映画評「紅はこべ」(1934年版)
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1934年イギリス映画 監督ハロルド・ヤング
ネタバレあり
オルツィ男爵夫人のお馴染みの同名小説は腐るほど映像化されているが、僕が観たのは1950年の映画「怪傑紅はこべ」と1999年のTVミニシリーズだけで、後者はブログにもアップしてある。アルセーヌ・ルパンが好きな僕にはたまらない一編である。
フランス革命で山岳派ロベスピエールが権力を掴んだ恐怖政治初期の頃。トルネィ伯爵一家が断頭台の露となる為に連れて行かれるところをあるグループにより保護される。そのグループとは、フランスの王党派貴族を救うのを目的とした、拠点が英国にあるとだけ解っている謎の組織 “紅はこべ” である。
ロベスピエールの片腕的な元在英大使ショーブラン(レイモンド・マッセイ)は、弱みを握っているフランス出身の元女優ブレイクニー卿夫人(マール・オベロン)に接近して脅迫、ぐうたら貴族の夫君ブレイクニー卿(レスリー・ハワード)が繰り出すパーティーで “紅はこべ” 首領が誰かを掴めと命ずる。
しかし、首領はショーブランを遥かに上回る知恵もので、尽く出し抜くが、夫人が夫こそ首領と正体を気付いた頃には既に元大使も正体を掴んで、フランスで逮捕しようと手ぐすねを引いて待っている。かくして、一味が根城としている漁夫の家で、首領は夫人を人質にしたショーブロンと対峙する。
女性に対してはロマンティスト、変装が上手いという点など、殆どアルセーヌ・ルパンである。主人公の設定だけでワクワクする。発表時期は「紅はこべ」のほうがルパンより5年くらい早いので、ルブランが参考にしたところがあるかもしれない。
上映時間は95分くらいで非常にきびきびと無駄なく要領良く作られていて、最後の対決のサスペンスも大いに楽しめる。
夫人が “大石内蔵助” の英国版よろしく行動する夫君の正体に気付くのは肖像画に残された紅はこべの印だが、ショーブランがどう正体を掴んだのかは曖昧。少々気に入らないと言えばこの点だけである。
ハロルド・ヤングという監督は恐らく初めて観る。大きな問題はないが、人物に寄る時にズームではなくカットを切るという妙な特徴があり、気にはなった。
オルツィ男爵夫人は、「隅の老人」という安楽探偵を生んだ人でもある。ハンガリー出身なのに、英国の売れっ子作家になった。
1934年イギリス映画 監督ハロルド・ヤング
ネタバレあり
オルツィ男爵夫人のお馴染みの同名小説は腐るほど映像化されているが、僕が観たのは1950年の映画「怪傑紅はこべ」と1999年のTVミニシリーズだけで、後者はブログにもアップしてある。アルセーヌ・ルパンが好きな僕にはたまらない一編である。
フランス革命で山岳派ロベスピエールが権力を掴んだ恐怖政治初期の頃。トルネィ伯爵一家が断頭台の露となる為に連れて行かれるところをあるグループにより保護される。そのグループとは、フランスの王党派貴族を救うのを目的とした、拠点が英国にあるとだけ解っている謎の組織 “紅はこべ” である。
ロベスピエールの片腕的な元在英大使ショーブラン(レイモンド・マッセイ)は、弱みを握っているフランス出身の元女優ブレイクニー卿夫人(マール・オベロン)に接近して脅迫、ぐうたら貴族の夫君ブレイクニー卿(レスリー・ハワード)が繰り出すパーティーで “紅はこべ” 首領が誰かを掴めと命ずる。
しかし、首領はショーブランを遥かに上回る知恵もので、尽く出し抜くが、夫人が夫こそ首領と正体を気付いた頃には既に元大使も正体を掴んで、フランスで逮捕しようと手ぐすねを引いて待っている。かくして、一味が根城としている漁夫の家で、首領は夫人を人質にしたショーブロンと対峙する。
女性に対してはロマンティスト、変装が上手いという点など、殆どアルセーヌ・ルパンである。主人公の設定だけでワクワクする。発表時期は「紅はこべ」のほうがルパンより5年くらい早いので、ルブランが参考にしたところがあるかもしれない。
上映時間は95分くらいで非常にきびきびと無駄なく要領良く作られていて、最後の対決のサスペンスも大いに楽しめる。
夫人が “大石内蔵助” の英国版よろしく行動する夫君の正体に気付くのは肖像画に残された紅はこべの印だが、ショーブランがどう正体を掴んだのかは曖昧。少々気に入らないと言えばこの点だけである。
ハロルド・ヤングという監督は恐らく初めて観る。大きな問題はないが、人物に寄る時にズームではなくカットを切るという妙な特徴があり、気にはなった。
オルツィ男爵夫人は、「隅の老人」という安楽探偵を生んだ人でもある。ハンガリー出身なのに、英国の売れっ子作家になった。
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