映画評「ベルイマン島にて」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2021年フランス=ベルギー=ドイツ=スウェーデン=メキシコ=ブラジル=イギリス合作映画 監督ミア・ハンセン=ラヴ
ネタバレあり
僕はイングマル・ベルイマンが好きで、初期の数本を除いて全部観ている。そういう人なら本作の設定は相当面白く感じられると思う。監督はミア・ハンセン=ラヴというフランス女性だが、名前から推して北欧系である。
熟年男性監督ティム・ロスと妻の若手女性監督ヴィッキー・クリープスが、ベルイマンが居を構え、撮影に多く使ったフォーレ島通称ベルイマン島に足を運び、ロスの新作の試写会をしたり、ベルイマンゆかりの場所を訪れたりする。他方、ヴィッキーは新作の恋愛映画の幕切れに悩んでいる。
映画は丁度半分過ぎた頃から、彼女の作品のヒロインたるミア・ワシコウスカとその腐れ縁の恋人アンデルシュ・ダニエルセン・リーの恋の成り行きを描く劇中劇との間を往来する二重構造になっている。
その中味はヴィッキーが自身を投影したメタ的要素満載であるが、僕の長い映画鑑賞歴から推してもヴィッキー自身がミア・ハンセン=ラヴ監督の分身でありそうだから、どこかのサイトで指摘する人がいるように、三重のメタ構造と言って良い面白さがある。
劇中の監督が悩んでいたように、劇中劇が何となく中途半端に終わった挙句、時間が一気に飛んでいることに我々は気づかされる。
ヴィッキーがベルイマンの物凄い試写室で目を覚ました時にダニエルセン・リーが現れて “僕もここを訪れたかったな” と言うのだが、この瞬間映画は既にクランクアップ状態であることが判るのである。
つまり、ヴィッキーが想像している内容と思われていた劇中劇は、実は、フラッシュフォワードであったという仕掛けでござる。
その後映画は、二人の7歳くらいの娘が島で母親と再会して終わるが、凝り過ぎて舌足らずになってしまったという感を禁じ得ない。
二人で歩くショットが多い。あるいはベルイマンに傾倒すること甚だしいウッディー・アレンを意識していようか。
ベルイマンの映画に使われたと思しき場所が色々と出て来て、個人的にはその辺りが非常に楽しめる。台詞を含めて、ベルイマンをよく知っていればいるほど楽しい映画であること、請け合い。
クラシック調のBGMが素晴らしい。
2021年フランス=ベルギー=ドイツ=スウェーデン=メキシコ=ブラジル=イギリス合作映画 監督ミア・ハンセン=ラヴ
ネタバレあり
僕はイングマル・ベルイマンが好きで、初期の数本を除いて全部観ている。そういう人なら本作の設定は相当面白く感じられると思う。監督はミア・ハンセン=ラヴというフランス女性だが、名前から推して北欧系である。
熟年男性監督ティム・ロスと妻の若手女性監督ヴィッキー・クリープスが、ベルイマンが居を構え、撮影に多く使ったフォーレ島通称ベルイマン島に足を運び、ロスの新作の試写会をしたり、ベルイマンゆかりの場所を訪れたりする。他方、ヴィッキーは新作の恋愛映画の幕切れに悩んでいる。
映画は丁度半分過ぎた頃から、彼女の作品のヒロインたるミア・ワシコウスカとその腐れ縁の恋人アンデルシュ・ダニエルセン・リーの恋の成り行きを描く劇中劇との間を往来する二重構造になっている。
その中味はヴィッキーが自身を投影したメタ的要素満載であるが、僕の長い映画鑑賞歴から推してもヴィッキー自身がミア・ハンセン=ラヴ監督の分身でありそうだから、どこかのサイトで指摘する人がいるように、三重のメタ構造と言って良い面白さがある。
劇中の監督が悩んでいたように、劇中劇が何となく中途半端に終わった挙句、時間が一気に飛んでいることに我々は気づかされる。
ヴィッキーがベルイマンの物凄い試写室で目を覚ました時にダニエルセン・リーが現れて “僕もここを訪れたかったな” と言うのだが、この瞬間映画は既にクランクアップ状態であることが判るのである。
つまり、ヴィッキーが想像している内容と思われていた劇中劇は、実は、フラッシュフォワードであったという仕掛けでござる。
その後映画は、二人の7歳くらいの娘が島で母親と再会して終わるが、凝り過ぎて舌足らずになってしまったという感を禁じ得ない。
二人で歩くショットが多い。あるいはベルイマンに傾倒すること甚だしいウッディー・アレンを意識していようか。
ベルイマンの映画に使われたと思しき場所が色々と出て来て、個人的にはその辺りが非常に楽しめる。台詞を含めて、ベルイマンをよく知っていればいるほど楽しい映画であること、請け合い。
クラシック調のBGMが素晴らしい。
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