映画評「コンビニエンス・ストーリー」
☆☆★(5点/10点満点中)
2022年日本映画 監督・三木聡
ネタバレあり
久しぶりに見た三木聡監督はコメディー色が希薄。実際にコンビニエンス・ストアが絡む物語だが、タイトルはコンビニエンス・ストアのもじりなのであろう。
スランプの脚本家・成田凌が、恋人の女優・片山友希の愛犬ケルベロス(最も重要な伏線)用のドッグフードを買いに行ったコンビニエンス・ストアで冷蔵庫に取り込まれるような現象を経験する。無事現世界に戻ったものの、直後にコンビニに突っ込んできた車にはねられそうになる。
帰ってみると、ケルベロスがパソコンに書いた台本をめちゃくちゃにしてい、怒った彼は借りたトラックで犬を捨てに行く。が、彼女が落ち込んでいるので探しに戻ると、犬は見つからず、トラックのエンジンがかからず、荒野の中にあるコンビニに立ち寄る。
最初は無人だった店に再び夜に立ち寄ると、艶めかしい店主夫人・前田敦子が出て来る。店主・六角精児とは余り上手く行っていないようで、二人は逃避行するが、彼女は消える。戻ったコンビニでは店主が男二人を殺している。
何とかエンジンを復帰させた成田は喧騒の都会に戻って来るが、この後どうなるか。
大体こんなお話で、ケルベロスがギリシャ神話における冥府の番犬の名前であることを考えると、荒野での出来事は全て冥府の中での経験なのだろう。それではどこで彼が冥府に迷い込んだかと言えば、(死んだ)自分の為に花の生けられたドッグフードの瓶を蹴ったところではないか。
夢落ちかもしれない。つまり、冒頭の事故に遭った瞬間に彼は重体に陥り、最後に観た情景を夢に見ていたという解釈である。だから、二度目の事故が本当の事故で、寧ろそれまで内容はその事故から始まったフラッシュバックと考える次第。フラッシュバック(走馬灯)が先行する映画ということだ。
彼が書いた脚本が六角精児絡みの惨劇なのではないかと想像され、前田敦子もその犠牲者なのだろう。彼らが出て来る世界は脚本の中か?
監督が一人合点している感じが強いものの、荒野における場面などムード的には面白い。このお話が主人公たる脚本家の考えたお話と考えれば、完全な劇中メタフィクションとして楽しめるが、そこまで言う自信はない。
ギリシャ神話「オルフェウス物語」をベースにした(前田敦子がオルフェウスの死んだ妻エウリュディケと同じセリフを言う)不条理ホラーと言うべし。
現実世界と冥府の世界が混然一体とする点において、鈴木清順「ツィゴイネルワイゼン」を思い起こす人もいるかもしれない。
2022年日本映画 監督・三木聡
ネタバレあり
久しぶりに見た三木聡監督はコメディー色が希薄。実際にコンビニエンス・ストアが絡む物語だが、タイトルはコンビニエンス・ストアのもじりなのであろう。
スランプの脚本家・成田凌が、恋人の女優・片山友希の愛犬ケルベロス(最も重要な伏線)用のドッグフードを買いに行ったコンビニエンス・ストアで冷蔵庫に取り込まれるような現象を経験する。無事現世界に戻ったものの、直後にコンビニに突っ込んできた車にはねられそうになる。
帰ってみると、ケルベロスがパソコンに書いた台本をめちゃくちゃにしてい、怒った彼は借りたトラックで犬を捨てに行く。が、彼女が落ち込んでいるので探しに戻ると、犬は見つからず、トラックのエンジンがかからず、荒野の中にあるコンビニに立ち寄る。
最初は無人だった店に再び夜に立ち寄ると、艶めかしい店主夫人・前田敦子が出て来る。店主・六角精児とは余り上手く行っていないようで、二人は逃避行するが、彼女は消える。戻ったコンビニでは店主が男二人を殺している。
何とかエンジンを復帰させた成田は喧騒の都会に戻って来るが、この後どうなるか。
大体こんなお話で、ケルベロスがギリシャ神話における冥府の番犬の名前であることを考えると、荒野での出来事は全て冥府の中での経験なのだろう。それではどこで彼が冥府に迷い込んだかと言えば、(死んだ)自分の為に花の生けられたドッグフードの瓶を蹴ったところではないか。
夢落ちかもしれない。つまり、冒頭の事故に遭った瞬間に彼は重体に陥り、最後に観た情景を夢に見ていたという解釈である。だから、二度目の事故が本当の事故で、寧ろそれまで内容はその事故から始まったフラッシュバックと考える次第。フラッシュバック(走馬灯)が先行する映画ということだ。
彼が書いた脚本が六角精児絡みの惨劇なのではないかと想像され、前田敦子もその犠牲者なのだろう。彼らが出て来る世界は脚本の中か?
監督が一人合点している感じが強いものの、荒野における場面などムード的には面白い。このお話が主人公たる脚本家の考えたお話と考えれば、完全な劇中メタフィクションとして楽しめるが、そこまで言う自信はない。
ギリシャ神話「オルフェウス物語」をベースにした(前田敦子がオルフェウスの死んだ妻エウリュディケと同じセリフを言う)不条理ホラーと言うべし。
現実世界と冥府の世界が混然一体とする点において、鈴木清順「ツィゴイネルワイゼン」を思い起こす人もいるかもしれない。
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