまった(母親が65歳の時に父親が亡くなり、彼女が死んだ年齢は不明)、と僕は解釈するのだ。英語に詳しい方、ご意見を。
2018年アメリカ=チリ合作映画 監督セバスティアン・レリオ
ネタバレあり
8年前に観たゼバスティアン・レリオ監督のチリ映画「グロリアの青春」(2013年)を、同監督をアメリカに招聘してセルフ・リメイクさせた作品。
前述作の我が評を読み返すと、梗概はほぼ同じ。ローラ・ブラニガンのヒット曲「グロリア」の歌詞を部分的になぞっている内容である。
離婚して十数年、既に子供のいる息子に続いて娘カレン・ピトリウスがスウェーデン青年と結婚することになり、完全に子育てを終え自由になった形の保険会社勤務の中年女性ジュリアン・ムーア(役名グロリア)が、恐らく半分くらいは交際男性物色を兼ねて出かけるダンス・クラブで同世代の離婚男性ジョン・タートゥーロと親しくなる。
理想的とも思えた彼は、しかし、働いていない妻と娘二人との相互依存状態から抜け出せず煮え切れないので、二人は離合を繰り返す。遂に堪忍袋の緒を切った彼女は、彼から貰ったおもちゃの猟銃で彼を撃つと、また娘の結婚パーティーに出かけて思い切り踊るのである。
「グロリア」だけでなく、1970~80年代つまりヒロインの青春期に流行ったヒット曲が色々とかかる。定番のアース・ウィンド&ファイアー「セプテンバー」、ギルバート・オサリヴァン「アローン・アゲイン」等々。
驚いたことに、僕がこのところコンボで聴いているポール・マッカートニーのサントラLP「ヤァ!ブロード・ストリート」からシングルカットされたバラード「ノー・モア・ロンリー・ナイト」がかかった。良い曲ながらポールの作品としてはそうかかるほうではないので、僕の念力は凄いと思ったです(笑)。厳密には、この映画の念力に当方が引き寄せられた、と言うべきか。
戯言はともかく、離合を繰り返すといっても我が邦の「浮雲」(1955年)のような詩情がない為に面倒臭いだけ。相手に翻弄された形のヒロインが懲りずにさらに青春を謳歌し続けようとしている幕切れが、ラテン女性のしたたかさか?と多少なりとも納得できるところがあったオリジナルに対し、知的な印象の強いジュリアン・ムーアでは理に落ちすぎる。オリジナル以上に星が伸びない所以である。
「アローン・アゲイン」と言い、「ノー・モア・ロンリー・ナイト」と言い、ヒロインの心情を反映しているわけですな。余り寂しそうではなかったけれど。因みに「アローン・アゲイン」の映画における対訳は、父の死をめぐるところが僕の解釈と違う。65歳で母親が死んで、母親を苦しめた父親の死を語り手が理解できない、 とするのが映画の対訳。 しかるに、 my mother の後の God rest her soul は挿入句と思われるのでそれを除いて、65歳の(時)母は夫の死の意味を理解できずに押し黙り、挙句死んでしまった(母親が65歳の時に父親が亡くなり、彼女が死んだ年齢は不明)、と僕は解釈するのだ。英語に詳しい方、ご意見を。
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