映画評「続・荒野の七人」

☆☆★(5点/10点満点中)
1966年アメリカ映画 監督バート・ケネディー
ネタバレあり

始まったばかりの衛星放送で観た時は☆☆☆(6点/10点満点中)相当を付けたが、今回再鑑賞したらまるで面白くなかった。
 その理由若しくは原因は、第一作の七人のうち四人が亡くなり、生き残ったメンバーでもリーダーのユリ・ブリンナー以外顔ぶれが変わって、総じて華のない配役陣になったことにある。

第一作から数年後、かの部落の男衆が、革命軍くずれの連中に襲われる。同じようなことを他の二部落でもやったらしい。そこで前回生き残ったチコ(ジュリアン・マテオス)と結ばれたペトラ(エリザ・モンテス)が、賞金稼ぎをしていたクリス(ブリンナー)にその事実を告げ、応援を頼む。
 彼は再会したヴィン(ロバート・フラー)と共にその要請に応じることにし、監獄などを巡ってメンバーを集める。かくして集められたのが死刑直前の二人ルイス(ヴィルジリオ・テイシェイラ)とフランク(クロード・エイキンズ)、二人の知人コルビー(ウォーレン・オーツ)、そしてコルビーが町で見つけた孤児マニュエル(ジョーダン・クリストファー)、という面々。

以降、前回と似た場面が繰り広げられるが、銃撃戦が思いのほか迫力がない。クリスと言うかブリンナーの無駄な動きも目に付く。バート・ケネディーはコミカルな西部劇が得意と言いながら実力者だが、彼の演出力を考えると余計物足りなく感じる。

出演時はブリンナー以外無名に近かった「荒野の七人」の連中はそれでも個性が強く、そのおかげでキャラクターが魅力的であったのに対し、本作は知名度だけでなく役者としての力も彼らに劣る。エイキンズはベテランだが甚だ地味だ。第一作でキャラクターの魅力を増すのに貢献した面白いディテイルがまるでないのも不満。

良いのは音楽が前回同様エルマー・バーンスタインで、主題曲が引き続き使われていること。あの音楽は実に爽快だ。

悪党にも三分の理ありといった作り方。純文学ならともかく、大衆映画ではこれは良し悪しデス。

この記事へのコメント

蟷螂の斧
2023年03月26日 08:27
おはようございます。クリス(ユリ・ブリンナー)と再会したヴィンがスティーヴ・マックィーンではなく、ロバート・フラー(まだ健在。89歳!)。いきなりグレードが下がります(失礼!)。「あんたの首に懸賞金がかかってるぜ。」「いくらだ?」「5000だ。」「ドルか?」「ペソだよ!」
牢獄で翌日の縛り首を待つ晩に、クリスの誘いを受けたルイスを演じたのがヴィルジリオ・テイシェイラ(1917~2010)。ポルトガルでは有名な俳優だそうです。
同じように牢獄にいたフランクを演じたのが、クロード・エイキンス(1926~1994)。「最後の猿の惑星」でアルドー将軍(ゴリラ)の役です。
女好きで痴話騒動ばかり起こしているコルビー役はペキンパー監督作品でお馴染みのウォーレン・オーツ。ユリ・ブリンナーに気を遣いながら演技しているのが伝わってきて面白いです。
僕が大学4年の後半。βのビデオデッキを使ってたった一人の映画同好会。この作品の日本語版を録画して何度も見ました。中盤でブリンナーが登場する場面でフィルムに大きな傷がついていたのも思い出します。
オカピー
2023年03月27日 08:52
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>ロバート・フラー(まだ健在。89歳!)。いきなりグレードが下がります(失礼!)

TV 界では人気ものでしたけどね。

>ヴィルジリオ・テイシェイラ(1917~2010)。ポルトガルでは有名な俳優だそうです。

スペイン・ポルトガル語圏ではよくある名前ですね。
松井秀樹がヤンキーズに在籍していた時、前後を打っていたのがテシェイラ(テイシェイラ)。松井よりぐっとバッティングの粗い選手でしたが。

>この作品の日本語版を録画して何度も見ました。

どうもすみません。
お好きそうなので、褒めないのはどうかと思いましたが、作品として弱体なのは否定できないような感じ。それでもその後の二作よりは良い筈です。保存版を持っていますが、余り観る気が起こらない。
蟷螂の斧
2023年03月27日 18:37
こんばんは。

>どうもすみません。
>お好きそうなので、褒めないのはどうかと思いましたが、作品として弱体なのは否定できないような感じ。

それは仰る通りです。☆☆★(5点/10点満点中)は正しい評価です。
それよりも、オカピー教授との人間関係が悪くなってしまうと悲しいので、遠回しに書いたのですが・・・。訂正してもよろしいでしょうか?気に障ったら、申し訳ありません!

>かくして集められたのが死刑直前の二人コルビー(ウォーレン・オーツ)とロペス(ロドルフォ・アコスタ)

死刑直前の二人ルイス(ヴィルジリオ・テイシェイラ)とフランク(クロード・エイキンス)

>そして再会した二人の知人フランク(クロード・エイキンズ)

二人の知人コルビー(ウォーレン・オーツ)

なんです。
大学4年の秋に生涯忘れられないような大失恋。それでいろいろな映画を見まくって心を癒していた。評価が低い作品にも愛着を感じて何度も見た。まあ、典型的な自己満足ですね・・・(苦笑)。
オカピー
2023年03月27日 22:03
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>遠回しに書いたのですが・・・。

気を遣わせてしまいましたね。
エイキンズのところで、あっとは思いましたが。

>訂正してもよろしいでしょうか?気に障ったら、申し訳ありません!

却って恐縮です。
以前より、この手の明らかなミスは減っている筈なのですが、やってしまいましたね^^;
これからお読みになる方の為に、訂正しておきますね。

>評価が低い作品にも愛着を感じて何度も見た。
>まあ、典型的な自己満足ですね・・・(苦笑)。

先日“お気に入りだけ観ていたい”さんも仰っていましたように、評価に関係なくご贔屓にしたい作品があって良いと思いますよ。
レコードでもそうですよね。
蟷螂の斧
2023年03月28日 20:52
こんばんは。僕が大学4年の後半。βのビデオデッキでいろいろ録画して、たった一人の映画同好会をしていた頃。気になる俳優に関して知りたいと思っても、大学の図書館で調べるぐらいしかありませんでした。でも、あまり有名ではない俳優だと載ってない事が多かったです。
それに比べて今は便利な時代です。ネットですぐに調べる事が出来ます。日本語版では無理でも海外版を日本語訳すればわかります。

この続編でチコを演じたジュリアン・マテオス(1938~1996)。スペインの俳優兼映画プロデューサー。58歳で死去。「ドイツのジェームス・ディーン」と呼ばれたホルスト・ブッフホルツ(1933~2003)に比べると華がない。でも「実は農民の出」と言う点ではジュリアン・マテオスの方がイメージに合うとスタッフが思ったかも知れません。

孤児マニュエルを演じたジョーダン・クリストファー(1940~1996)。彼も短い生涯(55歳)でした。役者だけでなく、ザ・ワイルド・ワンズ と言うバンドのリードボーカルでもあったんですね。リチャード・バートンの元妻と結婚して娘が生まれる。晩年はニューヨーク市の 54 番街にあるニュー シアターとニューヨーク州サグ ハーバーにあるベイ ストリート シアターの運営で妻と一緒に舞台裏で働いたとか。
この作品の中での最大の功労者はダイナマイトを投げて形勢逆転にしたマニュエルかも知れません。

>評価に関係なくご贔屓にしたい作品があって良いと思いますよ。

ありがとうございます!

>レコードでもそうですよね。

ビートルズのシングル盤B面にも愛着がわく曲があります。
オカピー
2023年03月29日 21:08
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>それに比べて今は便利な時代です。ネットですぐに調べる事が出来ます。

時には嘘や間違いもありますが、本当に良いですよ。
ただ、池上彰氏も仰っていましたが、不便の方が自分の身のためになることが多い。余りに簡単に情報が手に入るので、まるで憶え(ようとし)ない。
蟷螂の斧さんのように、上手く使えば、記憶にも残るし、これほど便利なものはないですね。

>でも「実は農民の出」と言う点ではジュリアン・マテオスの方がイメージに合うとスタッフが思ったかも知れません。

ホルスト・ブッフホルツにヒスパニックをやらせるのは無理がありましたよね。知名度と俳優としての魅力は大ですが、さすがにそれは・・・
しかし、今は有色人種が白人を演ずる変な時代。職業の機会均等は、画面の外側でやって貰いたいものです。

>ザ・ワイルド・ワンズ

日本にも同じ名前のGSがありましたね。日本の方がほんの少し早いようですが。
サザンオールスターズの「チャコの海岸物語」はワイルド・ワンズを意識した楽曲だそうで。確かに海と結び付くGSはワイルド・ワンズくらいか。

>この作品の中での最大の功労者はダイナマイトを投げて形勢逆転にしたマニュエルかも知れません。

同様の意見を他に読んだ記憶があります。
蟷螂の斧
2023年04月02日 11:07
こんにちは。

>同様の意見を他に読んだ記憶があります。

実は他のサイトに書いてあった事の受け売りです。すみません(汗)。
さらに別のサイトで読んだ事。七人のメンバー達が雨の中「俺たちは何のために戦っているんだ?」と愚痴をこぼす場面。当時ベトナム戦争で戦っている若者たちの気持ちを代弁したのではないかと。

>サザンオールスターズの「チャコの海岸物語」

しばらくヒット曲から遠ざかっていたサザン。起死回生のヒット曲。桑田氏曰く「トシちゃんの歌い方を真似た」とか。

>今は有色人種が白人を演ずる変な時代。

やはり違和感がありますよね。

>不便の方が自分の身のためになることが多い。

苦労して知った方が忘れないでしょう。
オカピー
2023年04月02日 20:42
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>実は他のサイトに書いてあった事の受け売りです。

僕も、そこはかとなく感じていたことを他の方、僕の場合は双葉師匠が多いですが、適切に述べているのを見ると、採用することがありますね。まるで感じていないことではしませんけど。

>七人のメンバー達が雨の中「俺たちは何のために戦っているんだ?」と愚痴をこぼす場面。
>当時ベトナム戦争で戦っている若者たちの気持ちを代弁したのではないかと。

そうかもしれませんね。
「猿の惑星」の二作目以降で、黒人の公民権運動を投影していたのが感じられたように、色々この手はありますね。

>桑田氏曰く「トシちゃんの歌い方を真似た」とか。

音楽はGS(オックスも入っていますね)なのに、歌い方は違うなあと思っていたところ、先日寝ながら聴いているうちに、これは田原俊彦だわいとピンと来ました。サザンは全オリジナル・アルバムを持っていますが、アルバム未収録の曲が20曲ほどあり、大半はベストで聴けるため図書館からとりあえず二つ借りてきました。「チャコの海岸物語」もそうした一つ。

>やはり違和感がありますよね。

歴史ものや歴史ファンタジーに多いのですが、設定を黒人に変えたのか、白人役に黒人(有色人種と言っても黒人が圧倒的に多い)を当てたのか、極めて解りにくい。歴史ものでは後者が断然多いようで、近現代ものでは前者が多いようです。
お話は主題の理解を妨げることがあるので、これはやめてほしいのですがね。
蟷螂の斧
2023年04月04日 20:32
こんばんは。

>お話は主題の理解を妨げることがあるので、これはやめてほしいのですがね。

まさか「風と共に去りぬ」も、そうなるとか?さすがにあり得ないでしょうか。

>アルバム未収録の曲

編集アルバム「バラッド」にもオリジナルアルバムに未収録の曲がありました。車校に通って嫌な思い(教官の態度が横柄!)をしている頃に「バラッド」をよく聞きました。

>色々この手はありますね。

その通りです。第4作はまさにそうです。

>双葉師匠

第三作「新・荒野の七人 馬上の決闘」。双葉師匠の最後のコメントが傑作でした(拍手!)
オカピー
2023年04月04日 22:24
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>まさか「風と共に去りぬ」も、そうなるとか?さすがにあり得ないでしょうか。

ないです(笑)
 というのは、「風と共に去りぬ」自体が、彼らには歴史改竄の小説・映画という理解なので、もはや何の関心もないからです。どこが歴史の改竄なのか全く解りませんけどね(彼ら自身が現在、半ば改竄しているのを棚に上げて、昔作られた映画にはそういう表現をする)。
 今日の映画評「シラノ」はほぼその問題に終始しました。ご興味ありましたら、どうぞ。

>編集アルバム「バラッド」にもオリジナルアルバムに未収録の曲がありました。

はい。
これは現在借りられていますが、予約中。同じく借りられている「バラッド3」にも何曲かありますので、これも予約中。

>第三作「新・荒野の七人 馬上の決闘」。双葉師匠の最後のコメントが傑作でした(拍手!)

読みました。
この映画は再鑑賞していませんが、なるほどという感じですね。マックィーンの動きは魅力的でしたから。
蟷螂の斧
2023年04月08日 22:27
こんばんは。シリーズ第4作は「荒野の七人 真昼の決闘」。
かつてお尋ね者だったクリスが何と町の保安官。クリスを演じるのはマカロニウェスタンの悪役でお馴染みのリー・ヴァン・クリーフ。その作品に対する双葉師匠のコメントが面白いです。

>「シラノ」

未見です。いつかは・・・。

>「バラッド3」

「LOVE AFFAIR 〜秘密のデート」
https://www.youtube.com/watch?v=I7GuXGJCalc
いいですね~!

>陸上自衛隊ヘリ消失から丸2日が経過

何があったんでしょうか?
オカピー
2023年04月09日 20:42
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>シリーズ第4作は「荒野の七人 真昼の決闘」。
>その作品に対する双葉師匠のコメントが面白いです。

僕も同じことを書きそうです。
先に使われては、使えまへんな(笑)

>「バラッド3」
>「LOVE AFFAIR 〜秘密のデート」

良い曲ですよね。
洋楽に想起させる曲が幾つかありそうな気がしますが、解らない。
これもビリー・ジョエルの「アップタウン・ガール:とロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」を合わせるとこんな感じ? にならんか(笑)。アレンジに「ビー・マイ・ベイビー」的なところがあるとは思います。

>陸上自衛隊ヘリ消失から丸2日が経過
>何があったんでしょうか?

中国が絡んでいないのは確かでしょう。中国は日本と一戦交えるなんてことは全く考えていないので。
mirage
2023年08月06日 12:20
この映画「続・荒野の七人」を観て、ロバート・フラーをとても懐かしく感じました。
ロバート・フラーと言えば、かつてTVで人気を博した「ララミー牧場」でのジェス役の俳優さんですね。
吹き替えを久松保夫さんが行っていて、いまだにその印象が強く残っています。
とにかく、ロバート・フラーの憂いを秘めた眼差しと鮮やかなガンさばきが、我々西部劇ファンを魅了したものでした。
この「ララミー牧場」は、かの映画の伝道師・淀川長治さんが解説をされていましたね。
ロバート・フラーはこの映画では、やはり主役のユル・ブリンナーの映画ですので、あまり印象には残りませんでしたね。
オカピー
2023年08月06日 22:33
mirageさん、こんにちは。

>ロバート・フラーと言えば、かつてTVで人気を博した「ララミー牧場」でのジェス役の俳優さんですね。

僕はまだ幼くて辛うじて記憶にある程度ですね。

>吹き替えを久松保夫さんが行っていて

そうでしたね。
僕は、映画を本格的に見るようになってから、バート・ランカスターの声というイメージが強くなりましたが。

>淀川長治さんが解説

これが「日曜洋画劇場」に繋がっていくんですね。

>ロバート・フラーはこの映画では、やはり主役のユル・ブリンナーの映画ですので、あまり印象には残りませんでしたね。

そうでした。
第一作以上に、ブリンナーに頼った印象です。