映画評「バラ色の人生」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1948年フランス映画 監督ジャン・フォーレ
ネタバレあり

プライム・ビデオにて。
 ジャン・フォーレという監督は日本では本作のみが紹介されている。本作の殊勲は脚本(ルネ・ウェレル)にあると思われるが、それでもこれだけの作品に仕上げた腕は評価されても良く、他の作品も観てみたい気にさせられる。

中学の卒業式で、花束贈呈役の教師テュルロー(ルイ・サルー)が見当たらず、若い同僚ルコック(フランソワ・ペリエ)が探しに出る。自室で首を吊っているテュルローを発見し、最悪の事態を回避することに成功、ふと目に入った日記帳を読み始める。

というのが言わば序章で、この日記に書かれた以下の内容が第2章。
 立派な中学教師テュルローは、引っ越してきた校長の娘コレット(コレット・リシャール)に会い、彼女の為に生徒を首尾よく指導すると、二人の間に愛が芽生える。彼女は扉越しに恋心を語り、林檎の木のうろを使って恋文を交換する。風采の上がらぬ同僚ルコックの恋に関しても色々とアドヴァイスする。

自殺未遂の後、彼を自殺に追い込んだという罪悪感を覚えるある生徒が語る内容が第3章で、そこでは日記とはまるで反対の実相が語られる。
 テュルローはしけた中年教師で、コレットが恋するのは風采の良いルコックである。彼の心情に気付いている生徒たちがコレットの手紙などをでっち上げ、やがて真相を知ったテュルローは卒業式の日に自殺を試みるのである。

いかにもフランス的な哀しくも残酷な喜劇で、第2章と第3章の対照の鮮やかさに目を見張る。脚本の力に因るところが大きいと思いつつ、実際の画面において呼吸良く処理する進行ぶりにはフォーレなる監督の力量も働いている筈で、軽んずべきではないだろう。

遺作ではないものの、この映画の作られた1948年に亡くなったルイ・サルーが「天井桟敷の人々」にも劣らない好演。

8月後半はWOWOWに観たい映画が少なく、プライム・ビデオの古い映画や溜め込んだマイ・ライブラリーに頼った。

この記事へのコメント

モカ
2023年09月02日 09:14
こんにちは。

「この題名を見ると一部の人は必ずエディットピアフを思い出す」^_^

ピアフが “La via en rose “ を出したのが1946年なのであやかり商法でタイトルに頂戴したのかもしれませんね。 それにしても逆説が過ぎる?タイトルで、フランス人の嫌な面が前面に出ていましたね。冷たい、意地が悪いetc. 😅
モカ
2023年09月02日 11:32
訂正です。

La vie en rose でした。 via → vie

スペルの訂正だけでは愛想なしなので暇に任せてもうちょっとだけ書かせてくださいね。
🥀 ラ ヴィ アン ローズ  バラ色の人生  🥀
 今も歌い継がれていますね。Youtubeで検索すると色々出てきます。
レディガガなんて猛烈なおしの強さで歌い上げていて有無を言わさぬ”幸せアピール”がすごいですが、私は脳内お花畑なこの歌はもう少し軽く歌うか渋く歌うかしている方が好みです。 zazのジャンゴラインハルトばりのスウィングギターをバックに歌ってるのとか越路吹雪とか…
オカピー
2023年09月02日 18:03
モカさん、こんにちは。

>「この題名を見ると一部の人は必ずエディットピアフを思い出す」^_^

うーむ、やられた。
太字のところに各材料が見つからなかったのですが、この手があったか!(笑)

>ピアフが “La via en rose “ を出したのが1946年なのであやかり商法でタイトルに頂戴したのかもしれませんね。 

これは多分そうです。

>zazのジャンゴラインハルトばりのスウィングギターをバックに歌ってるのとか越路吹雪とか…

シャンソン風なのが良いということですね。
zazという歌手は知りませんでしたが、ザーズと読むとか。シャンソンとジャズ畑。バックのギターは確かにラインハルトみたいです。