一年遅れのベスト10~2022年私的ベスト10発表~
群馬の山奥に住み、持病もあり、WOWOWを中心にした映画鑑賞生活ですので、僕の2022年私的ベスト10は皆様の2021年にほぼ相当する計算でございます。
スタンスとして初鑑賞なら新旧問わず何でも入れることにしています。昨年度はパワーのある作品が少なかったものの、優れたオールド・ムービーも時代を超えて訴求力があるかという点において疑問が多い作品が目立ちましたので、星の数はともかく、新作がほぼ占めることになりました。新作秀作群の中でドキュメンタリーの健闘が目立ちましたが、ドキュメンタリーとドラマ映画を並べさせるのは無理があると思い、一部を除いて検討しませんでした。
2022年鑑賞本数は一昨年より5本減って351本、再鑑賞は43本(一昨年は31本)でした。従って、本稿対象となる初鑑賞作品は308本で、一昨年より17本減りました。
プライムビデオでの古い映画鑑賞により減少幅は小さいですが、プライムビデオの古い映画も未見の作品が少なくなり、マイナスに転じました。再鑑賞という観点で重要なのがNHKーBSですが、近年は既に録画してあるものばかりで魅力薄。WOWOWは昨年後半古い映画にちょっと頑張り、初鑑賞の作品も少しありましたが、一年を通すとどうにも寂しい。
作品傾向としては、最近調子が良かった英米映画が今年もやや振るわず、それ以外の国々からの映画が多めになりましたが、昨年は久しぶりに全体的に良い作品が少なかったですね。
そんな状況下で日本映画が複数入っても良い状態にも拘らず結局一本止まり。「君は永遠にそいつらより若い」「子供はわかってあげない」などアングルをつけた青春映画に幾つか良いものがありましたが、少し力不足の感あり。
それでは、ラインアップに参りましょう。
1位・・・ザ・ビートルズ/Get Back
映画ファンというより長年のビートルズ・ファンとしての思いが爆発する作品なので本来は別格にしたほうが良いと思いつつ抗しきれないものあり。ビートルズ自体は若い人にも下手な現在のアーティストより人気がある一方、タイム・パフォーマンスと言ってまともに音楽や映画と接する気もない時代、この8時間と付き合ってくれる若者がどれほどいましょうか。複雑な思いがするオールド・ファンであります。「ジャニス・ジョプリン」という作品はステージ(芝居)を記録した一種のドキュメンタリーでもあるわけですが、これも素晴らしかった。しかし、その感動は芝居によるところが多いので、選外に。同様の作りの「アメリカン・ユートピア」も面白かった。
2位・・・ぶあいそうな手紙
昨年の2位以下は団栗の背比べで、順番に大した意味がない感じですね。これはブラジル映画で、老人と若い娘の交流を描いて最後にはほのぼのとした気持ちで終わる。その点を買ってこの位置。情は人の為ならず、を地で行くお話です。
3位・・・THE BATMAN-ザ・バットマン-
前シリーズが秀作だっただけにこんな短いスパンで作る意味はないだろうと疑問に思いつつ観てみましたが、スーパーヒーロー映画よりハードボイルド映画の作りだったのに嬉しい驚きを味わいました。為に脚本賞も進呈することに。
4位・・・白い牛のバラッド
「モロッコ、彼女たちの朝」同様、イスラム女性の難しい立場を描く作品。そこに心理サスペンス的な要素を投入したところが良かった。イラン映画人はドラマにサスペンスを持ち込むのが実に上手い。両義的な幕切れについては、僕は何もなかったと考えています。
5位・・・すばらしき世界
「ドライブ・マイ・カー」が話題になった濱口竜介監督の5時間18分に及ぶ地味な大作「ハッピーアワー」も注目すべき作品と思いましたが、社会派の要素を前面に出しつつ人間の中身に下降するスタンスが充実し、見応えある本作を唯一の邦画に選出。その代わり即興演出に新味を与えた濱口竜介監督には上記二本を以って監督賞を。
6位・・・モーリタニアン 黒塗りの記録
こちらはイギリス=アメリカ合作の正統派社会派映画。モーリタニアという国を知っている人は少ないでしょうが、アフリカ北部故にイスラム教徒の多い国で、その為にその住民たる青年が9.11のリクルーターとしてグアンタナモ収容所に収監された悲劇です。アメリカには色々矛盾する問題があると同時に、日本には見当たらない本当の民主主義も屹立している。アメリカは本当に面白い国家です。
7位・・・ゴヤの名画と優しい泥棒
続くこちらも実話ベースの作品ですが、英国らしいのんびりした作りが実に良いです。日本のTV人や韓国の大衆映画人はユーモアとギャグの違いが解っていないようなので、この作品でユーモアについて勉強して下さい。
8位・・・アイダよ、何処へ?
ボスニア=ヘルツェゴヴィナ戦争に取材した悲劇で、夫と息子を救う為になりふり構わず動き回る通訳女性の悲痛が主題。継続中のウクライナ戦争と重なるところも多く、胸を打たれる。
9位・・・ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー
映画作りの縁の下の力持ちを描くドキュメンタリー映画ながら、面白いのは共に映画人である夫婦の長い期間に渡る愛情を描くドラマ的な要素が抜群に感動的なところ。こういう映画は殆ど観たことがないなあ。
10位・・・獅子座
ヌーヴェルヴァーグ初期の秀作。これは旧作であると同時に、日本には長いこと紹介されなかった為に定評ある作品という扱いも出来ないので、他の旧作とは違う扱いに。ぐうたらを描くフランス映画の伝統の感じられて面白かったですね。
次点・・・ブルー・バイユー
ワースト・・・嘘喰い
「十二単衣を着た悪魔」も候補でしたよ。しかし、僕が並外れて言葉にうるさい人間だから余計に厳しくなる面があると思ってこれは外し、ギミックを使う日本映画は嘘のつき方が実に下手であるということを例証する作品としてこちらをアップ。
****テキトーに選んだ各部門賞****
監督賞・・・濱口竜介~「ドライブ・マイ・カー」「ハッピーアワー」
男優賞・・・アンソニー・ホプキンズ~「ファーザー」
女優賞・・・田中幸恵、菊池葉月、三原麻衣子、川村りら~「ハッピーアワー」
脚本賞・・・マット・リーヴズ、ピーター・クレイグ~「THE BATMAN-ザ・バットマン-」
撮影賞・・・ジェアリン・ブラシュケ~「ライトハウス」
音楽賞・・・ハンス・ジマー~「DUNE/デューン 砂の惑星」
特別賞・・・なし
スタンスとして初鑑賞なら新旧問わず何でも入れることにしています。昨年度はパワーのある作品が少なかったものの、優れたオールド・ムービーも時代を超えて訴求力があるかという点において疑問が多い作品が目立ちましたので、星の数はともかく、新作がほぼ占めることになりました。新作秀作群の中でドキュメンタリーの健闘が目立ちましたが、ドキュメンタリーとドラマ映画を並べさせるのは無理があると思い、一部を除いて検討しませんでした。
2022年鑑賞本数は一昨年より5本減って351本、再鑑賞は43本(一昨年は31本)でした。従って、本稿対象となる初鑑賞作品は308本で、一昨年より17本減りました。
プライムビデオでの古い映画鑑賞により減少幅は小さいですが、プライムビデオの古い映画も未見の作品が少なくなり、マイナスに転じました。再鑑賞という観点で重要なのがNHKーBSですが、近年は既に録画してあるものばかりで魅力薄。WOWOWは昨年後半古い映画にちょっと頑張り、初鑑賞の作品も少しありましたが、一年を通すとどうにも寂しい。
作品傾向としては、最近調子が良かった英米映画が今年もやや振るわず、それ以外の国々からの映画が多めになりましたが、昨年は久しぶりに全体的に良い作品が少なかったですね。
そんな状況下で日本映画が複数入っても良い状態にも拘らず結局一本止まり。「君は永遠にそいつらより若い」「子供はわかってあげない」などアングルをつけた青春映画に幾つか良いものがありましたが、少し力不足の感あり。
それでは、ラインアップに参りましょう。
1位・・・ザ・ビートルズ/Get Back
映画ファンというより長年のビートルズ・ファンとしての思いが爆発する作品なので本来は別格にしたほうが良いと思いつつ抗しきれないものあり。ビートルズ自体は若い人にも下手な現在のアーティストより人気がある一方、タイム・パフォーマンスと言ってまともに音楽や映画と接する気もない時代、この8時間と付き合ってくれる若者がどれほどいましょうか。複雑な思いがするオールド・ファンであります。「ジャニス・ジョプリン」という作品はステージ(芝居)を記録した一種のドキュメンタリーでもあるわけですが、これも素晴らしかった。しかし、その感動は芝居によるところが多いので、選外に。同様の作りの「アメリカン・ユートピア」も面白かった。
2位・・・ぶあいそうな手紙
昨年の2位以下は団栗の背比べで、順番に大した意味がない感じですね。これはブラジル映画で、老人と若い娘の交流を描いて最後にはほのぼのとした気持ちで終わる。その点を買ってこの位置。情は人の為ならず、を地で行くお話です。
3位・・・THE BATMAN-ザ・バットマン-
前シリーズが秀作だっただけにこんな短いスパンで作る意味はないだろうと疑問に思いつつ観てみましたが、スーパーヒーロー映画よりハードボイルド映画の作りだったのに嬉しい驚きを味わいました。為に脚本賞も進呈することに。
4位・・・白い牛のバラッド
「モロッコ、彼女たちの朝」同様、イスラム女性の難しい立場を描く作品。そこに心理サスペンス的な要素を投入したところが良かった。イラン映画人はドラマにサスペンスを持ち込むのが実に上手い。両義的な幕切れについては、僕は何もなかったと考えています。
5位・・・すばらしき世界
「ドライブ・マイ・カー」が話題になった濱口竜介監督の5時間18分に及ぶ地味な大作「ハッピーアワー」も注目すべき作品と思いましたが、社会派の要素を前面に出しつつ人間の中身に下降するスタンスが充実し、見応えある本作を唯一の邦画に選出。その代わり即興演出に新味を与えた濱口竜介監督には上記二本を以って監督賞を。
6位・・・モーリタニアン 黒塗りの記録
こちらはイギリス=アメリカ合作の正統派社会派映画。モーリタニアという国を知っている人は少ないでしょうが、アフリカ北部故にイスラム教徒の多い国で、その為にその住民たる青年が9.11のリクルーターとしてグアンタナモ収容所に収監された悲劇です。アメリカには色々矛盾する問題があると同時に、日本には見当たらない本当の民主主義も屹立している。アメリカは本当に面白い国家です。
7位・・・ゴヤの名画と優しい泥棒
続くこちらも実話ベースの作品ですが、英国らしいのんびりした作りが実に良いです。日本のTV人や韓国の大衆映画人はユーモアとギャグの違いが解っていないようなので、この作品でユーモアについて勉強して下さい。
8位・・・アイダよ、何処へ?
ボスニア=ヘルツェゴヴィナ戦争に取材した悲劇で、夫と息子を救う為になりふり構わず動き回る通訳女性の悲痛が主題。継続中のウクライナ戦争と重なるところも多く、胸を打たれる。
9位・・・ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー
映画作りの縁の下の力持ちを描くドキュメンタリー映画ながら、面白いのは共に映画人である夫婦の長い期間に渡る愛情を描くドラマ的な要素が抜群に感動的なところ。こういう映画は殆ど観たことがないなあ。
10位・・・獅子座
ヌーヴェルヴァーグ初期の秀作。これは旧作であると同時に、日本には長いこと紹介されなかった為に定評ある作品という扱いも出来ないので、他の旧作とは違う扱いに。ぐうたらを描くフランス映画の伝統の感じられて面白かったですね。
次点・・・ブルー・バイユー
ワースト・・・嘘喰い
「十二単衣を着た悪魔」も候補でしたよ。しかし、僕が並外れて言葉にうるさい人間だから余計に厳しくなる面があると思ってこれは外し、ギミックを使う日本映画は嘘のつき方が実に下手であるということを例証する作品としてこちらをアップ。
****テキトーに選んだ各部門賞****
監督賞・・・濱口竜介~「ドライブ・マイ・カー」「ハッピーアワー」
男優賞・・・アンソニー・ホプキンズ~「ファーザー」
女優賞・・・田中幸恵、菊池葉月、三原麻衣子、川村りら~「ハッピーアワー」
脚本賞・・・マット・リーヴズ、ピーター・クレイグ~「THE BATMAN-ザ・バットマン-」
撮影賞・・・ジェアリン・ブラシュケ~「ライトハウス」
音楽賞・・・ハンス・ジマー~「DUNE/デューン 砂の惑星」
特別賞・・・なし
この記事へのコメント
ビートルズ好きですが、8時間!? どうかなと思っちゃいますね。
3位のTHE BATMANしか見ていません…。
WOWOWは、たまに映画館で観たかった新作をやるのがいいくらいで、鞍替えしようかなとも思っています(去年もそう思いつつそのまま)。
今年は映画館通いが増えるかどうか…。
いやあ、今年のベストは、コメントなしで終わるかと思いましたよ。
その場合は、ぼーさんのところへ行脚をしようかと思っていた矢先に、以心伝心でした^^v
>ビートルズ好きですが、8時間!? どうかなと思っちゃいますね。
いっぺんには無理ですが、ブルーレイごとに三日に分けて観れば、何とかなりますよ。それよりディズニーが絡んでいるブルーレイが高すぎます。輸入盤も現状ではさほど安くないので、それならと日本盤にしましたが、日本盤にしたメリットはなかったデス。
>3位のTHE BATMANしか見ていません…。
こわごわ伺いましたが、悪くない評価で安心^^
僕はハードボイルド・スタイルにしたところが買いでした。アート系が多いこともあり、ジャンル映画も入れたかったので、上位にしました。
>WOWOWは、たまに映画館で観たかった新作をやるのがいいくらいで、鞍替えしようかなと
僕も、昔観ただけの古い映画が多く見られるところがあれば、そちらにしたいと思いつつ、出来ていません。
まあアート系にはそこそこ良い映画もあるので。
>今年は映画館通いが増えるかどうか…。
映画館は大分前から止めにしました。車を使わないといけないけれど、駐車のことを色々考えるのも面倒臭い田舎ですし。