映画評「呪呪呪/死者をあやつるもの」

☆☆★(5点/10点満点中)
2021年韓国映画 監督キム・ヨンワン
ネタバレあり

僕が初期からサスペンスを感じない代表格として挙げて来たゾンビものは一時ほどではないものの、まだまだ作られているらしい。韓国製の本作は、直球のゾンビ映画ではなく、変化球である。その詳細は梗概にて。

製薬会社の関係者が正体不明の人物に殺される。正体不明の人物とは、3カ月前に死んだ筈の人間で、現場に残されていたのは死体そのものである。

という謎めいた始まりはなかなか好調。名探偵エラリー・クイーンならこれをトリックとして解決してみせるだろうが、本作は死体をインドネシア出身の呪術師が本当に操っているという異色の設定で、女性ジャーナリストのオム・ジウォンがそれを掴んでいくまでが面白い。

彼女が出演しているラジオ番組の放送中に、犯人を名乗る人物が、公開インタビューを申し込んでくる。後日インタビューで男は製薬会社の経営陣三名を殺すと告げた後、崩れて死ぬ。彼もまた死人である。

動く死体は物凄いスピードでアクロバティックに動いて強く、物凄いカー・アクションまで披露する。三人のうち最初の被害者が仕留められるまではアクション映画として一応楽しめるが、同時に興醒めもする。
 というのも、僕独特の見解で大して説得力はないのだが、力の差がありすぎる者同士の闘いは却ってつまらず、サスペンスを感じないからである。プロ野球チームとリトル・リーグが戦ったとしても何の感興も起きないであろうことを想像てみると良い。そう思えない人の方が得をするので、何でも受け付けるので得をすることの多い僕にとって数少ない、損をするジャンルがホラー、サブジャンルがゾンビ映画なのである。

後半は、ヒロインの妹分の少女呪術師チョン・ジソが活躍するが、オカルト的な理屈は抽象的で興味を覚えにくく、お話が進むにつれ退屈して来る。

社会派を気取って薬害問題を事件の背景に据えている。しかし、ゾンビ映画や昔の廉価SF映画に良く見られるおためごかしの類で、そう有難がる必要はない。

呪術は続くよ、どこまでも。明日は、但し、古代欧州です。

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