映画評「砦のガンベルト」

☆☆★(5点/10点満点中)
1967年アメリカ映画 監督ゴードン・ダグラス
ネタバレあり

西部劇の砦ものではあるが、良くも悪くも典型的とは言えない。NHK-BSから録画したものを鑑賞。

1876年。クレンデニン砦で軍人たちが壊滅し、拳銃一丁が残されているのが発見される。という謎めいた始まりは、有名な冒険映画「ボー・ジェスト」から拝借した感じ。

ここからお話は巻き戻されて、主人公の殺し屋ロッド・テイラーが、途中で遭遇した砦の馬車の苦境を救い、それに乗っていたメキシコ美人ルチアナ・パルッツィとその姪アンジェラ・ドリアンと共に、砦に到着し、問題児だらけの兵隊と問題を抱えている大佐ジョン・ミルズの隊のやっかいになる。
 隊は、インディアンの小部族の襲撃があるのが解っているのに解決策を探ろうともしない。彼らは食料を求めているだけなのに、それすら対応してくれない白人に対して殺気立っている。かくして隊が、客たちを巻き込んで、混乱を極めるうちに、インディアンの急襲を受けて全滅したのである。

テイラーは重傷を負いながらアンジェラを何とか守り、直前に亡くなった(実は昔の恋人の)ルチアナを埋葬して去った模様。残されたのは彼の拳銃である。
 この最後の部分は、調査官のフォスター大尉の報告から観客がそう推測できるという仕組み。

テイラーを含めて、隊には色々不穏なムードがあり、そこにインディアンの恐怖が加わって、ちょっとした心理サスペンスの様相を見せるので、そこに面白味が見出せないでもないが、殆ど気勢が上がらないまま進む展開ぶりに退屈を誘われる。

テイラーが大佐と取引して偵察に出かけ、偵察隊の一人ジェームズ・ホイットモアをインディアンから救出する一幕が数少ない見せ場で、一時より太り気味のテイラーがそれなりに頑張っている。早撃ちはそれ以上に上出来(実際の決闘がないので余り意味がないが)。

お暇な方はどうぞ。

native を常に“先住民”と訳す方が多いが、この映画における大佐がアフリカに出かけた時のエピソードの場合、”土着民” のほうが良い。アメリカ映画が未だに Indian という単語を出して来るのに、何故か日本人は気を使って、白人の差別意識を表現することが重要な西部劇においてもインディアンという単語を封印して訳す。過剰と思う。また、十年程前に観た現代劇で、アメリカにいるインド人が Indian という単語を揶揄う台詞があったが、それを先住民とした為に字幕では可笑し味が阻害されてしまった例もある。

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