映画評「寄席の脚光」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1950年イタリア映画 監督フェデリコ・フェリーニ、アルベルト・ラットゥアーダ
ネタバレあり

フェデリコ・フェリーニの傑作「8・1/2」の1/2は本作のことである。同世代のアルベルト・ラットゥアーダと共同でメガフォンを取った(監督デビュー作)ので、1/2という次第。 フェリーニは大監督になったが、 本作は日本劇場未公開に終わった。現在なら「道」の高評価の後すぐに輸入されたであろうに。

借金に追われる劇団の座長格ペッピノ・デ・フィリッポが、列車内で売り込みに来た踊り子志願カルラ・デル・ポッジョの美貌によろめくが、彼女に枕営業をする気はないらしい。
 が、彼女は、馬車代も払えない劇団に馬車を用意することで踊り子に加えてもらい、スカートが落ちて下着で踊るのが受けて人気者になると、フィリッポ氏は長年の相棒である恋人ジュリエッタ・マシーナの代わりに、彼女をフィーチャーした新しいヴォードヴィル・チームを作ろうと色々と奔走するが、その間にカルラはもっと安定した大物興行主と契約してしまう。
 フィリッポは新団長の下で働き始めたジュリエッタと元の鞘に戻る。

中年芸人が野心に溢れた若い娘に良いように利用され、結果的に翻弄されるお話だが、幕切れは小津安二郎の「浮草」(1959年)やそのオリジナル「浮草物語」(1934年)とそっくりである。但し、この主人公が「浮草」などの主人公たちほどには反省せず、早速また新しい娘に色目を使ったりするのがイタリア的。小津のように情緒的にはならないのである。

大枠ではぐっと素直で即実的なイタリア的悲喜劇ではあるものの、戦後間もない相当泥臭いイタリア的ヴォードヴィル風景の点出など後年の「」「フェリーニのローマ」「フェリーニの道化師」を思い出させるし、ジュリエッタ・マシーナのキャラクターに「カビリアの夜」のヒロインに通底するものがあるなど、(共同監督作とは言え)既に色々とフェリーニ的なものが胚胎している辺りが、欧州映画好きのベテラン・ファンには面白味となる。

後年のフェリーニの凄味を期待しなければ、悪くない出来栄えと思う。

フェリーニたちは小津を観ていたのかな?

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