映画評「犯罪都市」(2017年)

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年韓国映画 監督カン・ユンソン
ネタバレあり

マ・ドンソク演ずる刑事が笑いたくなるほど強くてなかなか気に入った「犯罪都市 THE ROUNDUP」の正編である。

いかにも劇画的な構図で展開した続編に比べて、2004年ソウルで実際にあった捕物をベースにしているだけに大分実録風ではある。とは言っても韓国大衆映画のフォーマットに落とし込まれているので、日本映画のそれとは大分違い、続編ほどではないもののユーモラスな言動も少なくない。

ソウルに中国朝鮮族の不良3人組が現れ、少人数にも拘らず先輩格の朝鮮族ヤクザに喧嘩を売り、のしていく。背景には実業家の他社掃討の思惑も絡んでいるようなのであるが、朝鮮族ヤクザ同士の抗争を何とか落ち着かせていたのが、衿川(クムチョン)警察強力班の副班長マ(マ・ドンソク)であり、これは何とかしないとあかんと、腕に物を言わして捜査を進めていく。

これが実に韓国流で、捜査権が奪われそうになっても喧嘩腰で譲らず、中国公安が絡んできそうと聞けば、便利屋的情報屋二人組を公安に成りすませて、朝鮮族ヤクザ三人組を罠に嵌めようと画策する。
 ところが、ボスのチャン(ユン・ゲサン)は腕っぷしが強いだけでなく実に賢く、彼の仕込んだ汚職公安の麻薬横流し現場に踏み込んでも配下にした昔の朝鮮族ヤクザがいるだけである。
 それでも新米刑事の連絡で居場所を掴んだマ刑事は、遂に彼と対峙することになる。

ヤクザと警察の対決という刑事映画の1ジャンルの公式に則りながらも、サイコパスの要素を加えたのがこの「犯罪都市」である。そして、そのサイコパスの異常ぶりと無敵の強さを持つ刑事という二大要素にぐっと焦点を絞ってパワーアップしたのが続編。従って、徹底して漫画的に楽しむなら続編が良いが、がっちりとしたお話を楽しむならこの正編を推す。

我が邦の「孤狼の血」はまるでこのシリーズの流れを追っている感じがありますな。

この記事へのコメント

mirage
2023年08月06日 12:09
この「犯罪都市」シリーズは、本当にマ・ドンソクの魅力をたっぷり堪能できますね。
強気をくじき、弱気を助ける、しかも愛嬌があって、本当にマ・ドンソクは素晴らしいですよね。

我々が求める理想的なヒーロー像を体現していますよね。
特に少年に向ける細やかな愛情表現など、役者としてもマ・ドンソクの演技は、観ていて惚れ惚れしますよね。

それにしても、こういうタイプの映画では、悪役の存在がとても重要で、悪役が凄ければ、凄いほど、主役が引き立って、映画的緊張感が増しますよね。
シリーズ1作目で、強烈な悪役を演じて、我々観る者を震撼させたユン・ゲサン。

このユン・ゲサンという俳優は、もともと主役を張れる演技派の個性的な大物俳優で、そんな彼がこの映画では残忍で凶暴な悪役を、実に憎々しげに演じていましたね。

やっぱり、彼のような主役級の俳優が悪役を演じると、こうも迫力のあるキャラになるのかと、あらためて目を見張りましたね。

そして、クライマックスでの、マ・ドンソクとユン・ゲサンの空港でのトイレでの格闘シーンは、本当に息を飲むほどの迫力に満ちていて、アクションシーンの素晴らしさを堪能できましたね。

それにしても、ユン・ゲサン、相手が悪かった。何しろ超ド迫力のマ・ドンソクですからね。
最後は、やっぱりボコボコに叩きのめされてしまいましたよね(笑)。
オカピー
2023年08月06日 22:13
mirageさん、こんにちは。

>この「犯罪都市」シリーズは、本当にマ・ドンソクの魅力をたっぷり堪能できますね。

仰るように、強いだけでなく、愛情深くて、愛嬌もあって、魅力満載のシリーズですね。第3作ができても不思議ではない出来栄え。

>こういうタイプの映画では、悪役の存在がとても重要で、悪役が凄ければ、凄いほど、主役が引き立って、映画的緊張感が増します

正に。
ヒッチコックも同じことを述べています。

>ユン・ゲサン、相手が悪かった。

はい。僕が見て来た悪役の中でも最強の部類ですが、最強の中の最強刑事マには敵いませんでした。