映画評「身体を売ったらサヨウナラ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・内田英治
ネタバレあり

題名が一ノ瀬泰三のノンフィクション「地雷を踏んだらサヨウナラ」のパロディーになっているので面白いかもしれないと思い、観てみた。原作は実に変わった人生を送って来た作家・鈴木涼美の同名エッセイもしくはノンフィクション。

著者をモデルとする涼子(柴田千紘)は、上流階級の娘で慶応大と東京大学大学院で情報学を修めながら、夜の快楽を求め、キャバクラ嬢やAV嬢の体験をした後、日本経済新聞(映画の中では新聞社名は明記されなかったように思う)に入社する。快楽を求める反面、平凡な幸福を求めるもう一人の自分の存在に薄々と気付き始めた頃、その平凡な恋の対象であったインディのフォーク・デュオの片割れに失恋し、心に痛手を負う。

少なからず(元と現役)AV女優たちやAV関係者が出て来るのは、ヒロインが作った映像論文の一部という体裁。
 AV女優は金銭的な欲望若しくは必要によりなる人が多いよう(だが、AV関係者が言うように、今世紀に入ってそうでない人も多いらしい)なので、生活に困っていず、学歴も知性も十分すぎるくらいなのに、夜の欲望世界に身を置くヒロインの心理が非常に興味深い。昔の貴族の退廃趣味、資本主義下ではブルジョワ趣味に基づく快楽追求に通ずるものではないか。

しかし、映画的に断然良いのは、彼女が失恋した以降のしょぼくれた感じの夜の描写である。彼女によく絡んでくるしがないスカウト青年の自然体が良く、この二人の関係は実に魅力的でぐっと来る。ヒロインに扮した柴田千紘という女優も実感を伴う好演。

作家のすずきすずみという名前も面白い。

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