映画評「マーベラス」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2021年イギリス=アメリカ合作映画 監督マーティン・キャンベル
重要なネタバレあり。未見の方ご注意あれ。

007/カジノ・ロワイヤル」(2006年)で映画ファンに注目された感のあるマーティン・キャンベルは、アクション系の監督として割合ご贔屓にしている。設定自体は極めてB級映画的な本作の首尾はどうか。

1991年ベトナム。軍人?に家族を殺されて天涯孤独の孤児になったローティーン少女が、殺し屋サミュエル・L・ジャクスンに引き取られる。20年後マギーQになった少女は、父親代わりのジャクスンの指導の下、物凄い殺し屋になっているが、表向きは稀覯本を得意とする古本屋を経営している。
 ジャクスンがある人物の調査を指示した後何者かに殺される。彼女が指示された当該人物を追うが、その人物は廃人でジャクスン殺しには関係ないことが判明する。しかるに、彼と関係があり慈善に貢献している企業家デーヴィッド・リントールがマイケル・キートンなど彼の配下に命じて、彼女の正体を探り、一旦捕えた彼女に逃げられると、彼女を殺そうと躍起になる。
 さすがの彼女も敵に苦労していると、死んだ筈のジャクスンが現れ、別々にリントールとキートンと対峙する。

アクション映画だが、彼女とキートンの会話などフィルム・ノワール的なムードが濃厚である。個人的には、小説なら面白く感じられるこの類の台詞も、サスペンスフルなアクションを眼目とした映画では、どうも退屈してしまう。

ジャクスンが死んでいず再登場する設定は多少脱力感を覚えるものの、リントールもかつて彼が殺したように見せかけた人物で、死んでいた筈のジャクスンが死んでいた筈のリントールと対峙するという辺りに劇画的な捻りが感じられ、それなりに面白い。

アクションは、スタントマンやスタンドダブルを巧みに活用していると思われるが、その前後を担うマギーQやキートンのアクションも見事。キャンベルの指導よろしきを得た結果である。
 同時に画面も安定して実に見やすく、この点においてこの監督は極めて信用できる。スタイリッシュなお話(前述通り画面は寧ろオーソドックス)が好きな方にはお薦め。

原題は The Protégé(弟子)。この邦題は、配給会社の人が、マーヴェラス(素晴らしい)!と思った結果なのかもよ。

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