映画評「桜色の風が咲く」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2022年日本映画 監督・松本准平
ネタバレあり
世界で初めて大学常勤教員となった盲聾者である福島智教授の伝記映画。内容はヘレン・ケラーと野口英世を足して2で割ったような感じである。
教授は1962年生まれ。生まれつき高い眼圧の為に3歳で右目、9歳で左目の視力を失った智君は、聾学校在学中(田中偉登)に突発性難聴で聴力も失い、絶望しかけるが、母親令子(小雪)の奮闘と賢さに支えられ、大学に進学する(当時はそれも殆ど例のないことだったようである)。
本作の主眼は、野口英世の伝記映画「遠き落日」に似て、母親の心理と行動にある。令子さんも英世の母親同様に罪悪感を抱えているが、負けそうになる自分を鼓舞して、最後には彼の希望にもなる指点字を発案する。【必要は発明の母】と言うか、必要は母の発明と言うか。
一生懸命な親を見て悪い気持ちがするはずがない。感動しました。最初は距離を置いていたように見えた父親と二人の兄が次第に彼に寄り添って来るという流れも良い。
勿論、智君本人の苦痛にも多く言及され、とりわけ、耳が聞こえなくなる時の絶望感にさいなまれ廊下で佇む彼を捉えたトラックバックは画面としても非常に秀逸で、きっと内容重視の映画だろうと決め込んだ僕の予想を、良い意味で裏切った。幼い智の視点による家族の顔を捉えたショットもなかなか秀逸で、ロングショットの扱いも良い。
良くないのは、吉野弘の詩「生命は」が智君と令子さんにより二回読まれる時に背景音楽がうるさすぎること(音楽自体は悪くないが)。この実に素敵な詩(鑑賞中に完全に聞き取れなかったので、後でネットで調べた)は、“結局人は他の人の存在により生を営んでいる” といったことを暗示していると思われる。
【風が咲く】という表現が洒落ていますね。
2022年日本映画 監督・松本准平
ネタバレあり
世界で初めて大学常勤教員となった盲聾者である福島智教授の伝記映画。内容はヘレン・ケラーと野口英世を足して2で割ったような感じである。
教授は1962年生まれ。生まれつき高い眼圧の為に3歳で右目、9歳で左目の視力を失った智君は、聾学校在学中(田中偉登)に突発性難聴で聴力も失い、絶望しかけるが、母親令子(小雪)の奮闘と賢さに支えられ、大学に進学する(当時はそれも殆ど例のないことだったようである)。
本作の主眼は、野口英世の伝記映画「遠き落日」に似て、母親の心理と行動にある。令子さんも英世の母親同様に罪悪感を抱えているが、負けそうになる自分を鼓舞して、最後には彼の希望にもなる指点字を発案する。【必要は発明の母】と言うか、必要は母の発明と言うか。
一生懸命な親を見て悪い気持ちがするはずがない。感動しました。最初は距離を置いていたように見えた父親と二人の兄が次第に彼に寄り添って来るという流れも良い。
勿論、智君本人の苦痛にも多く言及され、とりわけ、耳が聞こえなくなる時の絶望感にさいなまれ廊下で佇む彼を捉えたトラックバックは画面としても非常に秀逸で、きっと内容重視の映画だろうと決め込んだ僕の予想を、良い意味で裏切った。幼い智の視点による家族の顔を捉えたショットもなかなか秀逸で、ロングショットの扱いも良い。
良くないのは、吉野弘の詩「生命は」が智君と令子さんにより二回読まれる時に背景音楽がうるさすぎること(音楽自体は悪くないが)。この実に素敵な詩(鑑賞中に完全に聞き取れなかったので、後でネットで調べた)は、“結局人は他の人の存在により生を営んでいる” といったことを暗示していると思われる。
【風が咲く】という表現が洒落ていますね。
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