映画評「ゴースト/ニューヨークの幻」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1990年アメリカ映画 監督ジェリー・ザッカー
ネタバレあり

同期入社の同僚がこの映画を観て“主題歌の「アンチェインド・メロディー」が気に入って、CDを買ってしまった"と言っていたのを思い出す。僕はこの映画に使われる以前からブルーアイド・ソウルでお馴染みのライチャス・ブラザーズのこの曲は知っていたが、使い方がなかなか上手く、この曲が流れる場面では感極まって少々涙が出て来る。

初鑑賞の後ブログ開始前にも見たような気がするのだが、よく憶えていないので二回目の鑑賞としておきます。

ニューヨーク。銀行員パトリック・スウェイジが不審な口座を発見して、同僚トニー・ゴールドウィンに告げるが、その直後の夜、恋人の陶芸家デミ・ムーアと歩いている時強盗らしき人物に襲われて銃殺され、直後に亡霊となって自分が死んだことを気付き、黒人霊媒師ウーピー・ゴールドバーグに頼って調査をするうち、襲撃を依頼したのが親友と思ったゴールドウィンと知る。
 亡霊スウェイジは、インチキのつもりだったのに彼の声だけは聞こえるウーピーに指示して関連口座から大金を奪って追い込み、奪還しようとデミに迫るゴールドウィンを破滅させる。

上で匂わせたように、主人公たちの愛情関係にぐっと来てしまう。
 しかし、これに立脚していながらも、主人公が犯人を突き止めて仕留めるという骨格の部分に幾つかのサスペンスや主人公とウーピーとの珍コンビによるお笑いなどを色々と張り巡らせて、用意周到に楽しませてくれる。

新米亡霊で物に触れることができない彼が、先輩幽霊ヴィンセント・スキャベリにその秘訣を学んで取得するところなども実に面白く、この能力を使ってゴールドウィンを脅したり、疲れて有効に使えなかったり、うまく活用している。この辺りがハリウッド映画は断然うまい。
 逆にこういうアイデアがなかなか上手く行かないのがわが日本の大衆映画で、男女を入れ替えた日本版リメイク「ゴースト もういちど抱きしめたい」(2010年)の不首尾を思い出す。

主人公は未練を残してこの世にうろちょろする(仏教流・日本流に言えば、成仏できない)。本来の意味とは少し違うが、謂わば煉獄にいる。しかし、彼を裏切った悪党ゴールドウィンは死ぬと早速地獄に連れて行かれる。復讐すると共にデミへの愛情を余すことなく伝えた主人公は天国に行く。本作は、西洋人の考える死後の三つの世界をそこはかとなく見せる。この点が実に面白い。

この記事へのコメント

2023年03月18日 11:37
日本のアニメ「きみと、波にのれたら」は、ちょっと「ゴースト」入ってたといわれてましたね。このブログでストーリー読むと影響うけてたのかなあって(じつは「ゴースト」まだ観てないのです)
オカピー
2023年03月18日 22:35
nesskoさん、こんにちは。

>「きみと、波にのれたら」は、ちょっと「ゴースト」入ってたといわれてましたね。

こちらには生前の約束は有りませんけど、似た匂いを感じますね。

>(じつは「ゴースト」まだ観てないのです)

記憶程にはロマンティックな映画ではなかったですが、良く出来た大衆娯楽作と思います。主題歌となった「アンチェインド・メロディー」が素敵ですよ。