映画評「三姉妹」
☆☆★(5点/10点満点中)
2020年韓国映画 監督イ・スンウォン
ネタバレあり
同じ韓国映画でも純文学系は、最初笑わせて後はシリアスという二つの映画を見ているような大衆映画の悪い癖はないので、その点安心して観られる。が、本作には、韓国人特有の大声を出してやたらに人に食って掛かる箇所が多くあり、観ていて非常に疲れました。
ソウル。長女ヒスク(キム・ソニョン)は別れた夫の借金を返しながら、しがない花屋を営んでいる。癌を患い、反抗期の一人娘(キム・カヒ)に疎まれても“大丈夫なフリ”をする。
次女ミヨン(ムン・ソリ)は執事として熱心に教会に通い聖歌隊の指揮者も勤めるが、夫の不倫を知って平和な生活が崩れ始める。
劇作家の三女ミオク(チャン・ユンジュ)はスランプで自暴自棄となって昼夜問わず酒浸りで、傍若無人にミヨンに電話を掛けて困らせる。夫は韓国男性には珍しく優しいが、前妻の子供は継母を相手にしない。
夫々こんな問題を抱えた状況で、三人の家族は老父の誕生会を行う為地方に位置する海辺の実家に向かうが、パーティーの席で精神耗弱の弟が恨んで已まない父親に向けて放尿したことで、家族の問題の一々が浮かび上がって来る。
というお話で、彼女たちが実家に向かうシークエンスから折に触れて彼女たちの少女時代が回想され、その中で父親の腹違いのヒスクと弟に対する激しい差別と暴力がフィーチャーされ、彼女たちの今いる現状の一因が判って来る。しかし、父親が頭を窓ガラスに打ち付けて後悔の気持ちを表現したことで、姉妹たちは落ち着きを取り戻し、昔のような仲の良い時間を迎える。
三姉妹が実家に出かける辺りからドラマ的にぐっと面白くなり、壮絶な葛藤を経て、大団円を迎えるまでの流れが見応えあるも、それまでが些かまだるっこい上に、上述通り大声の連続でげんなりさせられ、余り良い☆★を付ける気分が湧かない。
この一家がかかる状況に陥ったのは、僕は一に儒教的な父権主義のせいであり、次にキリスト教への帰依のせいではないかと思う。何故母親が口を挟まないのか言えば、日本では概ね衰退した父権主義の部分が韓国、中でもこの家族には未だに強いことを物語っていよう。
まして彼女たちが子供だった30年くらい前はもっと強かった可能性があるわけで、実際、父親と喧嘩して姿を消した夫の行方を調べてほしいと訴えただけで “父親への反逆” として死刑になりそうになった(ところを新井白石が口を挟んで救った)女性の話を思い出させる挿話まで出て来る。
信心もまた人を歪ませること少なくない。バラバラとなった家族を復旧するのは、宗教ではなく、家族それ自体の復元力(絆)なのである。
父権主義が衰えたのは良いが、この時代にあって我が国与党の一部保守勢力の男尊女卑的な考えが国の発展を妨げるのは見えて来た。彼らはそれが国の為と大いなる勘違いをしている。イスラム圏が中世を過ぎて当初の文明的勢いを維持できなかった過去に学ぶべし。歴史に学ぶ必要などないと主張する歴史学者の存在を知ったが、彼は何のために歴史を勉強しているのだろう? 弱かったスポーツ・チームがある時強くなるのも前の失敗という歴史に学んだからであろうに。
2020年韓国映画 監督イ・スンウォン
ネタバレあり
同じ韓国映画でも純文学系は、最初笑わせて後はシリアスという二つの映画を見ているような大衆映画の悪い癖はないので、その点安心して観られる。が、本作には、韓国人特有の大声を出してやたらに人に食って掛かる箇所が多くあり、観ていて非常に疲れました。
ソウル。長女ヒスク(キム・ソニョン)は別れた夫の借金を返しながら、しがない花屋を営んでいる。癌を患い、反抗期の一人娘(キム・カヒ)に疎まれても“大丈夫なフリ”をする。
次女ミヨン(ムン・ソリ)は執事として熱心に教会に通い聖歌隊の指揮者も勤めるが、夫の不倫を知って平和な生活が崩れ始める。
劇作家の三女ミオク(チャン・ユンジュ)はスランプで自暴自棄となって昼夜問わず酒浸りで、傍若無人にミヨンに電話を掛けて困らせる。夫は韓国男性には珍しく優しいが、前妻の子供は継母を相手にしない。
夫々こんな問題を抱えた状況で、三人の家族は老父の誕生会を行う為地方に位置する海辺の実家に向かうが、パーティーの席で精神耗弱の弟が恨んで已まない父親に向けて放尿したことで、家族の問題の一々が浮かび上がって来る。
というお話で、彼女たちが実家に向かうシークエンスから折に触れて彼女たちの少女時代が回想され、その中で父親の腹違いのヒスクと弟に対する激しい差別と暴力がフィーチャーされ、彼女たちの今いる現状の一因が判って来る。しかし、父親が頭を窓ガラスに打ち付けて後悔の気持ちを表現したことで、姉妹たちは落ち着きを取り戻し、昔のような仲の良い時間を迎える。
三姉妹が実家に出かける辺りからドラマ的にぐっと面白くなり、壮絶な葛藤を経て、大団円を迎えるまでの流れが見応えあるも、それまでが些かまだるっこい上に、上述通り大声の連続でげんなりさせられ、余り良い☆★を付ける気分が湧かない。
この一家がかかる状況に陥ったのは、僕は一に儒教的な父権主義のせいであり、次にキリスト教への帰依のせいではないかと思う。何故母親が口を挟まないのか言えば、日本では概ね衰退した父権主義の部分が韓国、中でもこの家族には未だに強いことを物語っていよう。
まして彼女たちが子供だった30年くらい前はもっと強かった可能性があるわけで、実際、父親と喧嘩して姿を消した夫の行方を調べてほしいと訴えただけで “父親への反逆” として死刑になりそうになった(ところを新井白石が口を挟んで救った)女性の話を思い出させる挿話まで出て来る。
信心もまた人を歪ませること少なくない。バラバラとなった家族を復旧するのは、宗教ではなく、家族それ自体の復元力(絆)なのである。
父権主義が衰えたのは良いが、この時代にあって我が国与党の一部保守勢力の男尊女卑的な考えが国の発展を妨げるのは見えて来た。彼らはそれが国の為と大いなる勘違いをしている。イスラム圏が中世を過ぎて当初の文明的勢いを維持できなかった過去に学ぶべし。歴史に学ぶ必要などないと主張する歴史学者の存在を知ったが、彼は何のために歴史を勉強しているのだろう? 弱かったスポーツ・チームがある時強くなるのも前の失敗という歴史に学んだからであろうに。
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