映画評「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督<自己検閲>版」
☆☆★(5点/10点満点中)
2021年ルーマニア=ルクセンブルク=チェコ=クロアチア=スイス=イギリス合作映画 監督ラドゥ・ジューデ
ネタバレあり
色々な国の資本が入っているが、実質的にルーマニア映画。ルーマニアの映画はそれほど観た記憶がない。邦題からも想像されるように、ブラック・コメディーである。
最初の3分でプライベートのポルノ動画が自主検閲版で紹介された後、一人の女性カーチャ・パスカリューが歩く姿を延々と連ね、これが36分まで続く。その後突然映像版<悪魔の辞典>であるが如く様々な単語の警句的な再定義が試みられる。これが62分まで続き、第一部で歩いていた女性が小学校の教師で、最初のポルノ動画の女性であることが判って来る。その動画がネットへの流出で教える児童に見られた結果、彼女は、保護者たちによって魔女裁判のように裁かれることになっているのだ。
これら三部は一見バラバラだが、最初彼女が「5時から7時までのクレオ」のヒロインのように苦悩しながら歩く女教師が色々な町民たちの不寛容な言動を見たり、当事者になったりし、これがやがて第3部の魔女裁判による大半の保護者の不寛容で偽善的な言動とダブって来る構図。通奏低音は人々の不寛容や偽善である。
かかる不寛容を生み出し若しくは後押しするのは、コロナ禍により生み出された人々の苛立ちであろうか。映画でコロナ禍が扱われること自体が少ないのに、ここまでマスクについて言及する映画があるとは。マスクが苛立ちの象徴として使われている感じである。ルーマニア人の本来の国民性を知らないので何とも言えないが、町民の不寛容は多くコロナ禍が生んだものではないか、と想像される次第。
中盤の警句的再定義においては、世の中の不条理や理不尽や偽善が次々と点出される。国家や権力に絡んでくる単語の再定義に面白いものが多い。この諧謔的パートの延長に魔女裁判の偽善的議論があるということであろう。
実際には女性教師のほうが論理的に矛盾なく、倫理的にも正しく感じられるくらいだが、その正当性は表面的な道徳観に縛られた偽善的な保護者の前には全く通用しないのである。コロナ禍により露呈した人々の偽善を見せるのが主眼であろう。
第一部を面白く(ここを面白く見るにはお話ではなく画面に興味を持つ必要がある)感じられれば、全体も楽しめるように思うが、余りにも猥雑すぎる作り方が僕には全く向いていない。つまらなくはないですがね。
独裁政権が崩壊して30年以上経って、ルーマニアもこんな映画が作られるようになった。お隣のハンガリーが結構独裁化しているのが気になる。独裁がいつも悪いわけではないですがね。
2021年ルーマニア=ルクセンブルク=チェコ=クロアチア=スイス=イギリス合作映画 監督ラドゥ・ジューデ
ネタバレあり
色々な国の資本が入っているが、実質的にルーマニア映画。ルーマニアの映画はそれほど観た記憶がない。邦題からも想像されるように、ブラック・コメディーである。
最初の3分でプライベートのポルノ動画が自主検閲版で紹介された後、一人の女性カーチャ・パスカリューが歩く姿を延々と連ね、これが36分まで続く。その後突然映像版<悪魔の辞典>であるが如く様々な単語の警句的な再定義が試みられる。これが62分まで続き、第一部で歩いていた女性が小学校の教師で、最初のポルノ動画の女性であることが判って来る。その動画がネットへの流出で教える児童に見られた結果、彼女は、保護者たちによって魔女裁判のように裁かれることになっているのだ。
これら三部は一見バラバラだが、最初彼女が「5時から7時までのクレオ」のヒロインのように苦悩しながら歩く女教師が色々な町民たちの不寛容な言動を見たり、当事者になったりし、これがやがて第3部の魔女裁判による大半の保護者の不寛容で偽善的な言動とダブって来る構図。通奏低音は人々の不寛容や偽善である。
かかる不寛容を生み出し若しくは後押しするのは、コロナ禍により生み出された人々の苛立ちであろうか。映画でコロナ禍が扱われること自体が少ないのに、ここまでマスクについて言及する映画があるとは。マスクが苛立ちの象徴として使われている感じである。ルーマニア人の本来の国民性を知らないので何とも言えないが、町民の不寛容は多くコロナ禍が生んだものではないか、と想像される次第。
中盤の警句的再定義においては、世の中の不条理や理不尽や偽善が次々と点出される。国家や権力に絡んでくる単語の再定義に面白いものが多い。この諧謔的パートの延長に魔女裁判の偽善的議論があるということであろう。
実際には女性教師のほうが論理的に矛盾なく、倫理的にも正しく感じられるくらいだが、その正当性は表面的な道徳観に縛られた偽善的な保護者の前には全く通用しないのである。コロナ禍により露呈した人々の偽善を見せるのが主眼であろう。
第一部を面白く(ここを面白く見るにはお話ではなく画面に興味を持つ必要がある)感じられれば、全体も楽しめるように思うが、余りにも猥雑すぎる作り方が僕には全く向いていない。つまらなくはないですがね。
独裁政権が崩壊して30年以上経って、ルーマニアもこんな映画が作られるようになった。お隣のハンガリーが結構独裁化しているのが気になる。独裁がいつも悪いわけではないですがね。
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