映画評「ブラック・フォン」

☆☆★(5点/10点満点中)
2021年アメリカ映画 監督スコット・デリクスン
ネタバレあり

何と一昨日に続いてまたピンク・フロイドの名アルバム「狂気」が使われた。今回は “走り回って” On the Run だが、 純粋なインストルメントなのでまるで映画用に作ったようにさえ聞こえる。多分ホラー映画で使われるのを聞いたのは二度目。1000回くらい(本当です)「狂気」を聞いた僕はニコニコせざるを得ないのだ。

さて本論。左脳人間故に、論理的に問題が多い為ホラー映画を高く評価することが結果的に少ない僕には、論理その他に問題にないわけでもないものの、そこそこ面白く感じられる。

少年野球の投手であるメイスン・テイムズは学校では虐められることも多いが、ミゲル・カラレス・モーラ君という強い味方の同級生がいて随時助けて貰う。メイスン君の知り合いの子供たちが次々と誘拐される事件が発生、その中には彼からホームランを打った日系少年やミゲル君もいる。
 現実と関連付けられる夢を見る能力のあるメイスン君の妹マデリーン・マクグロウが、その犯人らしき黒い風船を持った男の夢を見て他言する。それを知った刑事二人がその事情を探るが、夢を見たという以上のことを言えるはずもない。

というのが中盤までのお話で、些かまだるっこいが、後半を観なくても典型的な布石の置き方をしていると感じさせる丹念な見せ方と言うべし。

いよいよ眼目である後半。
 程なくメイスン君も風船男イーサン・ホークに誘拐され、高いところに窓がある以外に光の入る穴もない地下室に監禁される。黒い電話機があるが、ホークによって線は切られている。しかし、ホークはわざとドアに錠をおろさない。
 かかる状況に絶望していると、何故か電話のベルが鳴る。それも一度ならぬ。それらは、先に誘拐されて殺された少年たちが復讐を期して少年が脱出するか、ホークを仕留めることを願って黄泉の国から掛けて来る電話である。彼らの言葉をヒントにメイスンが知恵を絞って、殺人鬼と対峙する。

地下室なのに一つとは言え窓があったり、ギミック的な電話機があったり、いかにもゲーム的と言おうか、お話の為のお話という感じを抱かせるところは映画として弱いが、夢の場面でジャンプ・カットを使うなど邦画「リング」シリーズの影響を感じさせる見せ方で興味深い。偶然かもしれないが、貞子も超能力者であるし、小説(原作者はスティーヴン・キングの息子ジョー・ヒル)の映画化とは言え、「リング」を想起してしまう人が僕以外にもいるのではないか。

こちらの霊は主人公を助けようとするのがそこはかとなく切ないし、妹との兄妹愛にもじーんとさせられるものがある。ちょっとした人情ドラマですかな。

ブラック・フォン=黒電話というと昭和を思い出す。平成生まれの人は、公衆電話のかけ方も碌に知らない。公衆電話と言えば、携帯電話を持っていない20年ほど前、同窓会から帰る為家人を呼ぼうとしたが、館内や近所に電話がなく(既に!)、友達の携帯もうまく使いこなせず、結局3次会まで付き合ったことがある。3・11によって最近は公衆電話の価値が再認識されているので、もしかして増えている?

この記事へのコメント

2023年04月22日 09:31
スティーヴン・キングの息子の作品と知って、さもありなん、でした。
デリクソン監督は「エミリー・ローズ」で注目しましたが、こういうの作るの、好きなんですね、きっと。
2023年04月22日 09:32
以上、ボーでした!(名前、アドレスなしでも投稿できちゃうんですねー)
オカピー
2023年04月22日 21:04
ボーさん、こんにちは。

>スティーヴン・キングの息子の作品と知って、さもありなん、でした。

親父との差はどこか、という問題も感じましたけど(笑)

>(名前、アドレスなしでも投稿できちゃうんですねー)

前のウェブリ時代の改定から、そうなってしまいました。
ウェブリとシーサーはフォーマットが同じなので、何の変化もありまへん。
これは改善して貰わないといけないんですがねえ。