映画評「野球部に花束を」

☆☆★(5点/10点満点中)
2022年日本映画 監督・飯塚健
ネタバレあり

野球が絡む映画なら何でも観てしまう。クロマツテツロウという漫画家のコミックを実写映画化した本作は、まして【W座からの招待状】が取り上げているのだから何かあるだろうと期待して観たが、野球用語で例えるならば、これはワイルドピッチ(暴投)ですよ。

中学で野球をやっていた黒田鉄平君(醍醐虎太朗)は、進学した高校では野球をやるつもりはなく、ちゃらちゃらした青春を謳歌しようと茶髪にして初登校するが、結局、他の野球部出身の4人(黒羽麻璃央、駒木根隆介、市川知宏、三浦健人)と共に野球部に入学、恐い先輩たちと怖い監督(高嶋政宏)に、愛情をもっていびられ、大会に出場する先輩たちを補佐していく。
 かくして1年が終わり、彼らは2年生として先輩風を吹かせ、入部して来た1年生をいびるのである。

高校野球部の “あるある” 集で、先輩の言動をそのまま受け継ぐという辺りは、運動部の実績のない僕にもよく理解できる。読売ジャイアンツの原辰徳監督が選手として指導を仰いだ長嶋茂雄の影響と思われる言葉遣いをする。特に監督就任したばかりの頃は目立っていた記憶がある。最近は自分のスタイルを確立したせいか、昔ほどではない。

しかし、野球部ではなく、野球に興味のある僕にはこの内容では不満が残る。やはり試合に重点が置かれないと面白くない。

それでも映画として面白ければ良いが、解説者として最近出番が多い元ロッテ捕手・里崎智也の解説が一々入るのは逆効果ではなかったか。この為に準急行くらいだったのが各駅停車の鈍行列車のような印象が醸成されたような気がする。
 貫禄のありすぎる先輩が、任侠俳優(?)小沢仁志に見える為、そのまま出ずっぱりというのも楽屋落ちにすぎる。

少し気に入ったのは、主人公が恋に落ちた同学年少女と会っている時に、他の4人がドアの向うから真横に顔を連ねる部分で、その彼らに寄った時にカメラが90度回転し、彼等が通常立っているように、廊下を歩く学生が下から上に(もしくはその逆)通り抜けるように見えるという見せ方である。こういうのが幾つも重なると、先日再鑑賞した「ウォーターボーイズ」(2001年)のような秀作になるのだが。

【W座からの招待状】は昔は純文学洋画に特化していたが、日本映画に傾倒すると共に、敢えて取り上げるまでもない、かかるどうと言うことのない大衆映画まで出るようになった。全く良くない。

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