映画評「メジャーリーグ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1989年アメリカ映画 監督デーヴィッド・S・ウォード
ネタバレあり

大リーガーも大勢参加してWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が大いに盛り上がっているので、30年以上前に観たこの野球映画を選んでみた。

30年も下位に低迷するクリーヴランド・インディアンズ(現ガーディアンズ)の女性オーナー、マーガレット・ウィットンがマイアミに移設したいので、観客数を下げるべく、監督にはソフトボールの実績しかないジェームズ・ギャモンを起用、刑務所帰りの剛腕投手チャーリー・シーン、メキシコ帰りの捕手トム・ベレンジャー、足は速いがフライしか打てないウェズリー・スナイプス、ブードゥー教信者で変化球がまるで打てないキューバ出身の長距離打者デニス・ヘイスバートなど、へなちょこ選手ばかりと契約する。
 かくして序盤は敗戦続き。しかるに、近視と判明したシーンの視力を矯正すると俄然制球力が良くなるなどして、徐々に上位に加わり、それを面白く思わないオーナーに嫌がらせをされると、選手が一致団結し、成績は益々上がり、遂にヤンキーズとの最終戦で勝った方が優勝という大一番に臨む。

問題児ばかり抱えた弱小チームが問題を解消して次第に強くなっていく、というお話は大昔から定石と言えるもので、この作品以降も類似作品が色々と作られてきた。その意味でこの手の映画を中興させた作品と言えるかもしれない。

選手の個性を考えれば必然的にコメディーにならざるを得ないが、最後の試合の展開ぶりはなかなか巧い。このような王道的な映画の作り方は、ハリウッドは日本映画より一日の長があるという印象で、それは今日まで余り変わらないのではないか。

選手は俳優とスタントがやっていると思われるが、チャーリー・シーンの投球フォームは良い。ヤンキーズ戦の先発投手役の俳優は余りにも立ち投げ・手投げで全く良くない。パーム投手などにああいう立ち投げの投手はいるが、そういう設定でもあるまい。全編を通して投球される球が遅いのも気になる。2,3球プロらしい速い球も見えたが。アクション映画が目立つスナイプスの走塁・守備は本格的で実に本物っぽい。

さらに細かいことを言うと、近視矯正でシーンのコントロールが良くなるというのは理屈に合わない。まるで見えない人を別にして、コントロールは視力に関係ない。それ以前に捕手のサインが見えない筈だから、現場以外で視力が悪いと判明するのは変でござる。

細かいことはともかく、肩を凝らさず気軽に見るのにちょうど良い。WBC試合の前にでも見て気持ちをほぐしましょう。

因みに、インディアンズはこの映画の後数年して本当に強くなったが、ポリ・コレの一環で、昨年100年以上続いたチーム名が変わった。差別とはまるで逆に初めてのインディアン選手を顕彰する為に命名したのが実際。そういう理屈もなかなか通らない時代です。

今日は日本の準々決勝。日本の方がマイナーリーガー中心のイタリアより戦力は上だが、一次リーグの中国やチェコほど大きな差があるわけではないので、どうなるか解らない。出来ればアメリカに行って貰いたいね。ここまでの成績や話題性でも野球人気にはプラスだが、優勝でもすれば野球をする少年も多少増えるのではないか。野球が世界的な人気スポーツとなるのが僕の願い。サッカーはシーズンよりW杯が大事であるし、プロ・アマを超えた天皇杯もある。野球もそうなると楽しいだろうな。

この記事へのコメント

蟷螂の斧
2023年04月28日 20:54
こんばんは。「プラトーン」では同じ軍隊の中の敵同士だったチャーリー・シーンとトム・ベレンジャーがこの「メジャーリーグ」ではチームメイト。投手と捕手。笑えました!僕はそういう配役って好きです。

>全ての犯罪は原因を追究する必要があるのは言うまでもないでしょう。

その通りです。犯罪を許してはいけません。

>まあ、解って言っているのだろうけど。

そこがまた独裁国家なのでしょう。

>名古屋刑務所の刑務官が受刑者に暴行

https://news.yahoo.co.jp/articles/0f2e1be1b89b5746b0a934fea0f7e1b48296e442
これもまた複雑な問題です。
オカピー
2023年04月29日 09:06
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>敵同士だったチャーリー・シーンとトム・ベレンジャーが
>「メジャーリーグ」ではチームメイト。投手と捕手。笑えました!
>僕はそういう配役って好きです。

こういうのは楽しいですね。
昔は、スターシステムだった為同じ俳優が共演することが多く、恐らくそういう例も多かったと思いますが、1970年頃に世界的にスターシステムが崩れた以降は、そういう面白味は減ったかもしれませんね。

>名古屋刑務所の刑務官が受刑者に暴行

人権意識の低い彼らが送検されるだけでも、日本はまだマシなのでしょうね。

僕は「入管法改定」(改正という言葉を使うのは不当)を心配しています。これからは毎年10万人近い人々が仕事を求めて日本にやって来て、2070年には総人口のうち10%が外国人になると予想される中、日本を好んでやって来る難民(クルド人が多いのは多分中東では日本の評判が良いからでしょう。特にトルコとは仲が良い)を排除して何の得がある? 僕は労働を求めてやって来る連中より余程信用しますけどね。クルド人は帰る国がないのですから。
 一部に、トルコやミャンマーと仲が良いので、クルド人やミャンマー人を難民に認定しないのではないかという説があります。その可能性は、NATO加盟をめぐるトルコVSフィンランド/スウェーデンの関係を見ると、ある程度信用できるお話。

こんなことをやっていると、数十年後に日本は泣くことになると思いますよ。
蟷螂の斧
2023年04月30日 10:01
こんにちは。

>全編を通して投球される球が遅いのも気になる。

そのあたりが野球を題材にした映画の難しさなんですよね。
その点「ナチュラル」でのロバート・レッドフォードのバッティングフォームは掛布雅之みたいでカッコいいと言われていました。
チャーリー・シーンは今調べたら、高校時代はプロからもスカウトされたことがある程の腕とのこと。ステロイドを出演時に服用しており、それによって球速が10キロほど上がったが、元々127キロ出ていたとも。

>そういう理屈もなかなか通らない時代です。

バカバカしいですよね。

>トルコやミャンマーと仲が良いので、クルド人やミャンマー人を難民に認定しないのではないかという説があります。

国同士の関係は難しいです。

>こんなことをやっていると、数十年後に日本は泣くことになると思いますよ。

どんな恐ろしい結末が待っているやら・・・。
オカピー
2023年04月30日 22:04
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>チャーリー・シーン
>それによって球速が10キロほど上がったが、元々127キロ出ていたとも。

バッティングセンターへ行って僕がまともに打てるのは120kmまで。
僕のスウィング・スピードではそれ以上の球速は無理。球が発射される前に打ってまぐれ当たりすることもありますが、1%程度の確率ですからね(とほほ)。

>日本
>どんな恐ろしい結末が待っているやら・・・。

僕らが生きている間にもひどい目に遭うかも。くわばらくわばら。
蟷螂の斧
2023年05月01日 21:07
こんばんは。の森一生監督作品「おけさ唄えば」(市川雷蔵と橋幸夫が共演)を昨日見ました。コミカルな作品で面白かったです。橋幸夫の歌がところどころ聞ける。男装の水谷良重も可愛かったです。

>バッティングセンターへ行って僕がまともに打てるのは120kmまで。

運動神経が鈍い僕から見れば素晴らしいです。

>僕らが生きている間にもひどい目に遭うかも。

自分が生きている時と死んでからの境界線。随分違う。そんな当たり前の事を最近よく考えます。
オカピー
2023年05月01日 22:29
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>森一生監督作品「おけさ唄えば」(市川雷蔵と橋幸夫が共演)

解らん(笑)
市川雷蔵は全部観ても良いと思っています。

>>バッティングセンターへ行って僕がまともに打てるのは120kmまで
>運動神経が鈍い僕から見れば素晴らしいです。

尤も、それも20年くらい前の話。
今は100kmくらいでがやっとではないかなあ。

>自分が生きている時と死んでからの境界線。随分違う。そんな当たり前の事を最近よく考えます。

僕も似たような感じでしょうか。
しかし、僕は政治家ではないので、死んだ後のことまで責任は持てませんが、子供や孫の世代が困ることになるので、他人事ではないですよね。

さて、今の政治はデタラメですが、一方的にデタラメに作った法律が事前に予想されたほど悪い結果をもたらしていないのには、少々ホッとしています。
 同時に、7%程度のインチキ保守の為に、日本が行くべき方向へ進めないのはイライラしますなあ(彼らは何を怖れてるのだ?)。
 選択制夫婦別姓など、日本の経済にとってかなりプラスになると思いますがね。
蟷螂の斧
2023年05月04日 12:46
こんにちは。昨日は市川雷蔵と橋幸夫共演「花の兄弟」を見ました。池広一夫監督作品。脚本が笠原良三。面白かったです。

>子供や孫の世代が困ることになるので、他人事ではないですよね。

その通りです。そして今は結婚しない、子供はいらないと言う人が増えている時代。あるいは結婚したくても年収の問題。三位一体の改革あたりから日本はこのようになってしまったのでしょうか?

>7%程度のインチキ保守の為

国を動かしているのも7%の人達なんですね。非凡人なのでしょうか?ドストエフスキーの「罪と罰」を思い出します。
オカピー
2023年05月04日 19:13
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「花の兄弟」を見ました。
>池広一夫監督作品。脚本が笠原良三。面白かったです。

池広監督なら面白そうですね。
笠原良三は喜劇作品が多いですが、これも喜劇色が強かったでしょうか?
プライムビデオにありましたが、KADOKAWAなんたらと契約しないといけないので、今は無理です。毎月払うタイプは極力避けないと。

>三位一体の改革あたりから日本はこのようになってしまったのでしょうか?

バブル崩壊後の、消費税増税が繰り返しがデフレを生んだのは統計が示しているので、その辺りからでしょう。
民主党の失政(初めて国政を執るのは難しい)がつくづく惜しまれます。結果的に自民党が強くなるだけの効果しかなかった。

>国を動かしているのも7%の人達なんですね。非凡人なのでしょうか?

明治以降の日本文化を伝統と考えているだけの人たちです。
色々の古典を読むと解りますが、江戸時代までは日本人はLQBTQに対して寛容だったですよ。
明治時代の直前に欧州に産業革命が起こり、人口増加が必要となったので、同性愛に厳しくなった頃、日本が欧米と出会いました。その結果が今の保守と言っている連中のLGBTQ嫌いです。全然伝統ではないデス。
儒教思想下で夫婦別姓が当たり前だったので、強制的夫婦同姓も1898年に始まったばかり。まだ130年も経っていない。これも元来欧米の思想に基づきます。今頃になって色々と注文をつけてくる欧米に反旗を翻している。