映画評「ハウス・オブ・グッチ」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2021年アメリカ=カナダ合作映画 監督リドリー・スコット
ネタバレあり
リドリー・スコットがこの作品を作った時は84歳くらいであるが、まだまだ元気である。
皮革メイカーとしては老舗のグッチが洋服ブランドとして現在ほどの地位を得ていなかった頃の1970年代後半から90年代前半が舞台。
創業者の孫で法学部に在籍するマウリツィオ(アダム・ドライヴァー)が、運送業者の娘パトリツィア・レッジアーニ(レディ・ガガ)と昵懇となり、父親ロドルフォ(ジェレミー・アイアンズ)の反対を押し切って、勘当される形で結婚する。
やがてマウリツィオは父親が死んで財産を相続するが、膨大な相続税がかかるのを知ったパトリツィアは、ニューヨークで洋装店を開いている伯父アルド(アル・パチーノ)とその不肖の息子パオロ(ジャレッド・レトー)から株式を奪い取る為の算段を彼に示唆する。
かくして経営権を得たマウリツィオは更なる発展の為に外国資本家と手を組む一方で、妻がお金の為に自分と結婚したと気付き、昔の恋人パオラ(カミーユ・コッタン)の許に走る。
どうしても寄りを戻そうとしない彼に瞋恚を抱いた彼女は、占い師(サルマ・ハエック)の知り合いたるマフィアに夫の殺害を依頼する。
グッチの立場から言えば、一人の欲深い女性の為に企業としてのグッチにグッチの血を引く者がいなくなるという悲劇で、19世紀にバルザックが書いた人間喜劇のよう。
翻って、ヒロインの立場から言えば、余りに欲をかいた為に夫の愛情を失い、結局長い懲役刑という神罰を受けるわけである。
しかし、企業としてのグッチとしては寧ろ怪我の功名で、マウリツィオがファッション・デザイナーに新進のトム・フォードを起用してから大いに伸張し、現在に至るのである。
正攻法の割にダイナミックな絵を見せるスコット作品としては画面の面白味が意外に薄く、寧ろファッション業界版「ゴッドファーザー」とでも言いたくなるようなバルザック的人間喜劇の紆余曲折を楽しむのが妥当というところだろう。
ヒロインを演じたレディ・ガガは調べたところやはりイタリア系で、それを強調したメイクで強いイタリア女性を好演。歌手の余技という感じはしない、充実ぶりと言うべし。
使われる言語は、イタリアにおいてはなんちゃってイタリア語(イタリア語訛りの英語=イタリア語のつもり)と、ニューヨークにおいては本当のイタリア語訛りの英語。観客にはその区別が全くつかない。
僕は、なんちゃってXX語については概して好意的に捉えている。本作の場合は、舞台としてイタリアだけでなくアメリカが絡んでいるので、少々微妙であるが、戦争映画のように混乱を生じないため大きな問題はない。
使われる既成の背景音楽には、1980年代のヒット曲即ちドナ・サマー3~4曲、ブロンディの「ハート・オブ・グラス」Heart of Glass などいかにもファッション業界にふさわしいダンス系が多い。選曲に関しては必ずしも僕好みではないが、楽しめる。
「ゴッドファーザー」を思い出すのは、アル・パチーノ出演のせいでもある。
2021年アメリカ=カナダ合作映画 監督リドリー・スコット
ネタバレあり
リドリー・スコットがこの作品を作った時は84歳くらいであるが、まだまだ元気である。
皮革メイカーとしては老舗のグッチが洋服ブランドとして現在ほどの地位を得ていなかった頃の1970年代後半から90年代前半が舞台。
創業者の孫で法学部に在籍するマウリツィオ(アダム・ドライヴァー)が、運送業者の娘パトリツィア・レッジアーニ(レディ・ガガ)と昵懇となり、父親ロドルフォ(ジェレミー・アイアンズ)の反対を押し切って、勘当される形で結婚する。
やがてマウリツィオは父親が死んで財産を相続するが、膨大な相続税がかかるのを知ったパトリツィアは、ニューヨークで洋装店を開いている伯父アルド(アル・パチーノ)とその不肖の息子パオロ(ジャレッド・レトー)から株式を奪い取る為の算段を彼に示唆する。
かくして経営権を得たマウリツィオは更なる発展の為に外国資本家と手を組む一方で、妻がお金の為に自分と結婚したと気付き、昔の恋人パオラ(カミーユ・コッタン)の許に走る。
どうしても寄りを戻そうとしない彼に瞋恚を抱いた彼女は、占い師(サルマ・ハエック)の知り合いたるマフィアに夫の殺害を依頼する。
グッチの立場から言えば、一人の欲深い女性の為に企業としてのグッチにグッチの血を引く者がいなくなるという悲劇で、19世紀にバルザックが書いた人間喜劇のよう。
翻って、ヒロインの立場から言えば、余りに欲をかいた為に夫の愛情を失い、結局長い懲役刑という神罰を受けるわけである。
しかし、企業としてのグッチとしては寧ろ怪我の功名で、マウリツィオがファッション・デザイナーに新進のトム・フォードを起用してから大いに伸張し、現在に至るのである。
正攻法の割にダイナミックな絵を見せるスコット作品としては画面の面白味が意外に薄く、寧ろファッション業界版「ゴッドファーザー」とでも言いたくなるようなバルザック的人間喜劇の紆余曲折を楽しむのが妥当というところだろう。
ヒロインを演じたレディ・ガガは調べたところやはりイタリア系で、それを強調したメイクで強いイタリア女性を好演。歌手の余技という感じはしない、充実ぶりと言うべし。
使われる言語は、イタリアにおいてはなんちゃってイタリア語(イタリア語訛りの英語=イタリア語のつもり)と、ニューヨークにおいては本当のイタリア語訛りの英語。観客にはその区別が全くつかない。
僕は、なんちゃってXX語については概して好意的に捉えている。本作の場合は、舞台としてイタリアだけでなくアメリカが絡んでいるので、少々微妙であるが、戦争映画のように混乱を生じないため大きな問題はない。
使われる既成の背景音楽には、1980年代のヒット曲即ちドナ・サマー3~4曲、ブロンディの「ハート・オブ・グラス」Heart of Glass などいかにもファッション業界にふさわしいダンス系が多い。選曲に関しては必ずしも僕好みではないが、楽しめる。
「ゴッドファーザー」を思い出すのは、アル・パチーノ出演のせいでもある。
この記事へのコメント
本作のなかで、いちばんアゲアゲ上がったっす!
ボーさんも僕と同じ世代ですかなあ。
ドナ・サマーもブロンディもベストを持っているデス。
ブロンディは「コール・ミー」がご贔屓。この曲を主題歌にしたのは、「アメリカン・ジゴロ」でしたかね。もう40年以上も経つ(怖ろし!)