映画評「フラッグ・デイ 父を想う日」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2021年アメリカ映画 監督ショーン・ペン
ネタバレあり

英国映画は貴族調が良いが、アメリカ映画はシンガー・ソングライターの作るフォークのような映画が良い。
 ショーン・ペンが、アメリカの女性ジャーナリスト、ジェニファー・ヴォ―ゲルの書いた自伝を映画化したこの人生劇は、全体的に平凡ながら、渋いフォークを聞いているような気分の絵にじーんとさせられた。

審理前に脱走した偽札作りの犯人である父親ジョン(ショーン・ペン)が警察に追われ、挙句の果てに自殺する。その遺留品を引き取る為に娘ジェニファー(ディラン・ペン)が警察を訪れ、回想が始まる。
 インテリのような言論を吐くも犯罪性向のある父親が彼女が6歳の時(アディスン・タイミック)の時に家を出る。母親パティ(キャサリン・ウィニック)もぐうたらで、11歳の時(ジャディン・ライリー)に今度は自分が弟を連れて家を出、父親の許に身を寄せる。程なく戻って大分ましになった感じのする母親の下で成長し、ジャーナリストの道を選ぶ。

という彼女の人生行路より、現在の映画らしく、父を強く愛しつつ、見栄っ張りの為に犯罪との縁を切れない父を憎まなければならない、ジェニファーの揺れる心を見るべき作品と思う。

ショーン・ペンが自ら出来の悪い父親役として出演し、実の娘ディランに娘役をさせた辺りの効果が良く現れ、実感を伴う。父親にも母親ロビン・ライトにも似ているディランの好演が印象深い。

ハンディカメラで撮られた画面は秀逸とは言えないものの悪くなく、かかるフォーク的な映画によく合う。

ビリー・ホリデイのフォーク版と言われたらしい、カレン・ドールトンを思わせるキャット・パワーの既成曲数曲が、この映画の枯れたムードを盛り上げて魅力的。

こういう人々が出て来る映画を観ると、アメリカって面白い国だなあ、とよく思います。

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