映画評「99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE」

☆☆★(5点/10点満点中)
2021年日本映画 監督・木村ひろし
ネタバレあり

TVドラマの映画版はまず観ないと言ってきたが、近年はそれなりに観ている。まず一般映画がつまらず、同じつまらないならTVの映画版でも良かろうということもある。本作に限って言えば、ミステリーらしいので積極的に観ることにした。

TVにおいては、気軽に見られるという意味で、シリアスな内容にコミカルな要素を加えるのは悪いことではないのだろうが、映画では事情が大分違うし、笑いも本作が試みているギャグではなくユーモアに留めるべきである。これがこの映画のほぼ全ての感想なのですが。

題名の99.9というのは刑事事件の有罪率であるが、これには裏がある。検察が有罪になる見込みの薄いものは事件化しないということが容易に想像される。新聞の社会面を読むと、無罪放免になる小事件が結構多いのである。

法律事務所の刑事部門で働く弁護士・松本潤が、徹底した事実主義に則り、15年前に起き、犯人とされる人物(渋川清彦)が既に病死している“天華村毒物ワイン事件”の再審を実現すべく、新米のお嬢さん弁護士・杉咲花らと力を合わせていく。
 というお話で、一番面白いのは、事件の再現模様である。ここでも嫌がる村人を無理矢理協力させて当日の様子を再現、ワイン樽の毒と被害者から出た毒とが一致するか、村人が集まっている間に毒を入れることができた人物は誰かという点を精査していく。

冤罪による悲劇は本人だけに留まらず、家族にも及ぶ。
 この法律事務所と因縁のあるライバル弁護士・西島秀俊が引き取って育てている、今は天才ピアニストと騒がれている死刑囚の娘も例の如くSNSの被害者となる。松本や新所長となった香川照之らが再審実現に夢中になるのは、事実上その少女を救うためである。

ドラマ的にはその辺の心の綾が肝となっているが、再度言うが、いかんせんギャグの多用が良くない。ユーモアによって明朗な場面とシリアスな場面が共存するのは構わないが、シリアスさを喰いかねないギャグはダメである。その代わりここまで本格ミステリー的設定の謎解きを映画で見るのは久しぶりで、その点を買って水準の星を進呈することにします。

時々ジャンプ・カットを交えて妙に素早くショットを切り替えるところがある。スピード感があるというのはこういうことだが、だからと言って実際にお話の展開がスピーディーとは限らない。これを勘違いしている人が多い。

和歌山カレー事件がネタですな。スピード感と言えば、昨日の岸田首相も使っていました。これを言葉の本来の字義通りに解釈すれば、実際に速くなくてもそう見えれば良いと言うことだ。

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