映画評「濡れた欲情 ひらけ!チューリップ」

☆☆(4点/10点満点中)
1975年日本映画 監督・神代辰巳
ネタバレあり

1972年の「一条さゆり 濡れた欲情」以降、神代辰巳監督は「濡れた欲情」という措辞を用いたタイトルの作品を幾つか作っているが、内容において相互に直接的な関係はない。本作の場合は、谷ナオミがさゆりというストリッパー役で出て来るのが、くすぐったくなる程度である。

25歳の童貞パチンコ釘師・石井まさみが、悪友のパチプロ安達清康から、プロの女性たちを紹介してもらうが、上手く行かない。男性機能を失った師匠の情婦谷ナオミと何とか事を成す。
 そんなある日それまで存在も知らなかった実の父親・浜村純が亡くなり、莫大な遺産を石井に残すが、その条件は次の誕生日までに結婚することである。安達も男気を出して自分の知っている女性たちを次々紹介するが、悪友の恋人・芹明香以外には眼中になく、逃げ回る。
 しかるに、彼女が修行の旅に出る安達と旅立った為、結局パチンコ店の女社長・奈良あけみと結ばれ、めでたしめでたし。

1975年にヒットした間寛平のコミック・ソング「ひらけ!チューリップ」をフィーチャーしたロマン・ポルノのコメディーで、後半の展開はバスター・キートンの「セブン・チャンス」(1925年)からの拝借である。73年にリバイバル公開された時に神代監督は観たのだろう。

目立つのはコントラストと対位法的な見せ方。対位法的な見せ方では、主人公が芹明香を待つ姿と、屋台を引く彼女とスケ番の間に挟まれて安達がゴタゴタする様子とが、面白く映し出される。こういうのが映画的には面白い。コントラストでは、前半女性にあくせくする主人公が後半逃げ回るという転調ぶりがいける。

お話の面白味は偏に「セブン・チャンス」の借用による部分に尽き、アナーキーな気分はともかくとして、他はな~んということもない。

登場人物が変な戯れ歌を無気力に歌うのは、一般映画「青春の蹉跌」(1974年)にも見られたように、神代監督の趣味でござる。

自分の意志でパチンコ店に入ったことはない。友人の車で移動した時に彼がパチンコ店に入ったので、時間つぶしの為に仕方なく一回だけやったことがある。ビギナーズラックなどなく、すぐに終わった。

この記事へのコメント

2023年02月04日 15:38
>間寛平のコミック・ソング「ひらけ!チューリップ」
ああ、はやったのを覚えてますよ。あのころは街中にポルノ映画館の立て看板が立ってて、三本立てくらいだったんですかね、わりと早いサイクルで変わってたような。今からすると信じられない光景ですが、小学生とが道で見ても、なんかエッチなかんじなのはわかるけど自分らには関係ないわくらいで、とくによく見てなかったので、今もポスターとか雑誌とかそんなに神経質になることないのでは。

にっかつロマンポルノでしたか。あとになって、日活系列の映画館だったんなら、あれ昔は吉永小百合の青春映画上映してた劇場やったんかなあ、と思ったりしました。でも、もうあれも県内にひとつくらいしか残ってないようですね。
オカピー
2023年02月04日 21:59
nesskoさん、こんにちは。

>にっかつロマンポルノでしたか。
>日活系列の映画館だったんなら、あれ昔は吉永小百合の青春映画上映してた劇場やったんかなあ、と思ったりしました。

1960年代後半、TVの普及の為に映画が斜陽化した為、各社エログロに走りだしましたが、それでも俳優や監督のフリー化(五社協定撤廃)がなければ、ロマン・ポルノは発生しなかったかもしれませんね。時代の潮流で仕方ないですけど。