映画評「クリエイション・ストーリーズ~世界の音楽シーンを塗り替えた男~」

☆☆★(5点/10点満点中)
2021年イギリス=アメリカ合作映画 監督ニック・モラン
ネタバレあり

1980年代後半以降のロックについては余り詳しくなく、ブリット・ポップなる言葉もレディオヘッド、ストーン・ローゼズなどをCD化する段で近年知ったばかりである。ビートルズ贔屓の僕には、彼らの直系子孫的なブリット・ロックは馴染やすい。

WOWOWのパンフレットを斜め読みしてブリット・ポップという単語が目に入り、最近面白いものによく当たる音楽ドキュメンタリーと思って観たところ、ポスト・バンク時代の1980年代半ばに創設されたインディ・レーベルの創始者アラン・マッギーの伝記映画であった。

グラスゴーの父権主義的な家庭で育ったアラン(少年時代レオ・フラナガン、青年時代ユエン・ブレムナー)は、パンクに熱中するものの、因循な父親(リチャード・ジョブスン)の理解を得られず、音楽をたしなむ国鉄職員になるが、結局家を出て音楽に身を投じる。
 ライブ活動中に現れた或るマネージャーに影響され、自らマネージャーとしてジーザス&メリー・チェーンというバンドをバックアップ、彼らのシングル・レコードを作る。これがクリエイション・レーベルの最初のレコードである。
 数年後、電車に乗り遅れた為立ち寄った店での演奏を聞いて立ちどころに気に入ったオアシスと契約を交わし、ここにクリエイション・レコードの最盛期を築くと共にブリット・ポップというジャンルを確立させていく。と言っても、既に大手ソニー傘下に入っていて、やがて所属したアーティストを次々と売り渡すのだが。
 ここまでが音楽的経歴で、後半はほぼ音楽から離れて、若い頃から傾倒していた様々な麻薬との関連、大好きだった母親の死、労働党支持の活動などが主に綴られる。

ビートルズのマネージャー、ブライアン・エプスタインならともかく、アラン・マッギーなる人物にまるで興味が湧かないので、音楽がメイン・テーマでなくなる後半は全く面白くない。
 欧米の音楽業界に付き物の麻薬が良くないとは言わないが、汚らしい感じを伴うのが個人的に苦手ということもあってげんなりさせられ、それに加えて作り方が混沌としている為にどうも感心できない。

配役では、線の細いレオ・フラナガンが突然うさんくさい感じのユエン・ブレムナーに代わるところで相当違和感を覚えたとも言っておきましょう。

映画に関してはもはや掘る対象が殆どないが、音楽はまだまだ。海外アーティストのアルバムは新譜を含めて殆ど全て YouTube できちんとしたものが聴け、 無尽蔵という感じすらある。日本のアーティストがMV以外殆ど利用できないのはサブスクリプション絡み? よく解らん。

この記事へのコメント