映画評「ブルーサンダー」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1983年アメリカ映画 監督ジョン・バダム
ネタバレあり

再鑑賞作品。3回目かもしれない。

ロサンゼルス市警ヘリコプター隊のベテラン警官ロイ・シャイダーが新人のダニエル・スターンと巡邏中に、中年女性が強盗団と思われる二人組に襲われる事件に遭遇、連中をやっつける活躍する。

ここは、単なる紹介パートに見えて、後段で大きな意味を成す。というのも、襲われた女性が警察と軍隊による不正を調べていた局長だったからである。

この後、ヴェトナム戦争時代にシャイダーと犬猿の仲になった今は将校のマルカム・マクダウェルが現れて、市警が導入する新装備満載のブルーサンダーなる新型ヘリコプターの試験飛行を指導する。
 相棒二人は早速このヘリに乗って巡邏するうちに、何か悪計を企んでいそうなマクダウェルが向かった先を張り、その物凄い盗聴機能を使って、ちょっとしたクーデター擬きの企てをしていることを掴む。
 相棒スターンは録音したビデオを早速ゴミ箱に隠して帰宅、奪還に懸命なグループに襲われて在り処を吐かずに死ぬ。シャイダーは女友達キャンディー・クラークに、彼が隠したビデオを探し出させてTV局に持って行かせようとするが、一味はそれを妨害する。

本作は基本的にヘリコプターのアクションを楽しむ映画ながら、彼女が運転する車とパトカーによるカー・チェースもなかなかのご馳走である。

シャイダーがヘリで彼女をバックアップした後、作戦変更した市警の制止を振り切ったマクダウェルと、市街地での一騎打ちとなる。

戦争映画でもこの構図の空中戦はたまに見られるが、ヘリコプターは動きが飛行機ほど早くなく、ホバリングもできるので、また違ったサスペンス感と面白味がある。

解るような解らないようなところがある一味の姦計は、マクガフィン(単なる仕掛け)に準ずるものと考えればすっきり見られるし、何よりも直線型のストーリーを好む僕には、本作は退屈するヒマもなく楽しめる。
 市街地での空中戦は道徳的に怪しからんと感じがしないでもないものの、それを言うとお話が始まらない。しかし、貨物列車がやって来る線路に時間を測ってブルーサンダーを置いて去るというのは、さすがに感心できません。

マクガフィンという概念を理解しない人が多い、とマクガフィンをよく使ったヒッチコックは残念がった。僕が読んだ本作コメントの中に一味の姦計をマクガフィンと捉えらずに批判する人もいたが、野暮と思う。ところで、討論番組を見ていると、観念と概念の区別が出来ずに発言している人が多い。固定概念というのは間違った単語の組合せ。そもそも概念は観念(意識)の集合体の公約数なので固定されない。但し(あるいは従って)、緩やかに変化はしていく。

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