映画評「刺青一代」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1965年日本映画 監督・鈴木清順
ネタバレあり

WOWOWの配信オンリー(何年か前に放映もしている)の鈴木清順監督作品のうち本作だけがブログに挙げていないので、久しぶりに観ることにした。
 かつて IMDb には☆☆☆★を入れたが、些か画面への感嘆に偏り過ぎたと思われるので、ここでは★一つ分減らす。

昭和元年。博徒の高橋英樹が駕籠舁きを偽装した敵組織組員に暗殺されそうになったところを美術学校志願の弟・花ノ本寿に助けられる。素人の弟の代りに罪に服しようとするが、弟に請われて、一緒に満州にでも逃げようかということになる。
 しかし、詐欺師の船長に金を巻き上げられた二人は仕方なく山内明の経営する土木会社で働くことにする。弟はその妻・伊藤弘子にミューズを感じて小さな木像を彫り始め、兄は彼女の妹・和泉雅子に激しく求愛される。
 山内が兄弟とも縁のあるヤクザ一味と入札でもめ、その駆け引きの最中に家に駆け込んだ弟は斬り殺され、復讐の為に兄は一味に単身殴り込みをかける。

お話の構図は任侠映画として平均的なものに過ぎないが、最後の10分の画面に圧倒される。何と言っても、襖を次々と開けていく縦の構図の様式美が圧巻で、そこに清順らしいカラフルな配色と強いライティングが加わって物凄いことになる。一味の屋敷に駆け付ける前の舞踊劇のような見せ方も様式的に美しく、弟の血と夕陽とが赤で繋がれるマッチカットも大変興味深い。

しかるに、それまでの80分弱の部分は、絵的に官憲やスパイの真っ赤な靴が目立ったり、軽く映画文法無視気味のカット割りにニヤッとさせられるくらいで、凡庸なお話を補ってお釣りが出るほどの凄味はない、と思う。

ヤクザのイメージが強い為、刺青(いれずみ)を入れている人を嫌う日本人が多いが、そういう文化で育っていない外国人を捉まえて同じ扱いをするのは間違いだね。【刺青】の読み方を記したくてこんなトピックを持ってきました。

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