映画評「ウォーターボーイズ」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2001年日本映画 監督・矢口史靖
ネタバレあり

21年ぶりの再鑑賞。

僕は、この作品を邦画青春映画の一ジャンルの嚆矢ではないかと思っている。ダメ少年たちが何かをやり遂げるという点では新しくはないものの、マイナーな競技(もしくはジャンル)において競技の伸張と共に自己改革をしていくという青少年たちというジャンルである。「シコふんじゃった」のヴァリエーションと言えばそれまでだが、その競技に注目させるという点が新しかった。
 僕が呼吸の良さに瞠目した矢口史靖監督の次作「スウィングガールズ」もそうだし、古厩智之「ロボコン」、荻上直子監督「恋は五・七・五! 全国高校生俳句甲子園大会」、猪俣隆一監督「書道ガールズ!! 」、豊島圭介監督「ソフトボーイ」、小泉徳宏監督「ちはやふる」シリーズなどが続く。
 これにメジャー競技のものも加えれば、山下敦弘監督「リンダ・リンダ・リンダ」など、無数にある。同じ音楽ものでもマイナー扱いとした「スウィングガールズ」との違いは推量されたし。

作劇としても、スポコン映画のヴァリエーションであるが、ぐっと目標に向けて直線的に作られる傾向を生み出した。「ウォーターボーイズ」はその直線性に極めて優れていて、僅か91分の短尺にまとめあげられている。これほど要領良く作られた映画は稀有だ。

男子高校に女性教師・眞鍋かをりが赴任して水泳部の監督となる。かくして3年生部員・妻夫木聡一人で廃部寸前の水泳部に転向部員が殺到するが、彼女がやりたいのがシンクロナイズド(現アーティスティック)・スイミングと知って、旧部員の妻夫木以外に残ったのは、それぞれ訳ありの玉木宏、三浦哲郁、近藤公園そして金子貴俊の計五人のみ。しかも、肝心の教師が妊娠八カ月で早速休職し、夏休み明けの文化祭で披露することを決めつけ去っていく。
 それぞれの事情で部に引き留まる彼らはここで止めてなるものかと色々悪戦苦闘して、バスケ部のプールを使った生け簀の鯉をダメにするなどして縁の出来た水族館の関係者(経営者?)竹中直人を頼って、水族館で働きながら、泳ぎのコツを学ぶ。実は出たとこ勝負のデタラメだったのだが、結果オーライで5人は上達する。
 しかも、勘違いから彼らの活動が話題になると、再び転向部員が押し寄せ、それまで無視していた商店街の人々も応援をし始める。事故でプールが使えなくなれば、女子高が協力を惜しまない。

さて、その首尾は?・・・というのが梗概で、これに青春映画の定石である主人公と女子高の生徒・平山綾とのロマンスが絡む。これがはなはだ良いバランス具合に、この監督の特徴である呼吸の良さをもって、随時挿入される。コメディーである故でもあるが、ここをくどくしては些か内容が煩くなってしまう。軽快に楽しめさせるという目的において殊勲の一つではないか。

呼吸呼吸と言ってもどこか良いか解りにくいだろうから一例を挙げると、眞鍋かをりが水着に大きめのバスローブみたいなものを羽織って出て来る。色気盛りの5人(多分実際は訳ありの一人を除く4人だろう)が水着を見ようと体を下げると、ショットが切り替わって低い姿勢で画面右にいるはずの女子教師を眺めやる5人を捉えた瞬間に彼女の愛犬が右から現れて前を通り過ぎる。ただこれだけだが、この映画は大袈裟に言えば、この伝この呼吸で映画全体が構成されているのである。こういうのを見ると、僕は身震いしてしまう。ファンタスティックだ。

最後のなかなかアクロバティックなシンクロの連続も実際大いに見応えがある。歌劇『カルメン』の「闘牛士の歌」、ベンチャーズ「ダイヤモンド・ヘッド」、シルヴィー・バルタン「あなたのとりこ」、キング・トーンズ「オンリー・ユー」、パフィ「愛のしるし」、フィンガー5「学園天国」の選曲センスよろしく、大いに楽しめた。

5人のモチヴェーションのくだらなさも良い。

この映画の元ネタになったのは、県は違うが我が校がライバル意識をしていないでもない埼玉県川越高校で、僕は偶然何かでこの映画が作られる前にその存在を知っていた気がする。男子が大会にも出るようになったが、まだ男子だけのチームは出ていない。体力的には男子が有利になるので、今後も一つの種目で男子チームが出ることはないだろうか。

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