映画評「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」
☆☆★(5点/10点満点中)
2022年日本映画 監督・中村裕
ネタバレあり
僕は内容より作り方で映画を観る方なので、その意味でドキュメンタリーは余り面白くない。マイケル・ムーアのように明確な設計図のある物は別だが、即実的に対象に接し収めていくというタイプは面白くない。収めたもののどこを切るかが監督の腕の見せ所であるわけなれど、その大本を知らない観客にはその実力を把握しようがない。
本作は2021年に満99歳で亡くなった僧侶作家・瀬戸内寂聴の晩年17年間の記録である。監督は、TVドキュメンタリーで初めて接してからおよそ17年間に渡り、寂聴を “先生” と慕って、折に触れて撮り続けて来た中村裕という、TVドキュメンタリー監督である。
インタビュー形式ドキュメンタリーのヴァリエーションで、特に映画として面白味がある作りではないが、“恋愛”というキーワードで簡単にまとめてみたいと思う。
井上光晴との不倫という形の “恋愛” に切りを付ける為に出家した彼女は、 “人間が一番成長するのは、恋愛です”と言う。大怪我をして意識を失いかけた時に “またあなたに会えなくなるのは淋しいな” と思った、 という趣旨の文章を中村監督に書く。彼は “これは自分への一種のラブレターかもしれない” と思ったと言う。それを思って翻せば、本作は寂聴に対する監督の返歌なのかもしれないという解釈もしたくなる。これがこのドキュメンタリーを説明するのにふさわしい言い方ではあるまいか。
以上を書いた後では余談にすぎないが、人に色々と説教を垂れて来た彼女は、99歳になって自分の脳の衰えに慄然とし、それまでの威厳が吹き飛んでしまうような泣き方をする。しかし、人間らしくて大変良いと思い、僕は大いに感動させられた。そして、2021年に自分は今年死ぬだろうという予感通りに亡くなった。合掌。
まだ中学生だったけれど、瀬戸内晴美が寂聴になった時の報道がかすかに記憶がある。
2022年日本映画 監督・中村裕
ネタバレあり
僕は内容より作り方で映画を観る方なので、その意味でドキュメンタリーは余り面白くない。マイケル・ムーアのように明確な設計図のある物は別だが、即実的に対象に接し収めていくというタイプは面白くない。収めたもののどこを切るかが監督の腕の見せ所であるわけなれど、その大本を知らない観客にはその実力を把握しようがない。
本作は2021年に満99歳で亡くなった僧侶作家・瀬戸内寂聴の晩年17年間の記録である。監督は、TVドキュメンタリーで初めて接してからおよそ17年間に渡り、寂聴を “先生” と慕って、折に触れて撮り続けて来た中村裕という、TVドキュメンタリー監督である。
インタビュー形式ドキュメンタリーのヴァリエーションで、特に映画として面白味がある作りではないが、“恋愛”というキーワードで簡単にまとめてみたいと思う。
井上光晴との不倫という形の “恋愛” に切りを付ける為に出家した彼女は、 “人間が一番成長するのは、恋愛です”と言う。大怪我をして意識を失いかけた時に “またあなたに会えなくなるのは淋しいな” と思った、 という趣旨の文章を中村監督に書く。彼は “これは自分への一種のラブレターかもしれない” と思ったと言う。それを思って翻せば、本作は寂聴に対する監督の返歌なのかもしれないという解釈もしたくなる。これがこのドキュメンタリーを説明するのにふさわしい言い方ではあるまいか。
以上を書いた後では余談にすぎないが、人に色々と説教を垂れて来た彼女は、99歳になって自分の脳の衰えに慄然とし、それまでの威厳が吹き飛んでしまうような泣き方をする。しかし、人間らしくて大変良いと思い、僕は大いに感動させられた。そして、2021年に自分は今年死ぬだろうという予感通りに亡くなった。合掌。
まだ中学生だったけれど、瀬戸内晴美が寂聴になった時の報道がかすかに記憶がある。
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