映画評「トイレの花子さん」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1995年日本映画 監督・松岡錠司
ネタバレあり

学校怪談ブームに乗って松竹が学校を舞台に作ったホラー映画だが、怪談は一種のダシである。「学校の怪談」同様リアル・タイムで観ている。それ以来の再鑑賞。

世に“トイレの花子さん”の都市伝説が流布している頃、 二件の女子児童連続殺人事件が世間を騒がしている。頭も良い美少女・河野由佳が転校して来るが、タイミングが悪く、彼女が殺人を犯す “トイレの花子さん” 扱いされ、学校のトイレに閉じ込められてしまう。夜になり、かの事件の真犯人である変質者・緋田康人が現れ、彼女を追い詰める。

5年前のデビュー作「バタアシ金魚」で僕が注目した松岡錠司監督だけに、青春(というより、厳密には思春期前期)映画のムードが濃厚だが、犯人が現れるや突然オカルト・ホラーを飛び越えてサスペンス映画になる。

彼女を助けに駆け付けるのが、彼女に寄り添ってみたりイジメ少女側に付いてみたり態度をはっきり打ち出せない同級生男子・井上孝幸で、逆に常に彼女を信じるその妹・前田愛は学校で犯人を目撃、兄にその対処を任せて牛乳屋を営む父・豊川悦司に助けを求める。

この映画は、亡霊より怖いのは人間という観念を主題としてずっと流しているわけで、途中まで “トイレの花子さん” はダシにすぎないのだが、 松岡監督は終盤に背負い投げをかけてきた。
 何と “トイレの花子さん” がその念力で子供たちに呼びかけ、学校に集結させるのである。結果的に “トイレの花子さん” は子供たちの味方であった、という落ちなのだから、ビックリしましたゾ。

テーマにおいて高級感を漂わせるが、冒険に徹して楽しませる要素をつぎ込んだ「学校の怪談」に及ばない気がする(Allcinemaの解説者とは真逆の印象。僕はテーマの上等下等で映画の良し悪しを判断しない。但し、テーマが高級であれば良い評価を繋がりやすいのは確か)。

実際、変質者があそこにいる理由がよく分からない。異常者が事前に学校を注視していたことは丹念に示されているが、トイレに少女が閉じ込められていることを知っていたか否か。全く曖昧で出たとこ勝負的であるし、終盤のクライマックスも少々気を持たせすぎでありましょう。
 かくして、意外性はあるが、終盤は胃が持たれた。

愛ちゃんの妹・前田亜季ちゃんも出ている(らしい)。最後に男児と一緒に話している少女がそうかな?

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