映画評「“それ”がいる森」

☆★(3点/10点満点中)
2022年日本映画 監督・中田秀夫
ネタバレあり

タイトルはスティーヴン・キングの「IT(イット)」の映画版を意識したものだろう。しかし、内容はオカルトでもサイコパス・ホラーでもなく、SFホラーである。

企業家である(元)妻の父親に追い出されて福島の地方都市でオレンジ作りをしている農業家・相葉雅紀の許に、教育ママの母親・江口のりこを嫌がった小学5年生くらいの息子・上原剣心君が勝手にやって来る。結局この都市の小学校で勉強することになり、早速できた友達に連れられて訳ありの山奥に入っていく。二人は金属製の大きな物体を発見するが、翌日友人は何者かに攫われてしまう。剣心君が他のクラスメートにその話をしても何一つ信用して貰えない。
 他方、下級生の失踪やら、強盗犯やらの死体発見と奇怪な事件が続き、相葉は息子の話を信用せざるを得ないどころか、自ら二体に襲撃されかかる。それでもオレンジのビニールハウスで “それ” は突然逃げ出したことと、60年前の小学生失踪事件で生き残った老人・小日向文世の意見をヒントに対策を練る。
 その頃警察と学校のミスで校舎内に残った子供たちを目掛けて、 ”それ” 3体がやって来る。息子の担任教師・松本穂香が阻止しようと大いに頑張る。

大体こんなお話で、SFホラーとしたのだから、自ずと敵は宇宙人である。造形は最近TV等で紹介される平均的なものだが、その造形に少々ホラー的な仕掛けはある。

学校における騒動は「学校の怪談」もどきで、新味なし。しかも、内側から必死に守り続ける形なので、ぐっと単純。単純でも良いが、まるで怖くないのだからご愁傷様である。結果的に同じ点しか進呈していなくても清水崇監督の「村」シリーズのほうが怖い。この点において、論理ではなく観客の想像力に委ねる部分の多いオカルトの方が有利だ。

細かいところでは、捜査中の警察が一般市民の相葉に色々と説明したり、相葉が山奥の森で攫われた友人のスマホを発見した時危険性の高いその場で画像をチェックしたりするのが、現実や人間の行動原理に照らすと、本当らしさを欠く。一つ一つは大勢に影響を与えるレベルではなくても、こういうのが積み重なると脚本に不信を抱いて良い評価をしかねることになる。

幼い頃に観たらトラウマになるかもしれない。しかし、僕らが小さい頃と違って、現在の子供たちはませているから、そう怖がらないかもしれないな。

この記事へのコメント

2024年02月17日 08:27
わたしにとっては好きなジャンルになるのでかばいたくなりました。怖さはないですが、子供向けのおはなしとしてちゃんとつながっているので、そこを買います。新味はないんですが、福島を舞台にうまくおはなしを作っていたと思いました。
オカピー
2024年02月17日 20:44
nesskoさん、こんにちは。

どうもすみません。
僕は左脳人間で極端に理詰めで観てしまうので、疑問百出となることが多いホラー映画とは相性が悪いのです。